ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

ローマの哀愁

2016-04-15 21:54:01 | 映画のレビュー

アマゾンで手にいれたDVD[ローマの哀愁」。
ああ、なんと長いこと観たいと切望していた映画であったことか!!

といったところで、、「ローマの哀愁」という映画の存在さえ知らない方がほとんどでしょうね。
これ、実はヴィヴィアン・リー主演のメロドラマ。 原作は、テネシー・ウィリアムズの「ストーン夫人のローマの春」であります。
共演は、これも一世を風靡した二枚目スター、ウォーレン・ビーティー(のごく若い頃)。

私は、昔からヴィヴィアン・リーの大ファンで、憧れる最愛の女優といっていいほど。ヴィヴィアンといえば、「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラの名演が圧倒的で、類まれな美貌とともに、永遠の存在となっていますが、晩年の姿は、あまり知られていないのでは?

中学生の頃からヴィヴィアンに熱狂していたせいで、彼女の主演作品や生涯を網羅したアルバムも、伝記も持っていたのですが、当時から観たいなと思っていたのは、こうした晩年の作品。 神経症を病み、ローレンス・オリビエとも別れるなど悲劇的な晩年を過ごしたヴィヴィアンでしたが、スカーレット以外のもう一つの当たり役は、テネシー・ウィリアムズの「欲望という名の電車」のブランチ・デュボア。

おなじくT・ウィリアムズ作品での彼女を見られる! しかも、原作の「ストーン夫人のローマの春」はとっくに絶版になっているらしいのですが、中学時代、家にこの本があったせいで、読了ずみ。 名女優カレン・ストーンは、夫を失い、失意のままローマにやってくる。老いの気配がしのびよっているとはいえ、まだまだ美しく、極めて裕福。
気位が高く、美しい女性のはかなさ・あやうさ――それをヴィヴィアンのカレン・ストーンは、人生の秋にあらがう女性の虚無や孤独とともに、浮き上がらせて素晴らしい! のです。

カレンは、ローマの地でジゴロを裕福な有閑夫人に斡旋してまわる、伯爵夫人の計略で、若く美しいパオロ(これを、ビーティが演じている)にひきあわされます。孤独なカレンの心入り込むパオロ。二人は恋愛関係となりますが、それは偽りのものでしかなかった…というストーリー。 パオロとの破局後、カレンがローマの町をさまようように歩くところ。「私は漂っているのよ」という彼女の人生の寄る辺なさが感じられて、胸が痛くなってしまうほど。
ヴィヴィアンの繊細でガラス細工のような表情や、エレガンスな身のこなしが、こうした文芸作品のヒロインにぴったりなのでした。

最後、カレンは豪華な自宅アパートのベランダから、下のスペイン広場の階段にたたずんでいる、青年に「自宅の鍵」を投げ与えます。青年は、カレンがローマにやってきた日から、彼女のアパートの下に佇み、彼女の動きをうかかがっていたのです(まるで、恋している若者みたいに。それとも、一種のストーカー?)。
ここで、パオロがいつか予言のように言った言葉「君のような女は、ある日ベッドで殺されるんだ。傍らの男に首をひめられたりしてね」――がこだまするのですが、カレンの人生に待っているのは何なのでしょうか?  1960年頃のローマの情景や、大スターらしいカレンの贅沢でエレガンスあふれるファッションにも、魅了されたのですが、それ以上に私を惹きつけたのは、年を重ねたヴィヴィアン・リーの悲しみを含んだ美しい瞳だったのです。

2 コメント

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「欲望という名の電車」 (ルー)
2020-05-02 14:50:39
中学生の頃から、ヴィヴィアン・リーがお好きなのですね。私は、学生時代に、演習で、「去年の夏突然に」と「欲望という名の電車」を読んで、映画も観ました。「去年の夏突然に」は、エリザベス・テーラーでした。
ブランチ・デュボワを演じたヴィヴィアンは、素敵でした。冒頭のフレンチクオーターにやってくるところとか、忘れられません。
はかなげで、南部のプランテーションの落日を一身に体現しているようなブランチ。
母は、「風と共に去りぬ」と「哀愁」のヴィヴィアンが好きみたいです。
世代を超えて、人々を魅了するヴィヴィアンなのですね。
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Unknown (noel)
2020-05-04 05:11:00
ルーさん、おはようございます! というより、今明け方の5時前なのですが、早く目が覚めて(私には、かなり珍しいです)、このメッセージをしたためています。
コメントを読んで思ったのですが、きっとルーさんのお母様も、映画がお好きなのでしょうね……「風と共に去りぬ」は本当に、素晴らしい映画だと私も思っています! もう80年以上も前に作られた作品なのに、あの迫力、テキニカラーの色彩の美しさ、そしてヴィヴィアンを始めとする俳優たちの、演技の凄さ。
奇跡のような作品!ですね。 
「去年の夏突然に」は、私も観ていますよ
これも、テネシー・ウィリアムズの戯曲が原作なのですが、 彼独特のエキセントリックな世界は、当時一世を風靡していたみたいです(でも、現在では少し忘れられているかも)、あの演技が下手で有名なリズが、この「去年・・・」の中では、迫真の演技を見せているのに、以前びっくりした覚えがあります。
ヴィヴィアンのブランチ・デュボアも、本当に忘れがたい名演技でした。スカーレットとは、正反対の「滅びの美学」を体現する儚さ・美しさ・・・アメリカ南部って、こんな優雅な貴族文化も、持っていたんですね。
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