虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

『きらめき算数脳 入学準備~1年生』 と 『キング オブ トーキョー』

2017-08-14 17:44:19 | 算数

小1のAくんとBくんのレッスンで。

 

算数の時間に、『きらめき算数脳 入学準備~1年生』の問題をブロックで解きました。

画用紙をブロックのサイズに切って解答用の枠を作ると、問題を作りやすいです。

プリントでする前にブロック等で手を動かしながら解いていると、

考え方のコツが身についてくるし、頭脳パズルを解くのが大好きになってきます。

AくんもBくんも、だんだん夢中になって、「もっと難しいのが解きたい!」

「自分ひとりで解きたい!」「もう一問だけ解かせて!」と大騒ぎでした。

 

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問題 

あか、あお、きいろの3つのいろをならべます。

どのれつを みても おなじ いろが

ならばないように します。

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<問題>

 

<答え>

 

 

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問題

あか、あお、きいろ、みどりの4つのいろをならべます。

どのれつを みても おなじ いろが

ならばないように します。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<問題>

 

<答え>

 

 

次はレベル3の問題です。

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6このビーだまをならべています。

よこに1れつならぶと あめを1こ もらえます。

たてに1れつならぶと あめを2こ もらえます。

ななめに 1れつ ならぶと、あめを 3こ もらえます。

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というルールでいろいろなパズル問題を解いています。


この問題、大人もじっくり考えてみないとわからない面白いものです。

よかったら次の2問にチャレンジしてみてくださいね。

(ヒント、ななめがそろうと3こあめをもらうことになってしまうので気をつけて!)

 

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問題

あめを2こもらったとすると、のこりのビーだま3こは

どこにおいたのでしょう?

 

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 問題

もらったあめが7こだとすると、

のこりのビーだま5こはどこにおくといいでしょう?

 

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今、教室で一番流行っている『キング・オブ・トーキョー』という

ゲームをしています。遊びやすくてとても面白いゲームです。

 

 

 

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AくんもBくんもあんまりパズルに夢中だったので、

帰り際にお金を使ってパズルを作る方法を伝授しました。

 

折り紙を折ってマス目を作ります。

いろいろなコインを用意します。

お金を4マスか9マスのどちらかに並べて(写真は9マスの場合)

たてやよこの1れつのお金の額を計算して書き込みます。

お金をいくつかはずして折り紙の外に置いたらパズルのできあがり


本当のやる気(内発的動機づけ)に火をつける 1

2017-08-12 15:19:06 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

 教室では、子供の内発的な動機づけに火がつくように、常に環境に気を配っています。

内発的動機づけとは、好奇心や関心など自分自身の内からなる動機づけです。

効果は長期的で創造的な領域に関して効果を発揮しやすいです。

一方、外発的動機づけとは、外からの報酬からなる動機づけです。効果は短期的ですが、

強い関心や好奇心がない領域に関しても有効に働きます。

 

Deci と RyAn自己決定理論によると、

本当のやる気(内発的動機づけ)は、次の3つがもとになっていると指摘されています。

 


<1> 自分でやりたい。

自分で選んで、行動したいという欲求

自律性(自分で考え、選択し、行動することです)

自己決定感(人にやらされるのでなく、自発的にやりたい)

 

<2> 自分にもできる 

有能感 自己効力感(自尊心とは異なります)

自分に目標を達成する能力を得たいという欲求 がんばれが環境が変わるという思い

 

<3>関係性

他者と交流し、他者から重用され、受け入れられているという思い。

他者と結びついていたいという欲求


内発的な動機づけのために気を配っているといっても、こればかりは、

それぞれの子の心次第、個性やその子のタイミングによりますから、

できるだけそうした状態が起こりやすくなるよう工夫しているという程度です。

でも、そうしたことを意識して環境を作ることで、

最初に期待した以上に、やる気が子供たちの間で飛び火することが

たびたびあります。

 

内発的な動機が生じるには、その領域への子供自身の興味や関心

必要です。

子供の興味や関心に火がつく瞬間というのは、

大人からすると物足りなく感じたり、遠回りに見えたり、カオスに思えたりする

場合がほとんどです。最初は小さなこと過ぎて、何が子供を夢中にさせているのが

原因がわからない方もよくいます。

 

今年のユースホステルのレッスンでは、こんな時に子供の意欲が高まりました。

 

<1> 足りない。なくなりそう。ほんのちょっとした不安感。

もしかして自分の分がないかもしれない……とちょっとした欠乏感や

危機感を感じたとたん、子供が急にその対象に魅力を感じて、

やりたがることはしょっちゅうあります。

「べつに~めんどくさい」と毒づいていた子も、

自分の分がないかもしれないとなると、必死になって飛びつきます。

また、子供の数に対して、物が少なめで、

「やりたい!やりたい!」と声をあげないと

自分の番が回ってこないかもしれないような状態を一度でも経ると、

次から真剣に取り組みだします。

今回のユースで、ベイブレードとタイマーを持って行って

ベイブレードの回転持続時間を計算で求める練習をしました。

ベイブレードにチャレンジしたい子たちは、幼稚園の子も

積極的に時間の計算にできるところまでチャレンジしようとしていました。

そうするうちに、最初はベイブレードを上手に回すことへの興味から

出発していましたが、時間の計算をマスターすることに強い関心を持った子も

何人かいました。

 

<2> 子供同士の盛り上がり

子供同士の関わりが、いつも励ましあい、認め合える温かいものになるよう

気遣っていると、友達と和気あいあいと取り組む楽しさや

友達と協力しあってチャレンジする面白さで、算数の学習も大いに盛り上がっていました。

 

 ゲームの作り方や遊び方学び方は、虹色算数オンライン教材

くわしく紹介しています。

 

<3> 自分で作る


<4> 感動 美しさ

五感を通じて、感動を味わったり不思議を感じたりする時も、 

好奇心や関心が高まります。

下の写真は光で遊んでいるところです。

部屋中に輪ゴムをはりめぐらせて光遊びをすると、 まるで蜘蛛の巣の上で

遊んでいるような錯覚に陥りました。

幻想的な美しさに、その場に集まった子供たちはうっとりしていました。

 

 

<5> 自分の好きなこと、得意なことに没頭する

自分が好きなことに全力投球すると、自分の能力に対する自信がみなぎってきます。

子供が自分の有能感を感じている時に、ちょうどいい課題を与えると、

それまではちょっとしり込みしていたことにも取り掛かる

ようになる子が多いです。

 

 上は「くるくる回転する棒」と「回転させると光る」しくみ。

作った子たちは、お互いに意気投合していました。

 


子供のきらきらする輝き

2017-08-08 11:20:00 | 日々思うこと 雑感

自分の気持ちを簡単に捨てられてしまう 7

自分の気持ちを簡単に捨てられてしまう 8

の記事に、こんなコメントをいただきました。

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 先日はお世話になり、ありがとうございました。

下の子が生まれてから、すぐに夢中になって飛び回って遊ぶ息子に、

下の子もいるし、危ない、もうちょっとゆっくり、

と動きを制止することが多くなったように思います。

赤ちゃん返りや甘えも長く続きました。暴力的な態度や口調も現れ、

だんだん私と息子との関係がこじれているようで、

きっと、今のやり方じゃ良くないんだろうな、他の方法があるんだろうな、と感じていました。


ユースでの体験が、息子の心に深く届くものがあったのでしょう。

帰り道、そして次の日、二日後…とても落ち着いた姿が見られ、

こんなにも変わるのかと驚きました。

私達、親の方も、刺激を受けて変わったところがあるかもしれません。

帰り道、息子が、ずっと思うところがあったであろう過去の体験を、

自分の中で消化して乗り越えようとする発言をしたり、

息子の中からキラキラした思いが溢れ出るようで、

心に寄り添う体験による可能性を感じずにはいられませんでした。

2週間経ち、すっかり日常生活に戻りましたが、

あのキラキラにまた出会えるように、温かく見守っていきたいものです。

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Aくんが、ずっと思うところがあったであろう過去の体験を、

自分の中で消化して乗り越えようとする発言をしたり、

キラキラした思いが溢れ出るように見えたりしたのは、

周囲のみなが、Aくんの内面に、自分を律していく

ひとりの人の存在を感じたからからだと思います。

「Aくんってすてきな子なんだな、魅力的な子なんだな、

頭の中でいろいろなことも思い描いていて、さぁ、やってやるぞ、と自分から

行動に移す子なんだな、写真を撮ったり、みんなの前でしゃべったりする時も、

自分の気持ちをいっぱい注ぎ込んで、まわりのみんなとつながっていくんだな」という

ことに、周囲の大人も子供も気づいたから、Aくん自身も自分の中のきらきらしたものを

見つけて、取り出すことができるようになったのだと思います。


下の写真は別の日のユースホステルでのひとこま。

男の子たちの部屋中に輪ゴムで作ったひもが張り巡らされていました。

部屋を暗くして、懐中電灯だけで、輪ゴムのひもの間すり抜けていくアトラクションを

作った子がいるのです。

わたしも挑戦させてもらいましたが、遊園地のアトラクション並みの面白さ。

ドキドキハラハラしながらカーテンのところまで行って、

カーテンにタッチして戻ってきました。

 

下の写真は、前年のユースで、

モーターを使って「(大好きな)お兄ちゃんの周りにゴミを散らかすマシーン」

を作っていたGちゃんのおみくじ。

今年も、いたずら心満載の作品を作ってくれました。

 

おみくじを引くと、パッと見ると、かわいいマークが描いてあるだけなのですが、

秘密ペンの光を当てると……。

「〇んこを……ぞ」「お〇っこを……ぞ」とあまりありがたくないお告げが

浮かび上がってきました。

 


自分でやり遂げる達成感

2017-08-06 19:17:46 | こんなこと、やってみたい!

先日、ネットでピース小堀というメンタルコーチをしている方の

子どもの可能性を無限大にするためのチェック項目20選!

という記事を読みました。

最初は何となく読んでいたのですが、チェック項目を読み進むうちに、

「今、良かれと信じて、ここで書かれていることの反対方向に……

つまり子どもの可能性を限定する方向に、子育てしている人が増えているな」

「うちの教室で、子供が周囲の予想を超えて伸びている子の親御さんは

みんなこのチェック項目の通りに子育てしているな」など

いろいろな思いが湧いてきました。


特に 2の「子どもの話を人としての興味を持ってきく」と、

4の「話を聞いたら、人として感じたことを伝える」

5の「言いたいけど うまく伝えられないことに対して、理解に努める」

9の「子どもが壁にぶつかったら一緒に考える習慣を作る」

10の「親としての心配に負けず、子供を信じる」

11の「必要以上の余計な手出しはせず、子どもに任せる」

16の「親の方こそ、子どもから教わる意識を持つ」

17の「叱るのではなく、親自身の価値観を伝える」

18の「プライドに負けないで、正直に感情を表現する」

20の「可能性無限大に生きている背中を見せる」

は、教室で親御さんたちといつも共有していることで、今回のユースでも

親の勉強会の主要なテーマだったので、より強く胸に響きました。


11の「必要以上の余計な手出しはせず、子どもに任せる」

 についての解説に、

「自分でやり遂げることができた達成感を一度でも味わった子どもは、

その後の感覚が変わってきます。」と書いてありました。

 

この、言葉を実感する出来事が、今回のユースホステルのレッスンでありました。

 

 ユースホステルに泊まる日、1年生のAちゃんがおみくじを作ってきてくれました。

「さすがにおみくじを作るのも4回目だからか、今年はどのような形に作るかから

仕上げまで、ほとんどひとりでやっていました。ひとつひとつどのようにするのか

よく考えていて、おみくじといっしょに渡す予定だったキャンディーを入れた袋が

大きすぎるのではないかとたずねると、おみくじを見た後の収納袋と

して使えるようにキャンディーを入れた袋を大きめにした、と答えたそうです。

 

Aちゃんは、ほんとうに細かい部分まで配慮して準備していたようでした。

Aちゃんがおみくじ作りをしたきっかけは、数年前のユースで年上のお姉ちゃんが

紙コップの中に手書きのおみくじをいれて配っているのを目にしたからです。

 

その次のレッスンの前に、Aちゃんは急にそれを思い出して作りたがったのです。

初めてのおみくじ作りは、ちょっと不格好でかなりお母さんに手助けしてもらった作品でした。

はりきって作った割に、いざみんなの前に出て配る段になると、もじもじして、

お母さんの影に隠れていました。

Aちゃんは、毎年、ユースに参加する度に、参加する子全員のために、

裏がおみくじになっている作品を持ってきてくれました。

どのサイズのどんな絵柄の紙を選び、どんなデザインにするのか、

その都度、全身全霊を注ぎ込んで作品つくりをし、

お菓子の入った袋をたくさん用意してくれていました。

当てものくじ年もありました。

 

今年のおみくじは、美しい三角錐の作品の中に

半透明の小ぶりなビー玉を入れたものです

 

 

 

三角錐に折った紙の裏は下の写真のような手書きのおみくじになっています。

ひとつひとつ心に響くメッセージが書かれています。

 ちなみに、わたしが引かせてもらったおみくじは、

大小吉

「あなたは、いつも たのしくわらってたら、

すごくいいことがおきるとおもいます。」

とありました。

 

 自分でやりたいことを見つけ、計画し、根気よく作業して、

場にあたらしい価値を生み出すAちゃん。

昨年から、自発的に熱心に学ぶ姿勢が身についてきました。

頼もしい成長ぶりをうれしく感じました。


子供のネガティブな体験に即座に評価を下さないということ 4

2017-08-06 10:24:20 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

話は変わって、別の日の出来事。

ユースホステルに泊まった日、ちょっとした事件が起きました。

 

小学3年生のEくんが朝から「パジャマがない」と騒いでいました。

Eくんのお母さんがベッドの脇やカバンの中を手際よく調べて回りながら、

「ちゃんと探しなさい」と注意し、

「カバンの中も戸棚もみんな調べたんだよ」とEくんは困り切った様子で

いささかあきらめ気味に周囲をかき回していました。

どうせもう見たから、もう一度見たってないのに……と思いながら、

うるさく言われるから探しているポーズを取っているという感じです。

 

人気者のEくんのこと。他の部屋の子らもぞろぞろ集まってきました。

Eくんがすっかり意気消沈していたので、他の子らの協力を仰ぐことにしました。

「事件!事件!警察や探偵になりたい子は集まって!

隊長も呼んできて!」と声をかけると、ちょうどその時、

一番年長で他の子から隊長と呼ばれているGくんが、

どんな楽しいことが起こるのかとワクワクした表情で部屋に入ってきました。

「えっ!事件?警察の仕事?了解です。ハッ、イエッサ!」と

敬礼のポーズを取りました。

「落ち着いて、パジャマがなくなった時のことをよく思い出してみて。

そういえば、お風呂のところに忘れ物置き場があって、

衣服やタオルが置いてあったわよ。」というと、

Eくんが、「朝まで来ていたパジャマなんだ。

だからお風呂のわけないよ」と言いました。

確かにお風呂に入ったのは昨晩ですから、今朝まで着ていたパジャマを

そんなところに忘れるわけがありません。

そのやり取りを聞いていた隊長は、「うーん」と考えてから、

「さぁ、まず、みんなでお風呂の忘れ物置き場に行ってみよう」と言いました。

「ちがうってば。あるわけないよ。だって、さっきまで着ていたんだから」

「でも、まず行ってみよ!」と隊長。

とにかくあるかどうかより、警察っぽく、

上階の風呂場に調査に出かけたい様子です。

「まって、隊長。

もう一度、パジャマが消えた時のことをよく思い出して

調べてみよう。

この部屋にいた他の子は誰?

その子が間違って、自分のリュックにEくんのパジャマを入れてしまったかもしれないよ。

それから、シーツはもうシーツ置き場に出しに行ったの?

もしかしてシーツにパジャマをくるみこんで、

出してしまったかもしれない」というと、

警察や探偵になった子たちはめぼしいものを調べはじめました。

Eくんが出したという使ったシーツの置き場に行ってみると、

大量のシーツの山ができていました。

「さあ、片っ端から調べなくちゃ」と子供たちが

今にもシーツの山に飛びつきそうだったので、

「よく推理してよ。Eくんがシーツを出した時、

どのくらいまでシーツが入っていたの?」とたずねると、Eくんは、「ここ!」と

自分の胸くらいの位置を指さしました。

そこで、隊長を中心に怪しいシーツを開いてみると、

Eくんのパジャマがシーツにぐるぐる巻きにされて

いました。

「やった-!事件解決!」と子どもたちは大喜びでした。

 

物をなくすというネガティブな体験も、関わり方によっては

思い出に残る楽しい出来事に変わるものです。

うれしそうにはしゃぐ男の子たちの声を聞いて、

女の子たちが集まった時にはすでに事件が解決していていました。

ちょっとつまらない女の子たち。

「あっちが警察なら、わたしたちは大泥棒になろう」ということに

なりました。

紫外線を当てると光る「秘密ペン」を使って

大泥棒の秘密組織の仲間かどうかを確認できるようにしました。

 

部屋に宝を隠して寝たふりをする男の子たち。

女の子がなかなか宝を見つけられないと、寝言のふりをして

ヒントをくれていました。

 

 

 

 

 


子供のネガティブな体験に即座に評価を下さないということ 3

2017-08-05 16:22:38 | 日々思うこと 雑感

周囲を困らせたり心配させたりする行動が増える理由は、

子供がそれまでとは異なるより高度なレベルの課題に取り組みだした

ことにある場合はよくあります。

新しくて難しい課題に取り組んでいると、思うようにいかないことばかりで、

すぐにいっぱいいっぱいになってしまいます。

Aちゃんの例でいうと、こんな感じです。

体でこなしていたことは、やろうと思ったことをやり遂げたらすんだけれど、

説得したい、思ったことを言いたいという気持ちは、

相手が取り合ってくれなければ、不完全燃焼を起こすのです。

といっても、幼い子扱いされて、

「これしてみる?」「こうしてあげようか?」とご機嫌を取られるだけだと、

余計にイライラします。

 

そんな時は、ちょうど等身大の活動が大切です。

「Aちゃん、先生の部屋に行って、次にみんなでしたらいいと

思うものを見つけてよ。Aちゃんが考えてくれる?」とお願いすると、

口をとがらせていたAちゃんの目が急にきらきら輝きだすのを感じました。

真剣な顔でこっくりします。

Bちゃんに声をかけると、「いっしょに行く」と部屋の靴置き場まで出てきました。

サンダルを履くBちゃん。すると、BちゃんのサンダルとAちゃんの

サンダルは色ちがいではあるけれど、形が似ていることに気づきました。

「いっしょだね。サンダルだね」そう言いながら、お互いの足先を差し出して、

サンダルを見比べるうちに、ふたりの表情はみるみる明るくなりました。

すっかり有頂天になったふたりは、世界中にあるどんなものでも

自分たちで発見できるような勢いです。

すると、小学生のCちゃんが、

「わたしもいっしょに道具を見に行く」と言いました。

「Cちゃんもいっしょにきてもいい?」とたずねると、

ふたりは「どうしようか?」と相談しあうように見つめあって、

ちょっと考えてから、「いいよ」と言いました。

大きなお姉ちゃんが自分たちの後ろをついてくるのがうれしい様子です。

わたしの部屋について、工作道具とゲームを選んだあとで、

Aちゃんはベッドのところで、ごろりと転がってみせました。

Bちゃんも真似してやってみました。

今度はサンダルを脱いで、畳のところにあがって、

一通り部屋を観察してまわりました。

Bちゃんも同様ににし、心から楽しそうに笑いました。

Cちゃんは、やれやれという顔をしながらも、

小さいふたりがちょっとした冒険をし終えるのを待っていて、

荷物を手に抱えて、「まだ持てるから、もっと手伝えるよ」と言いました。

 

ゆっくりと自分たちのペースで動いてみた後で、AちゃんもBちゃんも、

自分たちの考えを口にし始めました。

「もし、ベッドで寝ている時にごろごろってして、

木のところを飛び越えてしまったら、落ちるんじゃない?」

「このスリッパは、誰かがはいてきて、

置いていったんじゃない?だから、その人ははだしなんじゃない?」

「靴下かもしれないよ」

「この電気とこの電気はいっしょだね。この電気も。でもこれは違うよ。

懐中電灯だから」

そうやって、見たことを言葉にしてみて、フィードバックを得ながら、

論理的に考えたり、イメージを膨らませたり、疑問を抱いたり、

推測したりすることを集中的に試して、

学んでいく時期のようでした。

 

子供たちと過ごす時、わたしは 『多元的知能の世界』という著書に書かれている

「経験の結晶化」と呼ばれる現象が、起こりやすいように気をつけています。

「経験の結晶化」とは、

子どもがある領域に固執し、高い水準スキルを短期間に身につける状態

のことです。

それは、AちゃんとBちゃんが経験したような

日常の隙間にあるささやかな体験から

始まることが多いです。

日常の結晶化は、子供が新しい高いレベルの活動に着手する時

よく起こりますから、子供が困った行動を繰り返すように

見える時期に起こりやすいです。

 

<経験の結晶化について>の過去記事です。

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 『多元的知能の世界』によると、
知能は発達の時期によって異なってあらわれるので、

評価と育成は、幼児期と学校に通う年になった子では
まったく違う方法をとらなくてはならないそうです。

幼児期というのは、
自分の興味や能力に関する何かを発見することができる時期
なのだそうです。

才能に恵まれた子の場合、
その発見は自然な「経験の結晶化」を通して
自分の力でなされるそうです。

経験の結晶化?

聞いたことがない言葉ですよね。

ある領域における何かおもしろいことに
子どもが強い感情的反応をしるす場合

それは、その子がその領域に相性のよさを感じている…
ことをあらわしているそうです。
特に音楽と数学の領域では、こうした「経験の結晶化」が起こりやすいそうです。

大人が、材料、設備、他の人との出会いをうまく仕組んであげると、
「経験の結晶化」が起こって、
子供たちは自分自身に向いているものを見つける
チャンスも増えるようです。

私も虹色教室で、幼児が、
数学的な秩序の美しさや、論理的に考える思考や、
化学変化の面白さ、鉱物のひとつひとつちがう模様や
ブロックや積み木の作り出す世界に
強く感情を揺さぶられる姿をたくさん見ています。
そうした経験は、その子の潜在的な才能を刺激して
その子の内面に
その後の才能へつながる結晶を作るようです。

子どもの才能はさまざまで、MI理論の指摘する
基本的な7つと1つ(言語的知能 論理・数学的知能 空間的知能 音楽的知能 身体・運動的知能 人間関係的知能 内省的知能 博物的知能)
の中でも、周囲から評価されやすいものもあれば、
その能力になかなか気づいてもらえない知能もあります。

特に、人間関係的知能や内省的知能は軽視されやすいな…と感じています。
この2つの知能に関しては、またの機会にくわしく紹介しますね。

話をもどしますが、

子どもの個性に配慮して教育する

ということは「経験の結晶化」が起こるのをうながす意味でも大切です。
結晶化が起こると、子どもはその領域に固執し、高い水準スキルを短期間に身につけるのだそうです。

「経験の結晶化」すてきですね。

どの子にも自分の才能との良い出会いがあることを…
心から願っています。

 

 


子供のネガティブな体験に即座に評価を下さないということ 2

2017-08-04 19:15:08 | 日々思うこと 雑感

ふたりとも最初のうちは、居心地が悪そうに見えました。

年上の子らが工作に熱中したり、お化け屋敷ごっこをしたりして

遊ぶ中、その輪に溶け込めず、むくれたり、自分の殻に閉じこもったりしていました。

Aちゃんのお母さんによると、Aちゃんは活発で意欲的で社交的な子で、

これまで安心して見守ってきたのだけれど、

最近、むくれたり、無気力だったり、反抗的だったりする姿が

目立つので気になっていたそうです。

Bちゃんの場合、ひとりっ子で新しいことが苦手な子なので、

初めての場所、初めて会う人などに、戸惑っているようでした。

 

子供が、環境になじめないでいると、

「親の接し方のせいで子供がこんな態度を取るのか」

「発達上の問題か」

「環境や体験が子どもにあっていないのか」

と即座に悪いイメージと結びつけがちです。

 

でも、わたしはこういう場面で、

即座に、それがどういうものかという評価を下さず、

感情の痛みからくる決めつけをいったん保留にして、

ちょっとネガティブに見える体験に潜む新しい可能性に

目を向けるようにしています。

 

たとえば、Aちゃんの場合でしたら、

お家でぐずぐず言うことが多くなった原因が集団での過ごし方の

中にないのか、

ぐずぐず言いそうな場に親子でいれば、しっかり観察することができます。

また、気づくことがあれば、実際にその現場で、

Aちゃんが今抱えている課題を乗り越えるのを支援することができます。

 

教室でのAちゃんはこれまで発達が早かったこともあって、

自分でテキパキ行動する子でした。

「こうしたことがしたい」と思い、それに根気よく取り組み、

最後までやり遂げる姿がありました。

 

ユースホステルで、不機嫌そうに振舞うAちゃんを見ていると、

Aちゃんがこれまでのように体で覚えたことで行動するのではなく、

頭を使って何かしようとしているのがわかりました。

 

最初に大人が掲げた「ユースホステルの廊下は走ってはいけません」

「〇〇してはいけません」といったルールを覚えていて、

その通りに実行しようとしていると、目の前をお姉ちゃんとそのお友達たちが、

Aちゃんからするとルール違反をしてさっさと通り過ぎていきます。

「だめなんだよ。こうしなきゃいけないのに……」とつぶやくAちゃんは

ひとりぼっちで取り残されていました。

自分が正しい場合でも、数の多い側が涼しい顔でルール違反をしていると、

何だか自分が間違っているように思えるし、

臨機応変に判断する場面はまだよくわからないし、

自分以外の他の人の行動について、どうすればいいのか戸惑ってしまう……

そんな状態で、

Aちゃんの心の中には小さな嵐が巻き起こっているようでした。

また、子供たちが集う場で、Aちゃんが「こうしたい」「ああしよう」

と自分の意見やアイデアを出しかけると、

別のもっと面白そうなアイデアに大勢が流れて、

Aちゃんは顔を曇らせて、自分の意見を引っ込める場面も見かけました。

 

次回に続きます。


子供のネガティブな体験に即座に評価を下さないということ 1

2017-08-03 07:58:56 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

 

子供が心底うれしそうにするのは、

大人が至れり尽くせりに用意した素晴らしい体験ではなくて、

何かが足りないとか、ちょっとドキドキする事件に遭遇するとか、

それまでの自分のままじゃどうにもできない壁にぶつかるとかした時に、

知恵を絞るとか、アイデアを出し合うとか、一致団結するとかして、

それを乗り越えた時です。

 

子供は、本物だと思われる体験の中で、

「今という瞬間が、あなたの頭脳に助けを求めています!」

「あなたの身体能力や意志の力に期待しています」という

ミッションが与えられることが大好きです。

 

また、これまで避けてきた未知の危険地域に足を踏み入れて、

最初は不快で泣きたい気持ちだった子や、

無性にいらいらして小さな爆発を繰り返していた子が、

自分自身で未知の世界となじむためのささやかな糸口を見つけた瞬間、

未知の危険地域に感じられた場が一気になじみのある好奇心の対象になる

というのも、

子供が何よりも好む展開です。

 

それは、まだとても幼く見える子たちにしても同じです。

ユースホステルでのレッスンでこんなことがありました。

小学生の女の子たちがメインのレッスンに、幼いふたりの女の子たちも

混じっていました。

ひとりは小学生のお姉ちゃんがいるAちゃん、

もうひとりはひとりっ子でちょっぴり怖がり屋のBちゃんです。