二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

ベッドの上の時間(ポエムNO.2-29)

2014年01月12日 | 俳句・短歌・詩集
西の窓から射し込んだ光が
部屋の壁の奥に不思議なシルエットを描きだす。
きみはベッドに寝ころがって
それを見ている。
老いさらばえ くたびれ果てた10年後のきみ。
隣りにはだれもいない。
寝室はひっそりかんと静まり返ったまま。

払ってもはらってもふるい落とすことができない
苦しみや悲しみは
きみを疲れさせはしたが
必ずしも絶望に陥れはしなかったな。
いまだって なにか不吉なものが
紙ヒコーキのように屋外から飛来し
きみの周辺をくるくる回っている。

ちゃんと目を覚ませ。
起きて動きだすのだ。
五大に響きあり・・・というではないか。
その響きをたよりに歩いていこう。
杣道をたどる巡礼の装束をこころに纏って。
ああ いってしまうのだなあんたも あんたも。

西の窓から射し込んだ光が
部屋の壁の奥に不思議なシルエットを描きだす。
きみはベッドに寝ころがって
それを見ている。
巡礼の白装束が遠ざかる。
遠ざかる。
記憶の背後にそそり立つ壁の向こうへ。

そこにはかつて妻だった人もいる。
思い出とはそんなものだろう。
壁の一角に映しだされた影絵のようにはかなく
豚のように何時間も寝ころんでいるきみを悩ます。
だって 木の実を齧るリスのように
思い出を齧りかじり生きるわけにはいかないから。
寝返りをうって その壁に背を向けたとしても。

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