今日の話題は、あの20世紀の名作「チボー家の人々」であります。白水社から出ている文庫本を、ノエルの本棚に並べたところですが、なんと13巻もある大作。 プルーストの「失われた時を求めて」とどっちの方が長いかしら?
物語は、第一次大戦前のフランス。厳格なカトリックの富裕なブルジョワ家庭に生まれたジャックと、その兄アントワーヌ。 冷静な秀才型のアントワーヌは後に、医師となりますが、次男のジャックは、気性の激しい反抗児。 かれらに、ジャックの友人であるダニエルとジェンニーの兄妹が、主要な登場人物です。
やがて、第一次大戦がはじまり、ジャックは参戦するのですが、敵の手に落ち、射殺されるという悲惨な最期をとげることに。アントワーヌも、毒ガスのため、瀕死の状態となり、同じく負傷したダニエル。彼らの戦後への希望は、恋仲となったジャックとジェンニーの子供であるジャン・ポールへと託されるのですが、20世紀初頭のヨーロッパ世界や当時のブルジョワ階級の有様が印象に残っているなあ。
なんて、よくわかっているように書きましたが、実はわたしがこの大作を読んだのは、中学二年生の時、一度きり。 中学校の図書館に、黄色い(いかにも、ヨーロッパの黄色という感じのニュアンスある色調でした)表紙の「チボー家の人々」があって、当時14歳のわたしは、秋から冬の間にかけて、ジャック達とともに過ごしたのでした。(今、思い返しても、わたしが一番本を読んだのは、14歳から16歳くらいにかけてでしょうね)
ジェンニーの姿や、ジャックとダニエルが取り交わすノート、彼らの家の間取り・・・そういったものも生き生きと想像して浮かび上がらせたもの。 ジェンニーの母親やアントワーヌの恋人のラシェルという女性のエピソードも、印象深く覚えています。
わたしが今持っている、文庫本は大学に合格した時、友人がプレゼントしてくれた図書券で買ったもの。本棚に並ぶ、「チボー家の人々」を見るたびに、あの時の、彼女の好意を思い出します。
ところが、充分に歳を取った今、目が悪くなり、気力もなくなり、長編を読めなくなってしまいました。私も、中学生、高校生の頃、勉強をさぼって読みふけっていた頃が1番本を読みました。大学生のときに、つまらない授業のときに、隠れて本を読んでいたり。若い頃でないと、本も読めないと実感する今日この頃です。おやすみなさい。
お元気でお過ごしでいらっしゃいますか?
実は、わたしもルーさんと同じような状況で、なかなか長編が読めなくなっています。「失われた時を求めて」は、十代の頃、その存在を知ったのですが、14巻という長さに恐れをなして、手を伸ばせないままでした。それから、幾星霜……きっと、もう一生読めないでしょう。
ただ、「スワンの恋」という映画を見て、ほんの少し、プルーストの世界にふれられたような気がしています。
恥ずかしながら、今長編が読めるのは、東野圭吾のミステリーくらいな……というくらいです。