二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

遠い波打ち際で(ポエムNO.4-24)

2020年09月15日 | 俳句・短歌・詩集
   (新宿オールディーズライブ/ザ・アムトラックにて 1993年ごろ)



心も体もいつのまにやら日が暮れて
スズムシが一昨日から鳴いている。
モーツァルトが好きな耳の はるか遠い
遠い波打ち際で。

あれはたしか 五歳か六歳のころだったか
そのあと十年もたったころだったか
記憶はこんがらがって
へたった染みだらけのYシャツのように持ち主をからかう。

昔を思い出そうとしているのさ。
それが必要なときがある。
思い出すことが必要なんだ。
そこへ戻ろうとしているのだから。

戻れはしないから戻りたいのだ。
その淡い あわい苦しみをこらえている。
歯痛にたえているときみたいに。
さあ 顔を洗ってシャツを着がえ

さっぱりした気分で
さて今日も草刈りに精を出そう。
思い出したいことはない。
思い出したいことなんて

なーんにもありはしないのだから。

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