【ブン・ボラペット タイの一番大きい湖】
ブン・ボラペット湖は,タイ王国ナコーンサワン県
に位置し、首都バンコクの約250km 北の北緯15度42
分、東経100度15分に位置する。ブン・ボラペット湖
は、1926年に造成された人造ダム湖である。水面面
積204.5km2,平均水深1.4m、最大水深5.0m、最大貯
水量218.2×106m3 である。水面標高は満水時におい
て海抜23m,湖岸長は62.5m である。ブン・ボラペッ
ト湖は,河川を水門でせき止め、東西に細長い形状
を呈している。また、ナコンサワンはタイ最大の水
源、チャオプラヤ川の源流地点で、農業の他、淡水
漁業が盛んに行われている。チャオプラヤ川を形成
する支流とつながっている「ブンボラペット湖」は
タイ最大の淡水湖で、雨季には水量調節のための天
然ダムとしての役割を果たしている。農地灌漑目的
のほか、漁場として水産業振興に大きく寄与してい
る。ブン・ボラペット湖は多くの部分がハス栽培地
となっている。ハス栽培のために大量の殺虫剤が散
布されており,この薬剤がブン・ボラペット湖に流
入して水質に悪影響を及ぼし,水産資源である魚類
を斃死させるなどの影響を及ぼしている。多くの魚、
水鳥が生息しており、絶滅の危機にある淡水魚のシ
ャムタイガーはタイ政府の厳重な保護下に置かれて
いる。
県都のナコーンサワン市はブン・ボラペット湖から
遠く離れており,ブン・ボラペット湖には大きな市
街地からの流入汚濁負荷は存在しない。ブン・ボラ
ペット湖の周囲には約6,800 人の人口を数えるのみ
であり,集水域の人口密度は92.2 人/km2である。
これら集水域内人口による生活系からの総負荷量は
窒素21.8 トン/年,リン6.1トン/年がブン・ボラペ
ット湖に直接流入している。また、畜産排水は総負
荷量で窒素149 トン/年、リン107トン/年 と見積も
られている。この畜産排水も約10%が未処理で直接
ブン・ボラペット湖に流入している。ブン・ボラペ
ット湖に流入する年間総負荷量は,全体で窒素14.9
トン/年Nと見積もられている。本総負荷量の約10%
が未処理でブリン10.7 トン/年と見積もられている。
ブン・ボラペット湖は,大きく3つの部分に分けて
考えることができる。すなわち,流入部である東部
の浅く,西部に向かってなだらかった水塊部,およ
び西部の水門近くの沈水植物が大きな群落を形成し
ている部分の3つである。流入部にあたる東部地区
には水辺の抽水植物群落の現存量が多いことが特徴
で、中央部および西部の水門近くは沈水植物および
浮葉植物が繁茂している。また、ホテイアオイを中
心とする浮遊植物の現存量も多く、湖全体に散在し
ている。これら水生植物の年間生産量は、沈水植物
で529,000トン、浮遊植物で325,620トン、抽水植物
で200,800トンとそれぞれ見積もられている。水生
植物全体での年間生産量は1,190,420 トンである。
水産資源としては、魚類の現存量が84.2kg/ha と見
積もられており、Pristolepsis fasciata,Notopter
us notopterus(インディアン・ナイフフィッシュ)
現存量は全魚類現存量のそれぞれ35.6%、22.4%、
12.8%を占めている。ブン・ボラペット湖の魚類相
は、魚類の食性から見ると昆虫食性の魚類が魚類現
存量全体の58.0%を占めていることが特徴である。
ブン・ボラペット湖周辺は禁猟区にされているが、
White-eyed River Martin は既に絶滅した可能性が
高いと考えられていたが、この鳥が、2004年に未確
認ながら、カンボジアで目撃されている。
【エピソード】
タイの洪水をみていて、専門家の予想を超えたリス
ク事象が引き起こされていることに触発され、タイ
の湖、ブン・ボラペットを取り上げた。数少ないプ
ラント建設にたずさわった経験から、申し訳ないが
気象、気候、地勢、地形に関する「カントリ・リス
ク」の見積もりが甘かったと厳しい見方をしている。
【脚注及びリンク】
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1.「ナコンサワン――自然豊かな癒しの街~~中国
正月の祭りはタイ最大級」
2.「ブンボラペット湖の水族館 @ナコンサワン」
3.「A Water Balance Budget for Bung Boraphet—A Flood
Plain Wetland-Reservoir Complex in Thailand」
4.「タイの湖」
5.「TH030Bung Boraphet Non Hunting Area」
6.「White-eyed River Martin」
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