虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

おもちゃで遊んでおしまい……とならないための子どもがおもちゃを通して成長する工夫

2016-09-20 17:02:24 | 虹色教室の教具 おもちゃ

※かなり前の記事なので、再アップしようとすると表示がおかしくなってしまいます。見苦しい記事でごめんなさい。

虹色教室にはさまざまな種類のたくさんのおもちゃがあります。

そのひとつひとつのおもちゃについて、「遊んだらそれでおしまい」「ちょっと遊んだら飽きちゃった」という結果で終わらないようにいろいろな工夫を凝らしています。

今回は、教室でどんな工夫を凝らしているのか書いていこうと思います。

 

<工夫 その1>

おもちゃで遊んで興味を持ったら、易しいシンプルな作り方でそのおもちゃを工作で作り、その原理がわかるようにしています。

「どんな形をしているのか。どんな仕組みで動いているのか。

そっくりに作るにはどうすればいいのか。どんな素材を使えばいいか。

うまくいかない時にはどうやって解決するのか」

おもちゃをよく観察して、身近にある材料で再現しています。

 

子どもが興味を持つものはさまざまです。先日もこんなことがありました。

工作タイムになっても、「警察署のドールハウスで遊びたい」と言っている子がいたので、「それなら警察署を作ってみる?」とたずねると、こっくりしました。

といっても、それほど大がかりなものを作るわけではなく、本人がこだわっていたスライドさせて開け閉めする牢屋のドア部分を再現すると満足していました。

今でこそ教室には多種多様のおもちゃがそろっていますが、わが子が幼い時はほとんどおもちゃらしいおもちゃは家に置いていませんでした。

その代わり、今と同じように、デパートのおもちゃ売り場で見かけたおもちゃが面白そうならそれを手作りし、(なんちゃって手作りで、適当な出来上がりです)

いっしょに遊園地等に出かけた後は、子どもたちが自ら遊んできたアトラクションを紙で再現して遊んでいました。

そのためおもちゃはなかったけれど、世界中のありとあらゆるボードゲームやおもちゃで遊んだなぁ~という懐かしい思い出があります。

おもちゃを選ぶ時、質の良いおもちゃか、安価なおもちゃか、たくさんある方がいいのか、少なくていいのか、迷うことと思います。

話の途中ですが、おもちゃ選びについて書いた過去記事を貼らせていただきます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<子どもに合わせたおもちゃ選び>

おもちゃを選ぶとき、木製などの質の高いものを与えなければならないか…というと必ずしもそうではないと思います。

子どものタイプによって、おもちゃの質より遊び方や自由度が大切で、100円グッズや紙があれば十分…という子もいるのです。

うちの子たちもそうでしたし、特に息子は、紙とえんぴつとハサミさえあれば満足している子でした。

教室の2~3歳の子にもこうした子はいて、おもちゃの扱いは少し雑なのですが、自分のこしらえた工作物は、宝物のように大切にしています。

目で見るものより、想像したことや見立てたこと、アイデアやルールに惹かれるようです。

前回紹介した質のよいおもちゃにじっくり取り組むことも、材質よりもその背後にある想像の世界に遊ぶこともどちらも優劣つけがたいことです。

どちらが良いかでなく、子どもの個性と気質と学び方によっておもちゃ選びのポイントはずいぶん変ってくると思います。

お金のかかり具合も、雲泥の差ですが…。その

感覚が優れていてクオリティーの高い材質やデザインのものに惹かれる子は、1歳、2歳の子でも、ヨーロッパ製の木でできた教具を
何度も何度もやりたがったりするのです。

その繰り返しのなかで、ほんの少しのペグの高低や、木製ビーズの形のちがいを見分けるようになります。

まるで指先に目がついているようで、そうした子の遊ぶ姿を眺めていると、いつも、強い感動を覚えます。

そうした子は、遊ぶごとに数学的な感性が高まっていくようです。遊びながら科学の法則を学び取っていきます。

(幼児は幼いほど材質の違いに敏感なので、まだ自分で選べないような小さな子に知育玩具を買い与えるときは、できればプラスチックではなく、材質もデザインも色の配色も優れたものを選ぶ方が良いように思ってます)

一方、おもちゃの材質ではなく、目に見えない価値に惹かれる子には、おもちゃを与えるより、道具やアイデア(博物館や人形劇、工作物の展示会などに連れて行ったり、

作品集やカタログなどをたくさん身近においておく)や自由な時間や手助けや褒め言葉、いっしょに遊びに付き合ってあげることなどが大切だと感じています。

お金がかからない分、労力や配慮はたくさん必要です

写真は小学生の頃、息子が手作りしていたゲーム類(モノポリーらしい)の一部です。ゲーム好きなので、人生ゲームとかモノポリーなどを気の遠くなるようなエネルギーを注ぎ込んで作っていました。

何百枚というカードの全てに、従来のゲームを参考にしながら…

自分で考えたさまざまなアイデアを盛り込んで書き込みをしているのです。

息子にとっては、おもちゃの質よりも自分の頭のなかのアイデアと作る過程に魅力があったのだと思います。

おもちゃの与え方について考えさせられるこんな話があります。

17回現代日本美術展大賞を最年少で受賞し、テレビ番組の『ウゴウゴルーガ』や音と光を奏でる楽器『TENORIーON』などを手がけ、絵本の『100かいだてのいえ』の作者でもある岩井俊男氏の子どもの頃のお話です。

あるとき、母親から「もうおもちゃは買いません」と言われたのだそうです。かわりに工作の道具や材料を与えられたことから
ものづくりに目覚めたのだそうです。

高価なおもちゃを買うもよし…。おもちゃを与えないもよし…。

どちらにしても想像力と創造性に満たされた家庭内の空気が大切なのでしょうね。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<工夫 その2>

ひとつのおもちゃでいろいろな遊び方を考えます。

たとえば、↓のリンクは「くもんのキューブ積み木」というおもちゃを使った遊び方の工夫です。

遊びだけでなく、小学校受験問題や小学生の算数の教具などにも活用しています。

★くもんのキューブつみき 虹色教室風遊び方!? 1

★くもんのキューブつみき 虹色教室風遊び方!? 2

★くもんのキューブつみき 虹色教室風遊び方!? 3

★くもんのキューブつみき 虹色教室風遊び方!? 4

このようにどんなおもちゃもいろいろな使い方をして遊んでいると、子どもの思考力や発想する力が高まってきます。

また、「新しいおもちゃがほしい」と思った時に、お家にすでにあるおもちゃに少し手を加えたら、その遊びができることがよくあります。

例として、「豪華なドミノ」がほしかった場合、レンガ積み木とブロックを使って遊んだ時の様子と、「カナヤック」のゲームを、「生き残りゲーム」を使って遊んだ時の様子を紹介します。

 

ドミノは楽しく遊びながら、数に強くなったり、指先の巧緻性が高まったりするよいおもちゃです。
おうちにあるドミノをさまざまな仕掛けのある豪華な…??ドミノにする方法を紹介します。
 
デュプロで作る段差です。
台になるブロックを写真のように少しずつずらすことで、安定した台ができます。
小さいサイズのブロックだとだとさらに細かいしかけも作れると思います。
------------------------------------------------------

ハバ社のイヌイットの魚釣りをモチーフにした☆「カヤナック」とうゲームがあります。
以前、おもちゃコレクターの方から、教室にお借りしていたのですが、とても魅力的で子どもたちが大喜びで遊びました。
ただこのゲーム、つり竿が大きくて、先がとがっているので、つい夢中になって他の子のしているのを覗き込もうとしたり、つり竿を振り回したりすると危険なので、ヒヤヒヤ……。
それと、魚の代わりの金属の玉が、あまりに小さいので、遊んでいるうちに無くしやすいという難点もありました。
そこで、生き残りゲームの盤とジオマグの磁石を使って、このゲームを再現。
イヌイットの世界の素朴な美しさはほぼ皆無……ですが、子どもたちには大盛況でした。

100円ショップで売っている「ジオマグもどき」と、お家の空き箱でも楽しく遊べるので、おすすめです。
魚釣りの竿にジオマグの棒を使うと、かなり短い状態で遊べる上、長い竿として使っているときも、磁石でついているので、危なくありません。
幼い子の魚釣り遊びにぴったりだと思いました。
 
子どもは魚釣り遊びが大好きですが、おもちゃのつり竿は転んだり取り合うと危険なので、安易に渡せないですから。

また、釣ったとき、金属の玉が磁石に引っ付いてくるのを、子どもは喜んで数えます。
「落ちそうで、落ちない……」のって、ドキドキして面白いですよね。

生き残りゲームでカヤナック遊びをする場合、金属の玉を穴の中に落として、仕掛けておき、(くぼみがあるので、きちんとおさまります)自分の番のときに、レバーを動かして、魚を探しつつ魚釣りを楽しみます。
---------------------------------------------------------------------
 
<工夫 3>
 
まだその遊びをするのは難しい月齢の時には、ルールを「赤ちゃん向け」「幼児向け」に変えて、子どもが楽しめるレベルにしています。

★ブロックを買ったものの、ひっくり返して「おしまい~」です…

★ウルトラマンカードの遊び方♪

★「チケット トゥ ライド」 幼児も遊べる遊び方 1

★「チケット トゥ ライド」 幼児も遊べる遊び方 2

★「チケット トゥ ライド」 幼児も遊べる遊び方 3

★「チケット トゥ ライド」 幼児も遊べる遊び方 4

★「チケット トゥ ライド」 幼児も遊べる遊び方 5

★「チケット トゥ ライド」 幼児も遊べる遊び方 6


プログラミングロボット と 光る絵具

2016-09-19 20:37:17 | 通常レッスン

年長グループのレッスンで、大人の科学の付録のプログラミングロボットで遊びました。

紙の円盤シートに黒マジックでプログラミングします。

黒い色の塗り方で図形や英語の文字をかくこともできる優れものです。

 

実験で光る絵具を作りました。紙製の塔やビルに塗料をつけてから、懐中電灯で蓄光しています。

 

電気を消すとこの通り。

子どもたちの指や足に塗料がついていたので、動くと夜光虫が舞っているようでした。

 

数字のすごろくになっているポップアップ絵本でひき算の問題をしました。

たし算はできるけれど、「31-5」とか「20-3」

といった問題は、暗算だとまだ難しい様子。

数字のマス目をもどりながらひき算するうちに、意味がよのみこめたようでした。

 

最レベ1年生の最高レベルの問題を解きました。

最初は難しかったけれど、解いているうちに夢中になって、どの子も「ぼくにやらせて!」「ぼくに!」と進んで手を挙げてチャレンジしていました。

 


風船うさぎのモコちゃんカレンダーで大いに盛り上がりました ♪

2016-09-18 17:53:07 | 算数

算数レッスンのカレンダーの勉強。

風船うさぎのモコちゃんカレンダーを出してくると、毎回、予想以上の盛り上がり。

「もらっていい?持ってかえっていいの?」とたずねられるけど、残念ながら、教室での学習用に買ったものなのでプレゼントできません。

 

「先生、どうして買ったの?」と聞かれたので、「うさぎのモコちゃんのファンだから」と答えると、「あっ、ここにモコちゃんたちのこと書いてある」と言いながら、

モコちゃん、ムギちゃん、ミミちゃん、クロちゃん、けだま、ももちゃんのキャラクター情報が載っているシートをチェックしていました。

子どもたちの心のみならず、そこにいたお母さん方の心もぎゅーっとわしづかみにしたキャラクターの持ち主は、『けだま』ちゃんの

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

朝から晩まで寝てばかり。お目覚めの30秒は寝ぼけて動かない。

走り出すと早い。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

というエピソード。

算数のレッスン中なので、みんな数字が出てくる部分には敏感です。

「1日は24時間なのに、30秒だけ起きてるって!!」「えーえーっ、30秒?!!」

と、その話題だけで3分は持ちました。

 

ついでにちょっと頭の体操。

24時間を秒になおすとどうなるでしょう。

24×60×60=86400秒

 

『けだま』ちゃんが起きている時間の割合は、

30÷86400×100=0.03472222222……

なので、一日のうち、およそ0.03パーセントの時間、寝ぼけて起きているという計算になります。

運動会の練習であわただしく過ごしている子どもたちは、『けだま』ちゃんのマイペースな暮らしっぷりにかなり癒されたようです。

 

 風船うさぎのモコちゃんたちをもっと知りたい方はこちらへ

 

モコちゃんの飼い主さんにコメントをいただきました。

うさぎの手と足の爪の数についての貴重な情報を書いてくださっています。

------------------------------------------------

31日までの月を、私も覚えました。
皆さんは、小さな時に覚えられて良かったですね。
私はもうすぐ50歳です。
今ごろ覚えられました。

うさぎのモコちゃんは、手の爪は、5個ずつあります。
足の爪は、4個ずつなんですよ。
昔、センター問題に出たそうなので、ココ重要かもしれません。

ハムスターけだまは、いつも寝ています。
見事に、いつ見ても寝ている。
手を入れてもかみません。
えらい子でしょ。
また、見に来て下さい。

いつも、ありがとうございます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

31日の月、30日の月、28日(29日)の覚え方は、

風船うさぎモコちゃんのカレンダーが届きました♪

の記事で書いています。


今の時代は大人も子どもも生きるのが難しい?

2016-09-18 07:17:42 | 日々思うこと 雑感

ひと月ほど前に書いた

子どもとの間で生じる『力のゲームから抜けるには』 1

子どもとの間で生じる『力のゲームから抜けるには』 2 

子どもとの間で生じる『力のゲームから抜けるには』 3

子どもとの間で生じる『力のゲームから抜けるには』 4

子どもとの間で生じる『力のゲームから抜けるには』 5

の記事に、こんなコメントをいただいていました。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「正解がないことから逃げない」という言葉が心にしみました。

>子育てにしても、鷲田先生の言葉を借りると、「あいまいなものにあいまいなまま正確に対応する」べきもの
>「正解などそもそも存在しないところで最善の方法で対処する、という思考法や洞察力」が求められる

これも、いままでの子育て経験を振り返ると本当にそうだなあと思います。

上の子が3才くらいまではかなり「嵐」な子育てだったのですが、いろいろな情報や他の子育て経験者のアドバイスなどが一応頭にありつつも、

ひとりとして同じ子どもがいない中で目の前にいる子どもはどういうタイプで、いまなにを求めているのか、そしてわたしはいまどう感じているのか、

そしていまこの瞬間なにをするべきなのか、正解はないままにその場その場を、なんとか乗り切ることの積み重ねでいまがある気がしています。

いまたまたまこどもが小康状態というか落ち着いているからって、簡単に「こういう場合はこうしたらいいのよ」なんて他の人にアドバイスできないし、これからどうなっていくかもさっぱりわかりません。

わかったつもりが危険なんですね。いままでの経験や本で得た知識にあてはめて、「これはこういうことか」と決めて安心してしまえば、その途端にいま目の前にいるこども、いまこの瞬間の自分の状態からは離れてしまう。

常に敏感にこどもや自分についてアンテナを働かせる、ということが大事だなとおもいました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「興味を広げる環境を整えてきたのに知的好奇心が薄い気がします」4

の記事には別の方からこんなコメントをいただいていました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

週末この記事が頭の中を回っていました。

以前からこの通りだとは思っていましたが、どうしても面倒になるのが嫌だと感じると、先回りして問題を解決したい衝動に駆られていました。

また子どもたちに問題がおこると、どうやって乗り越えたら良いのだろうと、試行錯誤すると同時に、困り果てたり、悲観したりすることもありました。(もちろんそのポジにふれるかネガにふれるかは、私の精神状態に左右されるのですが)

でもこの記事と、様変わりする算数セットの記事、また子どもたちとの週末を通して、なんともスマートに過ごせない日々の生活に対してポジティブに受け止めるための心構えみたいなものを体感的に再確認できました。

こどもたちのジレンマを歓迎する気持ちも、とても客観的なところからですが、でてきました。

また子ども発の言葉や気持ちの裏にあるものの奥の深さを感じ、しっかり受けとめ保障したいと感じました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

先日、『ひきこもる小さな哲学者たちへ』という本を読んでいて、ふと先のふたつのコメントを思い出し、お返事がてらに記事を書くことにしました。

『ひきこもる小さな哲学者たちへ』は臨床心理士の小柳晴生先生が、20年余りにわたる学生相談の仕事の現場をもとにして書かれた本ですが、

学生の親だけでなく、子どものいない方もまだ就学していない子を育てている方にも読んでいただきたい今を生きる指針となるような本です。

この本を読んでいてどうして先のコメントを思い出したのかといえば、どちらのコメント主さんの声も、小柳先生が現代の豊かな世界を生きる知恵や力として挙げておられる、4つの力を使って書いておられるな、と感じたからです。

小柳先生によると、今の時代の豊かさは、欠乏が生み出す苦しさは減じてくれたけれど、新たに「生きる難しさ」をもたらしたそうです。

豊かさは、欲しい物がすぐに手に入るという安逸さをイメージしがちですが、実際は「物と情報があふれるジャングル」であり、いつ対処できないほどの物や情報の濁流に襲われ、多様な選択肢に絡みとられて身動きできなくなるかわからない過酷な世界。

大人も子どももめまいを起こすほど早い変化に、やけを起こさずにつきあう方法をみつけるという課題に直面しているそうです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

欠乏の時代の生き方が皆でそろっての電車やバスでの団体旅行だったとすれば、豊かな時代の生き方は、個人や少人数での車での旅行といえます。

団体旅行は、自由に行動できない不便さはありますが(略)、旅行仲間とは、目標を共有し「同じ釜の飯を食う」一体感があります。(略)

一方、個人旅行では、どの道を行くか、どこに泊るか、いつ食べるか、旅行のすべてを自分で決めなければならないのです。

自分の裁量による部分が大きくなり、どう判断するかで結果が大きく異なるのです。

選択肢が多くなった分だけあいまいさが増え、その中を手探りで進まざるえなくなったのです。判断という作業は孤独を感じさせるものです。(略)

このような豊かな時代を生きるには、これまでとは違った知恵や力が必要になるのです。

その第一の力は「あいまいな状況を探索的に生きる力」です。

ある学生が、「ひたすら打ち込めることがない。それさえ見つかれば、そして成功する約束があれば取り組めるし、生活が充実するのに」と語ったことがあります。

この生き方は、決められた一本のレールをひた走る受験のような生活には有利かもしれませんが、豊かな時代にはレールそのものがないのです。困難や苦しみに耐えて進めば目標に到達するという、成功が約束された道がなくなったのです。

うまくいくかどうかわからないリスクを自分で背負い、道を作りながら進しかないし、そうした生き方を良しとする価値観を身につけることが求められるようになったのです。(略)

第二の力は「自分とつきあう力」です。

あいまいな状況を生きるには、「自分が何を望んでいるのか、どう感じているのか」が羅針盤やナビゲーターの働きをするのです。自分で楽しみを味わい、結果を自分で評価する力もいります。

このためには自分の心の声をうまく聴けることが必要になるのです。(略)

豊かな時代では、自分の声が聴こえないとどう進んでいいかわからず途方に暮れて立ちすくみ、時には遭難さえしかねないのです。

 

第三の力は、「自分と折りあう力」です。

豊かさは、たくさんの可能性を提示するので、何でもできるかのように思わされがちです。

しかし、人は体が一つしかなく、時間は一日二十四時間しかないために、現実に選びうるのはごく限られています。

苦労して選んだとしても必ずしもうまくいくともかぎりません。

苦労して選んだことがうまくいかないときに、やけを起こさないで対処する力が必要になるのです。(略)

不完全さに折りあいをつけて楽しみを味わう力がないと、「豊かさ」はあくまで欲望の充全な充足を求める無間地獄のような世界になるのです。

 

第四の力は、「内的な倫理観や価値観、センスに裏付けられた節制力」です。

豊かな時代は、子どもでも消費社会という「巨大なテレビショッピングの世界」に放り出されるのです。

そこはあらゆるものが魅力的にすり寄ってくる誘惑の地雷原です。

一瞬にして金を失わせる投機的な誘惑や健康を損ねる薬など、危険と隣り合わせの世界なのです。(略)

自分にとって何が大切かをはっきりさせ、それ以外はなるべくこだわらない、関わらないという生き方を確立していないと、誘惑に振り回され地雷を踏みかねないのです。(略)

(豊かな時代の知恵は)まだ誰も知らないために外から学べるものではなく、

自分の声を聴き自分の内側を見つけ培っていくしかありません。

そのために、大人も子どもも「ゆっくり自分と向き合う時間」を確保することが求められているのです。

『ひきこもる小さな哲学者たちへ』小柳晴生/生活人新書 P31より

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今の時代は大人も子どもも生きるのが難しい? 1

の記事が中途半端なままになっていることを気にかけながら、ずいぶん日が経ってしまいました。

前回の記事を読んで、「ん?」と腑に落ちない気持ちを抱いた方がいらっしゃるんじゃないかと思います。

 

誰もが経済的な面で何らかの不安感を抱え、ニュースでは貧困とか生活苦という言葉がクローズアップされることも多い昨今、「豊かな世界を生きる知恵」とか「豊かさが生きる難しさを生み出している」なんて、

バブル崩壊前の勘違いを引きずっているのでは……という印象を与えかねない地雷付きの話題なのかもしれません。

でも、今の時代、子どもを育てていくには、この話題から決して目を背けるわけにはいかない、というのがわたしの実感です。

臨床心理士の小柳晴生先生は、著書の中で、「歴史上はじめて、物と情報のあふれる『豊かな世界』に足を踏み入れた」わたしたちが、どのような生きづらさを抱えるようになったのか、書いておられます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「生きるために食べ、食べるために稼ぎ、稼ぐために働く」という疑いようもなく信じられた価値観が力を失い、「空腹に腹いっぱい食べた満足感」や「経済的にしばらくしのげる安心感」や

「長年欲しかったものを手に入れた喜び」といった生きる実感が味わいにくくなりました。

着るものがないから服を買うのではなく、タンスいっぱいにあるけれど流行や買い物を楽しむことが目的となり、

飢えを満たすために食べるのではなく、おいしさや人と楽しい時間を過ごすために食べるようになったのです。

※『大人が立ち止まらなければ(小柳晴生著/生活新書)』の一部を少し短くまとめて紹介しています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

生きる実感が味わいにくくなると、何が確かなものかわからないことからくる漠とした不安や絶え間ない物足りなさをもたらします。

そうした生きる実感が味わいにくい世界で生まれ、育っていく子どもたちは、どうなるのでしょう

豊かな世界というのは、たとえ経済的に自分が豊かでなかったとしても、絶え間ない誘惑や欲望を刺激する情報にさらされ続ける世界です。

つまり何かを手にしても、すぐに新たな欲望にかきたてられて不足感しか残らないし、何をしようと思っても、すでに誰かがやった後なのを思い知らされて、気持ちが萎えてしまうのです。

そこで、大人たちが、とにかく他の子より先に学習を進めておいて、他の子より上手にできることを増やしておきさえすれば、「明るい未来を手にすることができる」「幸せに生きていける」と思って子育てしても、

実際に努力の末、子どもが手にできるのは、不足感や自分に対する不満足感だけなのかもしれません。

生きる実感が希薄なまま、「この大学に入れさえすれば幸せに生きることができる」「この職に就くことさえできれば安穏と暮らしていける」と信じて目標に邁進しても、得た結果に満足し続けることができるのでしょうか。

それならどうすれば子どもに生きる実感が味あわせてあげることができるのかというと、まず、溢れる情報やハイスピードに変化していく世の中に、大人の心がいっぱいいっぱいになっていることに気づくこと、

現在の世界で、生きる実感を味わうことは本当に難しいんだと実感することじゃないかと思っています。

立ち止まること、ペースを落とすこと、自分の不安をごまかすために掲げた競争心や見栄を満たすための目標を手放してみないことには、始まらないのかもしれません。

 

 話は変わって、上の写真は、大阪城の巨石をどうやって船に積み込んだのか実験するための模型です。

この実験をする際、引き潮から満ち潮に変化していくところを再現するために、子どもたちが総出で、ペットボトルに水を溜めては注ぐを繰り返しています。

この実験を、さまざまな年齢の子らのグループでやりました。

2歳くらいの子(さすがにこの年齢の子は、グループの子ではなく妹、弟さんですが)から中学生になる子まで、どんなにやる気なさげにぐだぐだ言ってた子も、何をするのもめんどくさがるような子も、

本当にいきいきと大はしゃぎで水を汲みに行っては注ぐ作業に興じるものですから、わたしを含め見ている大人はみな、子どものパワーに圧倒されてしまいました。

水の重さ、汲みにいく手間、注ぐ時の水の迫力、みんながわいのわいのと夢中になってやっている感じ、「めちゃくちゃ」や「やんちゃ」がしたい気持ち、

「どうなるんだろう」という疑問、「もっともっと」と身体を使いきりたい感じ……と、どれも生きている実感を感じさせてくれるものなのでしょうか。

 

生きている実感は、こんなにも子どもをパワフルにするものなんだろうか、と、子どもの頃、団地の自転車置き場の屋根に上ったり、近くの池にザリガニ釣りに行ったりして、

自分の心や身体が望むことを思いっきりやりきった時の充足感が蘇ってきました。


映画館作り と 算数の問題

2016-09-17 21:24:35 | 算数

年中グループのレッスンの様子です。

 

子どもたちの間で定期的に熱中スイッチが入る「ハムスター並べ」。

同じ種類を集めて並べるうちに「映画館の座るところみたいにしたい」という話になりました。

映画のスクリーンやフィルムも作りました。

 

プラスチックのコップに絵を描いて、背後から懐中電灯で照らします。

「水を入れたら、どうなるかな?」と遊び心で実験したら、イラストのハムスターが湯船につかっているような映像が映り、子どもたちは、どれだけ面白いの?とあきれるほど、笑い転げていました。

 

ハムスターで遊んだついでに、算数のレッスンでも「ハムスター」に活躍してもらいました。

「3びきずつ長椅子に座らせます。長椅子2きゃく何匹座れるかな?」

 

Aちゃんのゆびの1本1本に、ハムスターが座っていくよ。広げた指全部に座ったら、ハムスターは何匹になるかな?

 

↑またの機会に紹介しますが、分数ゲームも盛り上がりました。

 

最近購入した『オセアノ号、海へ』のポップアップ絵本が人気で、子どもたちの間でポップアップ絵本作りが再燃しつつあるので、教室にあるしかけ絵本を集めて展示しています。

 

シンプルな幾何学模様が作りだす世界に惹かれる子、大きな木が枝を広げて開くイラストにわくわくする子、

『ドラゴン学』のような触れる図鑑風の仕掛け絵本に夢中な子など、子どものアンテナにひっかかるものはそれぞれちがいます。

 


手裏剣が当たると光る的の作り方

2016-09-16 13:44:34 | 工作 ワークショップ

自転車用の振動すると光るライト(2つで100円。100円ショップで売っています)を紹介します。

手裏剣用の的です。

 

<作り方>

ティッシュ箱に写真の用にライトを貼ります。

取り出し口のビニールに乗せる形で貼ると手裏剣が当たってもはずれません。

 

薄めの画用紙やコピー用紙などで箱を覆うとできあがり。

忍者の図鑑などを見て、絵を描くのもいいです。

 

折り紙や段ボールで手裏剣を作ります。

 

写真がよくありませんが、手裏剣が当たるとけっこう光ります。


基礎的な発見 <回転>

2016-09-16 09:39:59 | 子どもたちの発見

2歳のAくん。今、「かんらんしゃ」がブームです。

「かんらんしゃが作りたい」という話でした。

 

「回転させたい」と思ったとき、回転させたいものにストローをひっつけるというのは、子どもにもわかりやすく作りやすい技術です。

ストローの先を何度か切ってからタコ足に開いて回転させたいものに貼ったり、回転させたいものの中心に穴をあけて、ストローを通してからストローの先を切り開いて、貼り付けたりします。

どちらも作業時間1分ほど。

 

かんらんしゃなどは、逆さにした紙コップに貼ったストローより、太めのストローを写真のように(短く切って)テープで貼り、回転させたいものにつけたストローを通すとできあがり。

 

ストローのじゃばらは、回転の動きを、別方向に伝えるので、上の写真のように紙コップの底からストローを通し、コップの側面に穴をあけて、ストローを出すだけでも回転させることができます。

メリーゴーランドやコーヒーカップの動きが作れます。

 

逆さにしたところ。


小学2年生の算数学習につまずいたら……。

2016-09-16 07:39:27 | 算数

2ケタ~3ケタの数にあやふやなところがあると、小学2年生の算数の学習でつまずいてしまう子がいます。

たとえば上の写真のように、10円玉五枚と50円玉一枚を見て、100円だとわからないような時は、手で扱える教具(たとえばお金など)を使って、さまざまなパターンの言い方を練習してみるといいです。

「50円玉一枚と10円玉五枚で55円!」と間違えてしまう子と、作った手作り教具です。

60円なども6の指で表現してみることも理解を助けてくれます。

 

「70円と90円を足すといくら?」

指を使って、「50円と50円が合体して100円になる」ということを確認しながら学ぶと理解しやすいです。

 

お金について学ぶと、2ケタ~3ケタの数を学ぶのにとても役立ちます。

写真のように、お金の上に薄い紙を乗せて、クレヨンうやクーピーペンシルでこすって、手作りのお金を作るのも楽しいですよ。


 ベイブレードの研究

2016-09-14 08:35:36 | 理科 科学クラブ

今日は、小1、小2の子どもたちの科学クラブでした。

前々から、『ベイブレードの研究』がしたいと言ってたので、今日はそれぞれの子が自分のベイブレードも持ち寄って、回転する秘密や持続力、データー処理の仕方などを学びました。

ベイブレードの持続力勝負。

2回戦で、コマが回っている時間を競います。

タイマーを10分に合わせて、そこからスタート。

ストップした時点で、10分から残り時間を引いて、回転時間を求めます。

4人とも、分や秒の計算がよくできていました。

 

結果は折れ線グラフにもまとめます。勝ち負けが関わっているので、どの子も必死。

グラフの意味をよく理解していました。

写真は、迎えにきた親御さんたちに、グラフの意味と、計算の仕方を説明しているところです。

ただ「わかっている」だけでなく、「わかっている」ことを、他の人にも伝わる言葉で表現する訓練を大切にしています。

ベイブレードの研究の他、からくりハウス作り(空気の仕掛け、ゴムの仕掛け、音の伝わりの実験、回転を利用した仕掛け)などを、作りました。
化学実験(さまざまな化学反応をさせて、二酸化炭素を作る実験)をしました。

後からブロックのように接続しなおせる工作

2016-09-13 20:26:47 | 工作 ワークショップ

ミニカーが大好きな2歳のAくん。

「立体駐車場が作りたい」とのことでした。お母さんの話では、最近、地下にもぐってからUターンするという車の動きに夢中なのだとか。

そこで、2歳児さんにとってわかりやすくて、後から自分で手がくわえやすいような立体駐車場作りを手伝うことにしました。

今回は、かなり手伝ってあげていますが、本人が自分でやりたがった場合は自由に切ったり貼ったりさせてあげるようにします。

 

写真はティッシュ箱です。

どんな箱でもいいですが、牛乳パックや質のいい空き箱は幼い子の力でははさみが入れにくいです。

切りやすい素材の箱を使います。

 

出口は箱にある点線部分を指で押すだけで作れます。

 

箱の側面を切って、面ファスナーを貼ります。

 

マジックテープ(面ファスナー)とは、布同士を何度もはがしたりつけたりするときに使う素材です。

 

穴をあけたお菓子箱等にもう一方のマジックテープを貼っておくと、子どもがつけたりはずしたりして遊べます。

 

地下にもぐって、左折して横から出てくる駐車場ができました。

 

ティッシュ箱の上にもマジックテープを貼ると、車を入れて箱を傾けると、自動的に発射する装置になりました。

 

紙箱に一か所だけ穴をあけ、マジックテープを貼ると、2階からスロープでおりてくる部分ができました。

 

『シークエンス』の箱をあけたがったAくん。

ゲーム版の上にミニカーを乗せていました。なぜか、ぴったり。