面白い映画ではなかった。星をつけるとしたら、5つ星の中で、3くらい。物語全体に盛りあがりがなく、主演女優をはじめ役者群の魅力がない。
と、えらそうなころを言ったが、「ハンナ・アーレント」という女流哲学者の名前も知らなかったのは事実。ユダヤ人女流哲学者というと、どうしてもシモーヌ・ヴェイユの名前が浮かび、彼女の著作も持っているのだが、ハンナという女性のことは、寡聞にして知らないまま。
ハンナ・アーレントは、ナチスの戦犯アイヒマンの裁判を傍聴し、それをニューズウィークで伝える仕事を受け持ったのだが、彼女がイスラエルの地で見たアイヒマンの姿は、冷酷無惨な殺人者の姿とはかけ離れていた。 いうなれば、上からの命令を「私の仕事だから」と機械的に処理するだけで、何の疑問も持とうとしない「小役人」にすぎなかったのだ。
ハンナは、その事実にショックを受け、アイヒマンを20世紀有数の犯罪者と位置付け、断罪しようとすることを「おかしいのではないか?」と疑問を呈する。「これは、悪の凡庸さというべきものです。我々ユダヤ人の指導者にも、ナチスの犯罪に加担する動きもあったのです」と――。
もちろん、ハンナはユダヤ人を始め、良識的な人々から集中砲火を浴びる。「ナチのクソ女」とまで呼ばれた、彼女の不屈の意志と静かな闘い--正義というものが、一歩誤れば、真実を見えなくしてしまうことを理解するには、勇気がいる。
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