さて、琵琶湖には約60種の在来の魚類が生息し、多様な生
レイモンド・カーヴァーの詩に『夜になると鮭が』という
詩が好きなのだが「朝になるとサーモンが消え失せる」と
あるぐらい“ご馳走”のメタファーとして鮭が語られる。
活を営んでいるといが本当のところ辞典か博物館かネット
で見かける程度で棲息状態なんか知らないし、カーヴァー
のような本格的な釣りにも無縁なのだ。さて、「コイ科の
仲間が多い中で...」と『川と湖の回遊魚 ビワマスの
謎を探る』(藤岡康弘)の本の引用なのだが、サケ科の魚
が1種だけ含まれており、それがビワマスであるとある。
琵琶湖で古来より「マス」または「アメ」、あるいは「ア
メノウヲ」と呼ばれてきたサケ科の魚に「ビワマス」とい
う呼称を与えたのはサケ科魚類研究者の大島正満だという。
しかし、「アメ」や「アメノウヲ」という名前が琵琶湖に
棲む魚に与えられた固有の名称ではなく、近畿を中心とす
る割合広い範囲のサケ科魚の名称であったのと同じく「ビ
ワマス」という名前についても、琵琶湖の魚を念頭に付け
られた呼称ではあるが、琵琶湖だけではなく広く海へも回
遊する魚として与えられた名前であるこという?「アメノ
ウヲ(阿米魚)」という伝統的な呼称を使用せず、なぜ新
たに「ビワマス」という名前をつける必要があったのか、
その経緯についてはなにも残されてはいないので今となっ
ては謎だともいうのだから、素人のわたしにはどうでもい
いことなんだが、回遊、回帰というキーワードにわたした
ちはひどく惹きつけられる。藤岡氏は「魚の中でも特にサ
ケ科の魚に魅力を感じる人が多いように思われるが、それ
はいったいなぜなのだろうか。それは、川で生まれた子供
がその故郷を離れて旅に出て、幾多の危機を乗り越えて大
きく成長し、再び故郷の川に戻ってくるというその生活史
にドラマを感じるからではないだろうか」と述べているが
そういう気もする。
ユーチューブの動画を観て思ったことは2つ。1つは詩人
でありミニマニズム作家であるカーヴァーのごとくトロー
リングを始めるための条件を、もう1つは、食べることか
らはじめるレシピ創作のテーマを思ってみた。前者は時間
の都合がつかないので当面サスペンディングに...。
ところで「ビワマスは湖と深い森を流れる川との間を行き
来しながら琵琶湖という日本列島のほぼ真ん中に形成され
た湖の歴史とともに生きてきた魚である。われわれ人間よ
りはるか昔より琵琶湖に棲みつき、琵琶湖とともに変化し
てきたであろうこのサケ科の魚は、現在では、琵琶湖とい
う環境がなくては生きてはいけない生物にまで進化を遂げ
ていると考えられる。琵琶湖とそれを包む森や川の自然を
守り共存していくことが、とりもなおさずビワマスという
琵琶湖固有の生物を守ることにほかならないことを紹介し
たい」(同上著者)との言葉をガイドにしばしそれを考察
してみることに。
【エピソード】
【脚注及びリンク】
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1.大島正満「サケ科魚類論集」
2.「レイモンド・カーヴァー」
3.「湖翠ネットコムへようこそ」
4.「田沢湖の魚族 亡びゆくうろくずのために」
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