びわます賛歌 P.4

2011年10月13日 | びわます賛歌

 

【日本の湖のサケ科魚類】

 

ヒメマスとミヤベイワナ

サケ科魚類を生活の仕方から見ると、降海型・河川型
および湖沼型の三つのタイプに分けられる。その中で
湖沼型と呼ばれる湖に生息するサケ科の仲間はビワマ
スに限ったものではなく、世界的に見てもヨーロッパ
や北米の湖沼にはイワナやベニザケの仲間などが多く
生息している。日本でも、北海道の湖にはベニザケの
湖沼型であるヒメマスが阿寒湖とチミケップ湖に自然
分布し、阿寒湖から支笏湖へ1894年ごろ移植。1902年
には支笏湖から青森県の十和田湖へ移植されたものが
定着。これらの湖以外にも、北海道の洞爺湖や栃木県
の中禅寺湖などにもヒメマスが生息しており、いずれ
も移植されたものである。ヒメマスの移植が案外成功
しやすいのは、その餌となるものが主にミジンコなど
の動物プランクトンに起因している。うに思われるが、
ヒメマスの生息する湖に同じく動物プランクトンを食
べるワカサギが放流されると、餌が不足してヒメマス
の成長が著しく遅れるとも言われている。



北海道の然別湖には、ミヤベイワナと呼ばれるイワナ
が自然分布している。このミヤベイワナはイワナ属の
一種のオショロコマの仲間であるが、口の奥にある鰹
杷と呼ばれる餌を濾し取る櫛状の突起の数がオショロ
コマより多く、別種までには分化していないが、変異
が大きい。別亜種に分類されており、然別湖だけに生
息する固有亜種とされている。鰹杷数が多くのは、ベ
ニザケと共通した特徴で、餌となる魚類が少ない然別
湖の環境にミヤベイワナが適応して動物プランクトン
を食べるように進化した結果ではないかと考えられて
いる。

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クニマス

秋田県の田沢湖には、1939年までクニマスと呼ばれる
ヒメマスの仲間が生息していた。クニマスは幽門垂(
ゆうもんすい)と呼ばれる消化器官の数が多い点など
ヒメマスとは異なった形態をしていたとされ、本種も
田沢湖だけに棲む固有亜種である。ところが、1940年
に発電用水確保などのため、玉川温泉の温泉水が流れ
込む玉川の水を田沢湖に流入させたところ、強い酸性
水の
ため、田沢湖の魚はクニマスも含めてほとんど絶
滅。クニマス絶滅から半世紀以上を経た現在でも酸性
度を中和するための石灰岩の投入いているが、未だに
田沢湖の水は酸性に偏より、酸性水に強いウグイしか
生息していない。

長野県にある諏防潮には、かつて「アメ」と呼ばれた
サツキマスの湖沼型が生息していたと言われている。
しかし、現在は水質の悪化などでその姿はほとんど見
られないという。ダムによって河川が堰き止められ人
工的にできたダム潮には、サケ科魚類が生息すること
が知られていることから、琵琶湖以西のダム潮にもサ
ツキマスやサクラマスが棲息している可能性がある。

以トのように琵琶湖より北に位置する湖沼には、多く
の場合サケ科魚類が生息している。これは基本的に水
温などの生息条件による制限によるものと考えられ、
湖に固有のサケ科魚類という視点で見ると、然別湖の
ミヤベイワナ、田沢湖のクニマスと琵琶湖のビワマス
だけであり、3種のうちクニマスー種が、人間活動に
よりすでに絶滅していることは、大変残念なことであ
る。


【エピソード】

 

【脚注及びリンク】
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1.「淡水魚辞典 サケ科
2.「
WEB魚図鑑 硬骨漁網 サケ科

3.「
イワナ(サケ科魚類)の生活史二型と個体群過程
4.「
日本魚類学会
5.「魚類学(Ichthyology」Mojie
6.「成長のメカニズムからサケ科魚類の生活史多型と
 資源管理を考える
」清水宗敬
7.「田沢湖で絶滅した固有種クニマス(サケ科)の山
 梨県西湖での発見
」2011年2月22日

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