1.ハワードの田園都市構想
2.田園都市論の現代的意義
3.日本型田園都市構想
4.和歌山市都市計画と学園城郭都市
5.近代ニュータウンの系譜
-理想都市像の変遷-
The Kingdom of Ryukyu Gusuku Sites and Related Properties
6.世界遺産登録に向けた取り組み
6-1 世界遺産登録制度
彦根市では、1984年策定の保存管理計画を2カ年計
画で抜本的に見直すこととし、外部有識者6名によって
構成する「特別史跡彦根城跡保存管理計画・整備基本計
画検討委員会」を新たに設置し検討に着手しているが、
2014年6月、「顕著な普遍的価値」の証明のための
国内外の類似資産の比較研究と資産の分析について複数
の専門家から以下の3つの説明を受けている。
- 城郭のみでは、単独でも複数でも、登録は難しい、
千件に上るこれまでの登録テーマとも、日本の城
郭や庭とも、全く異なるコンセプトを探求すべき
である。幸い彦根市には他の城にない江戸時代の
都市計画、行政機構や文化政策を雄弁に物語る多
くの遺産がある(フランス・イコモス事務局長) - 「封建領主の精神的・文化的生活」のような方向
性で考えるのがよい(同上) - 韓国でも支配者層による文芸の振興があり、支配
者層による社会の文化的交流の比較等を基礎にし
た構想も考えられる(ユネスコ世界遺産センター・
アジア担当官)
ここで、そもそも世界遺産制度と何か?を考えてみよう。
「世界遺産」とは、1972年のユネスコ総会で採択された
「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(
世界遺産条約)に基づきいて世界遺産リストに登録され
た、遺跡、景観、自然など、人類が共有すべき「顕著な
普遍的価値」を持つ物件のことで、移動が不可能な不動
産やそれに準ずるものが対象になると規定されているが、
前述の通り2014年には世界遺産の登録件数が千件を突破。
2016年の第40回世界遺産委員会終了時点での条約締約国
は192か国、世界遺産の登録数は1,052件(165か国)とな
っている。
● 世界遺産リスト登録手続きと登録後の保全
世界遺産リスト登録に必要となる前提、審査の流れ、登
録後の保全状況報告などは、「世界遺産条約履行のため
の作業指針」(以下「作業指針」)で規定されている。
登録までの流れを図示すると以下のようになる(「登録
さるまで」、願ダブクリ参照)。
しかし、この制度にも、①種類と地域の偏りがあり「顕
著な普遍的価値」の再定義や、偏り是正の動きがある。
②世界遺産の登録数に上限設定がない反面、その「顕著
な普遍的価値」を認めにくい物件や価値を裏支えするス
トーリーが理解しづらい物件が増えている、③景観や環
境の保全が義務付けられ、周辺開発との間で摩擦が生じ
る、④世界遺産は保全が目的で、観光開発促進は趣旨外
で、「世界遺産を守る持続可能な観光計画」作成是正の
動きなどの課題がある。
妻籠宿
● 日本の文化遺産保護制度
それでは、日本の文化遺産はどうだろうか?日本国政府
による文化遺産保護制度は、制度の原型は明治時代に創
設、時代情勢を反映した改正を経て今日に至る。現在の
制度は1950年に文化財保護法の制定により規定(包括的
な制度は主要国では他に例がないとされる)。文化財保
護法が規定している天然記念物の制度は自然保護制度と
も隣接し、これを所管する環境省との間で調整が図られ
ている。文部科学省および文化庁が所管する制度の他に
も、文化遺産保護に関連する制度がある。
以上の2項を踏まえておく必要があるだろう。
さて、2015年1月、世界登録作業部会の成果踏まえ、ユ
ネスコ世界遺産センタ及びイコモス専門家との再度意見
聴取を行い、以下の5つの集約見解をうけ公開している。
- 姫路城がすでに登録されているので、彦根市は姫
路とは独自のコンセプト登録をめざし、「例外的」
な文化的価値を示す必要がある。そのために、資
産の「科学的・技術的」かつ詳細で緻密な分析を
し、国内外の比較を深め、普遍的価値が彦根市の
史跡および文化遺産のみによって「証明」できる
ことを示す必要がある。単なる歴史描写や主観的
な評価は、世界遺産登録プロセスに貢献しない。
彦根市は、中世・近世城郭都市について、国内外
の科学的・技術的比較研究を行い、城と関連資産
の普遍的価値を抽出すべきである。国際比較には、
ヨーロッパおよび韓国を入れるべきであろう (フ
ランス、イタリアの建築専門家)。 - 城郭の比較研究は、歴史、建築学および美術史等
の専門家から総合的に行うべきである。日本の城
については、英訳された著書が多くあり、以前か
らそれを読んでいた。彦根城は、軍事施設という
より権力のシンボルとしての役割をはたしている
ように思われる(フランスの城郭専門家)。 - コンセプトに対応する構成資産の分析と保存管理
計画を同時進行させ、集中して行う必要がある。
登録に向けて必要な作業を貫徹させる勢いが必要
(フランス・イタリアの専門家)。 - 日本の専門家および文化庁の意見を聞き、協力と
助言を得ながら、比較研究や資産分析を進めるべ
きである(イタリアの建築専門家、フランスの城
郭専門家)。そのためこれら専門家と海外の専門家
の参加する準備会合を開くべき(イタリアの建築
専門家)。 - 250年間安寧が続いた江戸時代における彦根藩の役
割と城のシンボル的な役割や、寺社その他の文化
的・精神的伝統を通した藩内の社会的調和を築い
た統治方法および文化を通した交流政策が注目さ
れる(ユネスコ世界遺産センター)。
この項つづく
観光産業の活性化なら「群・織豊徳政権時代」の文化遺
産として、リトライ展開(オール滋賀)した方が、①情
報交通・官民連携・住民福祉的側面の現実社会と、②文
化遺産(あるいは「文化資産」)保護、③持続可能な社
会とのトライアングルなバランスは取りやすいように思
えるが。
【脚注及びリンク】
-----------------------------------------------------
- 田園都市 Wikipedia
- 世界遺産に登録されるまで|世界遺産検定 NPO法
人 世界遺産アカデミー - 世界遺産登録に向けた取り組み(2014年度)彦根市
- 高句麗平壌城の都市形態と設計 閔徳植、 国際日本
文化研究センター学術リポジトリ - 松本市の都市計画 松本市
- ひこにゃんがいてもダメ? 彦根城はなぜ世界遺産
になれないのか 週刊朝日 2013年6月28日号 - 利用者が“便利”だと思えるパーク&ライド ECO
JAPAN インタビュー前編 2007.03.02 - 利用者が“便利”だと思えるパーク&ライド ECO
JAPAN インタビュー後編 2007.03.09 - 第1回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々
木啓明 2011.10.05 - 第2回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々
木啓明 2011.10.07 - 第3回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々
木啓明 2011.10.19 - 第4回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々
木啓明 2011.10.26 - 第8次彦根市交通安全計画 2012,03.22
- Core Strategy (2013) - Milton Keynes Council
- "The New Towns: There Problems and the Future”
Department for Communities and Local Government,
2002.11.21 - 日本エシカル推進協議会(Japan Ethical Initiative) -
エシカル日本 - 明治期廃絶城郭の公園化について ―史跡の保存
活用の前史として― 佐々木孝文 2015.06.26 - 都市とは何か 都市計画なぜ必要か - 東北大学
奥村誠 2015.10.15 - 和歌山市都市計画マスタープラン 和歌山市
2017.01.12 - 和歌山市立地適正化計画 2016.12.22
- 日本型田園都市構想―イギリス田園都市と比較し
京田辺市を見直す―2001.12.11 西村利也 - 田園都市とエソテリシズム 吉村正和 2004.03.05
- 田園都市論の現代的意義 中井検裕 家とまちなみ
45、2003.7.8 - 住宅地計画論 1.ハワードの田園都市構想園都市
- 都市思想の二人の巨人、ジェイコブズとハワード:
宮﨑洋司市 - 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
佐藤健正、2016.06 28 - 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
佐藤健正、2016.07 26 - 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
佐藤健正、2016.07 26 - 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
佐藤健正、2016.07 03 - 平成 28年度 主要事業 彦根市
- 都市づくりの基本方針(全体構想) 彦根市 橋梁長寿
命化修繕計画による対策橋梁について
滋賀県 - 彦根市都市計画道路網見直し検討調査
- 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主導
のまち創る-近世城下町彦根市本町地区の2例の
場合-(これからの都市づくりと都市計画制度全
国市長会) 中島一 2005.05.09 - 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
- 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
- ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 都市計画1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一
- 都市計画2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
- 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
- 「道路をどうするのか 五十嵐敬喜・小川明雄 岩
波新書 - 日本の道路史 武部健一 中公新書
- 道のユニバーサルデザイン 鈴木敏 技報堂
- 道路が一番わかる 窪田陽一 技術評論社
- 「道路」についての国際比較 藤井聡 2010.3.14
- 彦根市都市計画道路網見直し指針
- 地域別のまちづくり方針(地域別構想)-彦根市
- 彦根市新市民体育センタ整備基本計画 2016.10.31
- 彦根市立図書館|簡易検索
- 中心市街地の活性化に関する法律 Wikipedia
- 富山市におけるコンパクトなまちづくりの進捗と展望
2014.11.26 - アウガ Wikipedia
- 富山市 人と環境に優しいまち 公式HP
- 青森市 都市計画マスタープラン 公式HP
- コンパクトシティはなぜ失敗 するのか 富山、
青森から見る居住の自由 2016.11.08, Yahoo!ニュース - <アウガ>2副市長辞任 青森市政混迷増す 河北
新聞 2016.01.28
-------------------------;------------------------