ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

予期せぬ出来事

2020-06-07 22:46:05 | 映画のレビュー

映画「予期せぬ出来事」をホームロードショーで観ました。1963年制作のイギリス映画だというのだから、もう60年近くも前のもの――舞台となるロンドンの空港の様子、俳優たちのファッション、そして何より、当時結婚していたリズとリチャード・バートン二人の存在自体が懐かしい!

リズとバートンはこの前年くらいに「クレオパトラ」で共演して、結婚したんじゃないかな? だとしたら、リズは当時まだ31歳くらいだったはずーーしかし、何だかしわがない40歳の女性のムードを醸し出しております。

ひょっとして、この人、普通の人より老けるのが早いのかしら?

 

だって、この代表作「陽の当たる場所」に出た時、まだ17歳だったっていうんだから。とてもそうは思えない、絶頂期にある美しさでしょ。ひょっとして、人より成熟や老化のスピードが速い体質だったのかもしれませんね。

この「予期せぬ出来事」に話を戻すと、恋愛ドラマというより、昔の言葉で言う「メロドラマ」に近いストーリーです。リズは、ここでは富豪(これがリチャード・バートン)の妻でありながら、ギャンブラーである元ジゴロと空港で待ち合わせをし、ジャマイカへ駆け落ちするつもりでいるのですが、夫はそんなことには気づかず、愛する妻を空港まで送ってきます。

夫とも見知った仲である、駆け落ち相手のジゴロ。ところが、二人が飛行機に乗ろうとすると、霧が立ち込め、離陸不可能になってしまう。やむなく、リズたちは、空港そばのホテルで待機するのですが、そこへ妻の置手紙を読んで、取り乱した夫が駆けつけて来る――という、舞台劇のような構成になっています。

私が、この作品で、すごく興味深かったのは、ロンドンの空港の様子(多分、ヒースローかな?)。今のような、巨大な一つの街のような国際空港なんかじゃなくて、すべてがとってもコンパクトなのです。 パンナムだとか今はもうない飛行機会社の名前もあり、我が日本の真っ赤な鶴がシンボルマークの日本航空のカウンターもあるのですが、そのどれもがすごくこじんまりとして、各航空会社が肩を寄せ合っている感じ。

ここに漂う空気感――ぜんぜん知らない、私が生まれてさえいない時代のものだけど、何だか懐かしいなア。リチャード・バートンの夫が、リズの手を取りながら「飛行機に乗る前で、緊張しているのかい?」と聞く場面や、「生まれて初めて飛行機に乗るのよ!」と空港のロビーで騒ぎまくる、イギリスの公爵夫人(でも、とっても庶民的なお方で、乗る席は、エコノミー)の姿を見ると、この時代は、飛行機で外国へ行くっていうのは、まだまだ特別のことだったんだなあ、としみじみ実感してしまいます。

こういう、いかにも懐かしのメロドラマ調の物語は、必ずしも好みではないのですが、そこは当時結婚していたリズとバートンの迫力がすごくて、魅せます!

上の写真の悪趣味どピンクのドレスを着た姿が、いかにも……という感じのリズ。でも、二人とも、もうすでに死んでしまっていないし、彼らの若かった頃の姿を見ると、過ぎ去ってしまった時代へのノスタルジーを感じさせられてしまいますね。

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