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虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

狩人と犬、最後の旅(2004/フランス、カナダ、ドイツ、スイス、イタリア )

2006年09月06日 | 映画感想か行
LE DERNIER TRAPPEUR
THE LAST TRAPPER
監督: ニコラス・ヴァニエ
出演: ノーマン・ウィンター
   メイ・ルー
   アレックス・ヴァン・ビビエ

 ユーコン川周りの過酷で雄大な大自然の中、昔ながらの罠猟をして生きる実在の狩人ノーマン・ウィンターと妻と犬たちとの生活を描く。監督は、自身もフランスの著名な冒険家であるニコラス・ヴァニエ。

 エンドクレジットを見ていて驚いたのは、声が吹き替えだったのですねえ。
 ノーマンをノーマン本人が演じているフィクションなのだ、と改めて気付く瞬間。

 特に「ここがクライマックス!」というあからさまなシーンは無く、淡々とした映画です。ただ、分かるのは毎日の生活自体が生と死のどちらも見えるところにいる、厳しいものであり、それこそが人間の生活であると彼らが考えているということでしょう。
 私がこの映画を見たくなったのも、私自身が人工的環境でなくては落ち着かないどうしようもない状態にいることを自覚しているからです。
 ノーマンは反対で、自然の中で、彼自身も自然の一部として生きることが必然である人です。
 この映画は、信頼していた橇犬のリーダーが事故死したあと、新しく加わった犬がノーマンの生活にしっかりと根を下ろすまでがメインストーリーとして進んで行きますが、ストーリー展開よりもノーマンと妻ネブラスカ、犬たちの生活の様子を見ていてやはり粛然たる思いを抱かざるを得ません。
 毛皮の値段のやり取りも彼の価値観を示すものでしょう。
 思い出したのは「クマにあったらどうするか」の姉崎等氏でした。
 こういうもので、たまにどついてもらって、自然に対する謙虚さを思い出さないといけません。

 気になるのはタイトル。「最後の旅」は違うと思うのですが。

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 雨の中走っていったのに時間を間違えていて40分待って、また冷えた。いつものシネコンではなく、小さな映画館だったので、久しぶりに映画の前に「神奈川ニュース」を見る。ニュースタイトルのバックに流れる神奈川県歌は、歌いだしの「ひ~かりあら~たに~」までしか知らないのだが、この続きを歌える人に会ったことが無い。相変わらずレトロ調なニュースでなごんだ。

銀河ヒッチハイク・ガイド (2005/アメリカ)

2006年07月03日 | 映画感想か行
THE HITCHHIKER'S GUIDE TO THE GALAXY
監督: ガース・ジェニングス
出演: マーティン・フリーマン   アーサー・デント
    サム・ロックウェル    ゼイフォード・ビーブルブロックス
    モス・デフ     フォード・プリーフェクト
    ズーイー・デシャネル    トリリアン
    ビル・ナイ    スラーティバートファースト
    ジョン・マルコヴィッチ     ハーマ・カヴーラ

 イギリス人、アーサー・デントはある朝、自分の家がバイパス建設のために取り壊されることを知って驚愕し、抗議の最中に、なんと宇宙バイパスの建設のために地球が破壊される。間一髪で実は宇宙人だった友人フォードに救われ、アーサーはたった一人の地球の生き残りとなり、フォードに貰った「銀河ヒッチハイクガイド」とタオルを持って宇宙をさすらう破目になる…

 映画見てどうも落ち着かなくて、結局原作読んで、ついでに未読だった新訳「さようなら今まで魚をありがとう」も買い込んでしまいました。本読んで映画見る以外にも全くなにもしていないわけではないので、いえ、働かないと本も映画も見られないので、さすがに文庫4冊2日でイッキ読みはきつかったです。
 で、落ち着かなさの原因はなんとなくわかりました。
 かなり前に読んだ本なのですが、登場人物・ロボットなどのイメージが強烈にやきついていたりして、少し違うとやっぱり違和感があるみたいです。でもこのほんのムードを壊さずにイメージをこれだけにまとめたのは、ちょっと急いだ感はあるけどまあ及第かな、と思います。
 例えば、サム・ロックウェルのゼイフォードは面白かった!なかなかのものでした。でも私、頭が常時並んで両方それぞれ好き勝手なことしてると思ってたのです。
 それにマーヴィンがめだたな過ぎ。なんたって彼の人生観(?…ロボットだけど…)を接続した生命維持装置が自殺したりするくらいのネガティヴなプロトタイプ(典型的)な性格につくられたプロトタイプ(試作品)の高性能ロボット。徒手空拳で高性能攻撃ロボに悲観論だけで勝っちゃうのだ。薄暗い部屋の隅から恨めしげに赤く光るマーヴィンの目…この映画時間短いし、でも、マーヴィンがもっと見たかったの。
 ラストもあれで片付けちゃっていいのかなあ…とはやっぱり思う。

 と言いつつ、このレンタルDVD我が家に10日間滞在し、7回も見てしまった。そしていつの間にかDVD購入を考えている…なんだかんだ言って好きです。地球創造とかの部分と、クリーチャーのちょっとチープ手作り風レトロな風味もそれなりによろしゅうございました。

 本のほうは、こういうの好きです。本当に。

グレン・グールド エクスタシス (1995年 / カナダ )

2006年06月13日 | 映画感想か行
GLENN GOULD: EXTASIS
監督: ジョスラン・バルナベ
出演: グレン・グールド 
    ウォルター・ホンバーガー
    ユーディ・メニューイン
    ブルーノ・モンサンジョン

 グレン・グールドと名がつくと手が出てしまいますが、これはグールドものの中でもちょっとはずれでした。いままで他のドキュメンタリーで既に聞いたことが多かったし、コメントがみんな断片的なのと、ピアノが少ししか聴けなかったのでがっかりだったのです。
 テーマごとにいろんな人のコメントの断片を集めるという、こういうスタイルは、最近グールドに出会ってこれから聴いていこうという人への紹介にはいいかもしれないけれど、私は欲求不満。ピアノ聴きたい、指が見たい、もっとじっくり話を聞きたい。
 他の記録映画では、彼自身相当語ってるもの。

 私は音楽は一義的に場の芸術で、演奏家と受け手とでその場で作っていくものだと思っているので、やはり演奏会しないグールドは特殊だと思う。でも素晴らしい。彼のCDを一年のうち半分の日数は聞いてる。ベートーベンの交響曲第5もおそらくオーケストラよりもグールドのピアノで聞いた回数のほうが多い。本来オルガン曲であるバッハ「フーガの技法」のピアノ演奏を聞いていつも唸る。同じものを聴いてもグールドの聴いていた音楽と私の聴いているものとは違うんじゃないかと思わざるを得ない。
 CDで一番好きなのはモスクワコンサート録音。それにしてもシェーンベルクを愛唱するなんて信じられない。

こわれゆく女 (1975/アメリカ)

2006年06月05日 | 映画感想か行
A WOMAN UNDER THE INFLUENCE
監督・脚本:ジョン・カサベテス
出演:ジーナ・ローランズ
    ピーター・フォーク
    マシュー・カッセル

 仕事で留守がちな夫と3人の子を持つメイベルは次第に奇行が目立つようになる。夫のニックはそんな妻に困り果て病院へ入れるが、子どもとともに彼女が家庭に戻る日を待つ。

 DVDで「父帰る」も見まして、これもずしっと来る映画なのですが、今日家に帰ったらこの映画をBSで放送していてつい見ちゃいました。見たいと思ってないのに、チラッとでも目に入ると見ずにはいられないのですよ、この映画。
 怖いといえば、並みのホラー映画よりず~~~っと背筋が凍る、というか固まるような気分になります。
 メイベルが正気を失っていくきっかけははっきりとは示されていなくて、映画が始まった時点でもう既に常軌を逸した状態になっています。その挙措のひとつひとつが怖い!
 スパゲティの会食シーン、スクールバス、入院直前のやり取りなど、つい歯を食いしばって見ている。
 ピーター・フォークは素晴らしい。やりきれなさを時として爆発させながらも、なおも妻を愛して、子の母として尊重していく、教養はさほどなくても責任感と愛情に満ちた夫の存在をリアルに感じさせてくれる。それだけに見るほうは痛くてしょうがない。

 それでラストシーンが、あの普段の馴れた動作で日常が帰ってきたように締めくくられるのを見て、私はほっとしているのか怖がっているのか 自分でもよくわからなくなってしまう。

 それにしても、ジーナ・ローランズのあのもつれ髪と落ち着かない動きは見てしまうと数日間つきまとわれてしまう。あのファッションも。カサヴェテス監督は自分の妻にあんなことさせられるなんて、やっぱりまず同志なんですかねえ。

ゴッド・ディーバ (2004/フランス)

2006年05月05日 | 映画感想か行
IMMORTEL AD VITAM
監督: エンキ・ビラル
出演: リンダ・アルディ    ジル
    トーマス・クレッチマン    ニコポル
    シャーロット・ランプリング    エルマ・ターナー

 2095年、人間と、それ以外のものが入り混じり、人も半ばサイボーグのようにパーツ交換をするのがあたりまえのニューヨーク。神々の一人であるホルスは、そこで人工化されていない人間ニコポルに乗り移り、「青の女性」を捜し求める。

 なんかキョトンとしてしまった。
 ホルスが神々からなぜ処刑されることになったか、以外のことはストーリーとか設定とかは実にわかりやすい。というか「前に見たことがある」ものばかりで構成されているよう。
 あのぼろっちくて重量感のあるメカ類、なんか半端なコスチューム、すさんだ灰色の都市の有様、腐ったような統治体制、サイボーグ化される人々と邪悪な巨大企業、反抗勢力…
 わかりにくいのはそれぞれの意味づけ。
 なぜセックスに意味を持たせるのか?
 なぜエジプト神なのか?ほとんど神々しくないのがおかしいってばおかしい。
 ジルの存在と出産がその世界にとってどういう意味を持つのかが今ひとつ明確でない(私がわかり損ねただけかな?)なので、ニコポルは納得しても、私はホルスの言う事に納得できないぞ。
 それに最後!いくらなんでも鮫アタマはないだろう…もっとすごい造形ひねり出してよ~~~!
 映像では「キャシャーン」のほうがいいかなと思う。
 時々爆笑してしまった映画でありました。だって、おかしかったんですもの。神様の目の火炎で足作ったり、ゲームをする神様の周りで飛び交うものとか。ゲームをする神様というのもメタファーなのかもしれないけど、わかりやす過ぎかも。

県庁の星 (2006/日本)

2006年03月23日 | 映画感想か行
監督: 西谷弘
出演: 織田裕二   野村聡
    柴咲コウ   二宮あき
    佐々木蔵之介
    井川比佐志
    酒井和歌子
    石坂浩二

 県庁のエリート役人が官民交流で出向いた先はつぶれかけのスーパー。出世へのワンステップとして何とか経歴に傷をつけずに過ごそうとする野村は、客商売にまったく役立たずで、指導役でついた女性パート店員二宮とことごとく対立…

 フツーに楽しめました。堅実でスタンダードなドラマでした。
 今日は女子中学生のお付き合いというか、付き添う名目でついていったんだけどその子にはとっても受けてました。私はちょっと展開のスピードがテレビっぽいような気がして、この大画面使うんだからもうちょっと派手にならんかなあ、とか少しシリアス方面に流れすぎてないかとか思ってしまったのだが、役者さんたちも手堅い感じで、特に類型的悪役は楽しんでました。

 しかしこれくらい楽しませてもらうと、「ああ下妻は…」とかどうしても思ってしまいます。もうちょっと鋭く出来るんじゃないかとか…いかん、ここは批判の場所ではないのでこの先はちょっと考えてから書き足します。

25日 補足します。
 何が一番物足りなかったのか、考えて思い当たるのは、ヤングアダルト向けの読後感みたいなものかな、と。
 最近の子供向けの小説はシビアな世界で大人への段階を踏んでいかなければならない子どもたちの挫折とか家庭崩壊も子供向けの範囲でちゃんと描いています。この物語もどちらかというと挫折知らずの男の子(織田裕二はちょっと老けてるけど主人公のムードは明らかに天狗になった子どもだし)
 それが一度地に落ちて、己の限界と可能性を掴みなおし、非力でも自分自身の信ずるところへ踏み出してみよう、という行ってしまえば「よくある」というか、児童文学では常道です。それで、きっとそういう本で描かれる自分自身の力で歯を食いしばって成長しようとする主人公に感じる「清々しさ」がもっとほしくなったのかも、と思います。
 主役の二人は役に合ってることは合ってるのだけれど、どちらも「何を演じても織田裕二、柴咲コウ」というタイプの役者なので(これはワルクチではなく、石原裕次郎なんかもそういうタイプだと思うのですが)私の感覚で、そういった清々しさとの違和感を持ったのではないかと考えました。

恋の手ほどき (1958/アメリカ)

2006年03月05日 | 映画感想か行
GIGI
監督: ヴィンセント・ミネリ
出演: レスリー・キャロン   ジジ
    モーリス・シュヴァリエ  オノレ
    ルイ・ジュールダン    ガストン

 砂糖王の息子、大金持ちのガストンはパリの社交界で次から次へと女性と浮名を流している。指南役は叔父のオノレ。オノレがかつて真剣な恋をした女性の孫娘ジジは天真爛漫な少女で、無邪気にガストンと付き合っている。次第に成長する彼女に惹かれたガストンは彼女の世話をしたいと祖母に申し入れる。

 退廃的で絢爛なパリ社交界の浮ついた恋の中で咲く清純な乙女の愛…みたいなミュージカルで画面や衣装が凄くきれい。しかし、歌はいっぱいだけどダンスがほとんどなくてこれがMGMのミュージカルだとはちょっと信じられない。しかもその年のオスカー総なめとはもっと信じられない。いろいろあるんですねえ、アカデミー賞も。
 オスカー総なめの先入観無しならば、かわいいおとなしい感じのミュージカルで、主人公ルイ・ジュールダンをおいて映画紹介サイトでヒロイン、レスリー・キャロンの次に挙げられているキャストのモーリス・シュバリエの老伊達男が素敵。主人公がいくら若くてハンサムで修行中とはいえ、この年季の入った遊び人の軽やかな物腰に完全に位負けしている。「歳をとるのもいいものさ」と言う言葉に「こういう歳の取り方なら良いわ」と、「タフ・ガイ」のバート・ランカスターとこのシュバリエには素直に頷けます。「黄昏」のヘンリー・フォンダも見ていてきついものがありますしねえ。

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 金曜夜には夜8時就寝という小学校低学年の良い子の様な有様でした。疲れていただけではなくて風邪引いたみたいで土曜日は一日中頭がグワラングラワンとして起き上がれなかった。「ナルニア」見にいくつもりだったのに。
 夜に少し調子が戻って、実はDVDの「ミミック」借りていたんだけれど、あの臭気のする様な映画を見る気にはなれなくてBS放送の「恋の手ほどき」をほにゃ~んと見ていました。金曜に会うはずだった友達も一人熱出してキャンセルしてきたし、一人は出てきたけど「インフルエンザのA型、B型続けてかかっちゃった」とひどい声をしていた。もう若くないなあ、とつくづく思った次第。

ギフト (2000/アメリカ)

2006年02月22日 | 映画感想か行
THE GIFT
監督: サム・ライミ
出演: ケイト・ブランシェット     アニー・ウィルソン
    ジョヴァンニ・リビシ     バディ・コール
    キアヌ・リーヴス     ドニー・バークスデール
    ケイティ・ホームズ     ジェシカ・キング
    グレッグ・キニア      ウェイン・コリンズ
    ヒラリー・スワンク     ヴァレリー・バークスデール

 夫を亡くし、3人の男の子を占い師をしながら育てているアニー。子どもの教師ウェインの婚約者が行方不明になり、彼女はその遺体をその不思議な能力で探し出す。

 サム・ライミですが、急展開と言う感じのところはなく、騒がしくない緊迫感が盛り上がって最後はなかなかジンとしました。誰でも理解者とか、自分を確認してくれる相手がほしい。でもそれを引き受けるのは大変。「ギフト」というのはそれぞれの人間に与えられた能力・才能のことでしょうが、それ以外にも他者から差し伸べられる手なくしては生きていけない。それが生死を問わず、というのが恐ろしくもあり、あり難くもあります。 

 ケート・ブランシェットは、はじめて見たときにサイコ系の似合う女優さんだと思ったけど、やっぱりこういう役は似合うと思う。それにジョバンニ・リビシがいい。強迫観念のカタマリみたいな哀れな男を実にうまく造形している。「フライト・オブ・フェニックス」以外では彼はいつもうまいと思う。それに比べるとキアヌ・リーヴスは今一歩いつものイメージから抜けきってない感じ。ヒラリー・スワンクがおどおどしたバタード・ウーマンを演じて良いのですが、「ミリオンダラー・ベイビー」以後はあの雄姿がちらついてしまう。

 それに音楽はクリストファー・ヤングだが、エンド・クレジットでキャストの中にダニー・エルフマンというのがあったような… 返す前にまた確かめないと…しかし眠い。フィギュア早起きしてみてしまった。

逆境ナイン (2005/日本)

2006年02月19日 | 映画感想か行
監督: 羽住英一郎
出演: 玉山鉄二   不屈闘志
    堀北真希   月田明子
    田中直樹   榊原剛
    藤岡弘、    校長

 全力学園野球部は、対外試合で一度も勝てず校長から廃部を言い渡される。キャプテンの不屈はその撤回のために甲子園出場を宣言。しかし部員の離脱、野球を知らない監督の就任と次々に逆境に追い込まれる…

 堀北真希ファンのお付き合いで見た映画。私は原作知らないのですが、原作ファンはどう見たのでしょう。
 ちょっとテンポとろくないかな?
 それに原作のにおいをどこまで伝えているのだろう?
 それともかなり別物?
 最初から最後まで濃くて泥臭いムードを貫いてるのはわかったし、主役の男の子(戦隊シリーズでお目にかかったことがあるかな…男の子とは言っても、やっぱり高校生にしてはトウが立ってる)あほらしさを照れずに、最後までパワーダウンせずに力こぶ振るって臭い演技し続けてくれたのは良かった。
 つまらなくはなかったけど、もう少しストトントン、といい調子で進めてくれたら、あのモノリスもどき落下がもっと爆発的におかしかったり、藤岡弘の暑苦しキャラももっと生きたんじゃないか、などなどつい考えてしまった。サッカー部ではラストでもうひとつ〆ても良かったかな。まあ、原作があるのでそこはなんともいえないのだけれど、映画だけで考えるとそう思った。

 くどいけど、決して見て損した映画ではないと思うものの、見ると「下妻物語」の見事な構成や、やはり洗練を排しやりすぎで行こう路線の「カンフーハッスル」が、いかにカッチョイイ映画なのか思い知らされるように思う。

グラン・ブルー完全版 (1988/フランス)

2006年02月17日 | 映画感想か行
LE GRAND BLEU: VERSION LONGUE
監督: リュック・ベッソン 
出演: ロザンナ・アークエット    ジョアンナ
    ジャン=マルク・バール    ジャック
    ジャン・レノ    エンゾ

 素もぐりの驚異的な記録を持つジャック・マイヨールをモデルに、海の虜になった男たちの友情と生と死。

 allcinema ONLINEの解説では、劇場で見なかったものはこの映画について語る資格なし、と書いてあります。で、私も資格無しのひとりで、家の小さいテレビ画面でしか見ておりません。確かに、海のシーンは大スクリーンで見たくてたまらないものです。そもそもがそこが目玉の映画だと思うので、それを楽しみ損なうとあとはジャックとエンゾの可愛げに参るか参らないかで見方が変わってくると思う。
 私は、やっぱり見ているだけだからジャックもエンゾもいい男だと思ったのである。息子とか孫として見るならたまらなく魅力的だけど、女としてはパートナーに選ぶにはつらい。イルカや、あんなにすごい恐ろしくて美しい海には勝てない。でも、だからこそ人の限界へのチャレンジが可能な人間たちなのだろうとか…

 完全版の日本チームは必要ない、というか興ざめだと思うのだけど。

 私の場合、初めて見たときに、隣にいた人間が実在のジャック・マイヨールについて知識があったりしたものだから「唐津は出てこないのか?」(マイヨールが初めてイルカと親密になったのはなんと日本の海だったらしい…)「これはどこまで実話だ?」とかいろいろ言ってくるのでなんだか中途半端に見たような見ないような気分だった。
 伝説的ダイバーとして名前だけ知っていた私もその死のニュースはショックだった。この映画はマイヨールの生きているときのものだが、ジャン・レノの海中に沈むシーンといい、ラストシーンといい、何か彼の本来の場所への思いがこのフィクションの中にこそ生きているようで、今回マイヨールの死後に見て前よりもっと感じるものがあった。

コーラス (2004/フランス)

2006年01月03日 | 映画感想か行
LES CHORISTES
監督: クリストフ・バラティエ
出演: ジェラール・ジュニョ     クレマン・マチュー(音楽教師)
    フランソワ・ベルレアン    ラシャン(校長先生)
    ジャン=バティスト・モニエ   ピエール・モランジュ(少年時代)
    ジャック・ペラン     ピエール・モランジュ
    マリー・ブネル    ヴィオレット・モランジュ
    マクサンス・ペラン     ペピノ

 指揮者のピエール・モランジュは母の葬儀のため帰郷した際、子ども時代の友人ペピノが訪ねてきて、モランジュが孤児や問題のある子どもたちを収容する施設にいたときの舎監だったマチューの日記を手渡される。1949年、フランスの片田舎。“池の底”という名のその施設では強権的で厳しい体罰を加える校長と敵意と猜疑心と孤独の中にいる子どもたちがいた。志を得なかった音楽家であったマチューは子どもたちの合唱団を結成。そして、問題児ピエール・モランジュが素晴らしい歌声の持ち主であることを知る。

 実にオーソドックスなヒューマン・ドラマだった。もう型どおり期待通りで、安心して泣ける気持ちのいい映画だった。
 オープニングのジャック・ペランのアップで、「ニュー・シネマ・パラダイス」の世界を覗き、ジェラール・ジュニョで「バティニョールおじさん」の世界へ連れて行かれてしまい、まあだいたいその期待通り。
 私がいいなと思ったのは歌を知らない、両親も知らないペピノをああいう役どころに配したこと。彼は一部始終を見届け、地の塩というべきマチュー先生の人生をいろんな意味でまっとうさせることになる。

 ただ私にはちょっとつらかったのは、ボーイソプラノが苦手だから。主人公の少年はきれいだし、声も実に美しいけれど、酔えない。私は力強い声が好きなので、夜の女王のアリアとか、そんなのに聞きほれるのだ。「恋とはどんなものかしら」もちゃんと男装のメゾ・ソプラノに歌ってほしい。少年合唱団の独特な繊細さが好きな人だったらめちゃめちゃ陶酔できる映画でしょう。

傷だらけの栄光 (1956/アメリカ)

2005年12月27日 | 映画感想か行
SOMEBODY UP THERE LIKES ME
監督: ロバート・ワイズ 
出演: ポール・ニューマン
    ピア・アンジェリ 
    サル・ミネオ 

 ニューヨークの下町の不良、ロッキー・グラジアノが、刑務所暮らし後、軍隊懲戒除隊という道を経ながらもボクサーとしての天分を開花させ、やがて世界チャンピオンとなるまで。

 これは、原題じゃないと十分に頷けないような感じがします。「天にいるものに愛されている」…ほんとに道踏み外してすっころんでばかりの不良なのに、周囲の人間に突き放されずに愛され、最後にはここ一番の生涯の勝負どころで勝っちゃうんですから!
 それにまた、主役のポール・ニューマンがその「憎めなさ」をうま~く演じてると思う。ちょっと垢抜けすぎてるかなとも思うけど、脊髄反射で生きてる様なショウのない若い者らしさがいいですね。
 ロバート・ワイズ監督の演出もよどみがない、という感じです。ボクシングのシーンも迫力満点で、思わず握りこぶし作っちゃいますが、同じリング上のファイトシーンでも「レイジング・ブル」のあの独特な熱気とは違うのがまた面白いところです。やっぱり主役の持つ質の違いでしょうか。

キング・コング (2005/アメリカ)

2005年12月25日 | 映画感想か行
KING KONG
監督: ピーター・ジャクソン
出演: ナオミ・ワッツ    アン・ダロウ
    ジャック・ブラック    カール・デナム
    エイドリアン・ブロディ    ジャック・ドリスコル
    アンディ・サーキス 

 大恐慌下のニューヨークで、ボードビルショウに出演中の女優アン・ダロウは仕事にあぶれて食事も満足に取れない。映画監督のデナムは自分の映画がつぶされる寸前。デナムはアンと、脚本家のドリスコルを騙して船に乗せ、海図にもない未知の島でのロケに出発する…

 名作「キングコング」のリメイク。186分は長かったです。とはいえ、それを感じるのは前半の背景解説部分。ただそこでもお笑いどころもたっぷりちりばめられていたし、ナオミ・ワッツも今までで一番きれいに感じたし、この映画ではエイドリアン・ブロディのハの字眉毛のナサケナ顔が、いかにもピタリで役柄とひょろひょろした印象を裏切る胸の筋肉を補っておりました。
 しかし、コング登場以降はアクションに次ぐアクション、恐竜はめっちゃたくさんでてきて転げるわ将棋倒しするわスタンピードするわ、でかい、いや~な虫はゾワゾワうじゃうじゃ出まくるし、(たぶん)吸血大蝙蝠は相手かまわず飛び掛るわで、もうこれでもかこれでもかの出血大サービス振り!あちらでもこちらでもの息つく間もないピンチの連続には大昂奮!!!

 この映画では、CG技術の進歩でコングの表情がめちゃくちゃ豊かに描かれ、見ているほうでは暴れまくり、人間に損害与えているにしても、どうしてもコングに感情移入してしまいます。ラストではコングの運命への悲しみの涙を禁じえません。
 それでも、コングとアンの間にお互いへの愛情が質は違うにしても通っているのがはっきりわかり、今までの映画で一番まともにヒロインに扱われたコングだったように思います。
 ジャック・ブラックはまあまあ良かったし、とてもがんばっていましたが、でも憎まれ役としてバランスをとるにはもう一息に思う。オリジナルでもそうはっきりした敵というものがいなかったので、こういう風に感じるのも演出の狙いかもしれない。
 船長さん、航海士かっこよかったし「闇の奥」にも「ふふっ」です。アンディ・サーキスさん二役時の死に様はとってもいやですね~ 身震いしました。

 やっぱりオリジナルの偉大さを改めて認識する作品でもありました。

キャノンボール2 (1983/アメリカ)

2005年12月23日 | 映画感想か行
CANNONBALL RUN II
監督: ハル・ニーダム

「キャノンボール」の続編で、その後日。王子が雪辱を期して自ら主催してまたアメリカ横断レースに挑む。

 B級,C級映画って何かということで考えてた時にこの映画のタイトル見て予約したのが来ました。
 これ、一作目の「キャノンボール」はオールスターキャストのわいわい映画で、自ら主演作パロってるスター、自分のイメージをデフォルメしてる有名人とかみんな楽しそうで、見てるほうも楽しかったのに…
 その続編のこっちの映画はてんでたるいのは何故???
 少しメンバーの入れ替えはあるけど、皆様同じようなことやってるのに駄目。ちっとも気持ちが弾まない。時々面白いんだけど。サルとか。ジャッキーチェンはまだしゃべってないなとか、パックマンとか、

 私の映画分類って私にとって「面白いか・なにか響いてきたか。そうでないか」の分類しかないから、B級という概念自体が馴染みませんねえ。ただ失敗作だと思ったのや、期待はずれの作品にはついC級、D級とか使っちゃうことあるような気がします。
 この映画は、これだけ役者を揃えて「あらら…」な映画でありまして、「キャノンボール」の陽気なお祭り気分を期待していて初めて見たときには、「C級映画だわっ!」とか言ってたんじゃないでしょうか。
出演:
バート・レイノルズ 
ドム・デルイーズ 
ジャッキー・チェン 
シャーリー・マクレーン 
ディーン・マーティン
サミー・デイヴィス・Jr 
マリル・ヘナー
スーザン・アントン 
キャサリン・バック 
リカルド・モンタルバン 
テリー・サヴァラス 
ジェイミー・ファー
ジャック・イーラム 
フランク・シナトラ 
シド・シーザー 
ヘンリー・シルヴァ
フォスター・ブルックス
ティム・コンウェイ 
トニー・ダンザ 
マイケル・V・ガッツォ 
リチャード・キール

カサンドラ・クロス (1976/イタリア、イギリス)

2005年12月20日 | 映画感想か行
THE CASSANDRA CROSSING
監督: ジョルジ・パン・コスマトス
製作: カルロ・ポンティ 
音楽: ジェリー・ゴールドスミス
出演: リチャード・ハリス  ジョナサン・チェンバレン博士
    バート・ランカスター  マッケンジー大佐
    ソフィア・ローレン   ジェニファー・チェンバレン
    エヴァ・ガードナー  ニコール・ドレスラー
    マーティン・シーン   ロビー・ナヴァロ
    イングリッド・チューリン  ドクター

 ジュネーブでアメリカの研究施設に過激派が押し入り、培養中の危険な伝染性疾患を起こす細菌をあびた。そしてヨーロッパを横断する列車に乗って逃げる。彼を追うアメリカ軍情報部の大佐は、その列車に有名な医師チェンバレンが乗り込んでいることを知り、協力を依頼する。

 オールスターキャストです。こういうスターがずらりの映画はもう舌なめずりしそうに好きです。やっぱり突っ込みどころがあろうが、こういう風格のあるスターが揃うと、ずしっと映画としての量感が増してたまらないです。まあ、たまにスターがそろってもどうにもならないのもあるけど。
 これも前半と後半でサスペンスの質がちょっと違う感じです。前半の持っていき方からだと、人間関係も細やかに描かれて、硬派人間ドラマ+社会派サスペンスかと思うと、なんと後半は典型的に窮地突破アクションになっちゃうのです。ですから、マッケンジー大佐役のランカスターなんか、ラストに至っては重厚であればあるだけマヌケに見えちゃのですが、それもまたこの映画のいいところかな、と思います。
 リチャード・ハリスもいかにも文武両道で素敵ですし、ソフィア・ローレンも魅力的。エヴァ・ガードナーがやたら輪郭の濃い役で負けてないし、マーチン・シーンだ、きゃあ、レイモンド・ラヴロックなんて、お珍しい!なんちゃってサスペンスと別に楽しめます。

 やはりこういう、深刻になり過ぎない大作映画らしいアクション映画は疲れた頭にとてもよく効きます。