ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

うっとり・・・

2016-02-25 20:52:42 | カリグラフィー+写本装飾

この間、頂いた本――「ヨーロッパ中世の四季」木島俊介著。中央公論社  です。
母が、「すごくいい本ねえ。よく下さったわね」と感想をもらしましたが、本当に素晴らしい美術書!
       こういう中世写本好きには、こたえられないページが並んでいる上、解説文が、深い知性と感性を感じさせ、目の前に豊饒な中世ヨーロッパへの扉が開かれたよう。
  ぅまく、画像を縦にできない()のですが、これは、中世写本の至高と名高い「ベリー公の大時禱書」の1ページ。 上部に天球図が描かれ、下には、ベリー公の生活や彼の領地での農民の生活が美しい細密画で描かれています。
このベリー公というのが、面白い。時のフランス王シャルル5世の弟ですが、政治など眼中になく、芸術のパトロンとして後世に名を遺した人物なのであります。
この時代の王族というのは、広大な領地や莫大な財産を後ろ盾に、自分のための祈りの書(時禱書を平たく言ったもの)を腕利きの画家に作らせたのですが、極めて魅力ある美の世界が誕生したのですね。
     
そして、ベリー公は自分のためのペットとして珍奇な動物を沢山飼っていたのですが、特に彼が愛したのは「熊」。この最愛のペットに「小姓」という位を与えて、旅先にも連れて行ったくらいなのですが、ベリー公のエンブレムにも、熊公が登場するのであります。そして、もう一つのシンボルは白鳥でした。


               
 ジャーン! このベリー公の紋章を見よ! フランス王家を意味する青地に百合をあしらった紋章に、仲良く寄り添う熊と白鳥。とっても、可愛らしいと思いませんか?
華麗でありながら、こうしたユーモラスな魅力があるのが、中世ヨーロッパ美術の世界。 一目みたとたん、すっかりこの紋章の虜になってしまいました。

中世ヨーロッパについて書かれた専門書は何冊か持っているのですが、この本ほどわかりやすく、エッセンスがちりばめられた本は知らなかったなあ…。中世人が、書物の挿絵や教会の装飾に用いた奇妙な、想像上の動物たち。あれは、当時の人々の豊かな想像力の産物とばかり思っていたのですが、キリスト教が、未開の野蛮な種族をもあまねく教化してゆく、ということを現してもいるのだとか。

以前、パリのノートルダム寺院で、夢魔のごとくグロテスクで魅惑的な動物のガーゴイル(一種の排水パイプの頭の部分)が建物の脇から、多頭の竜のように首を突き出していたのを見たこともありました。 ヨーロッパ中世は深いのだ! 

Tさん、こんな素敵な本をありがとうございました! ずっと、大切にしますね。
             
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