虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

それぞれの子の個性と発達段階によって異なる敏感期の姿 1

2014-03-10 14:52:55 | 幼児教育の基本

 

「いちご狩りに行きたいな」の記事にコメントをくださった たくたくさんに、

記事中の★くんのお母さんがメッセージを寄せておられます。

たくたくさんは、よかったら記事のコメント欄に飛んで

読んでくださいね。

 

 

 

1歳7ヶ月の★ちゃん、☆ちゃん。2歳1ヶ月の●ちゃん、2歳6ヶ月の○くんの

レッスンの様子です。

 

ベビー向けのレッスンでは、親御さんに、子どもの遊び方や言葉から、

わが子が今、どんなことに敏感になっているのかに気づいてもらうお手伝いを

しています。

 

「敏感期」というのは、

生物学者のユーゴー・ド・フリースによって提唱された概念です。

それを教育に取り入れたモンテッソーリは、敏感期を、

「発達の初期のころ、ある能力を獲得するために、身の回りの特定の要素を捉える

感受性が特別に敏感になってくる一定期間」として捉えていました。

モンテッソーリは、成長とは、曖昧なものではなく、

周期的な、あるいは束の間生じて指針を与える本能によって、

細部に至るまで導かれる一個の作業だとおっしゃっています。

子どもの心や体の成長は、徐々に完成されるのではなく、

ある特定の時期に爆発的に完成されると考えていたのです。

 

また、敏感期には環境の習性や法則が、楽に喜びのうちに吸収され、

課題の達成が簡単になること、

その時期に得られた能力や性向は敏感期を過ぎたあとも定着し、次の段階の土台となると

同時に後の生活や人生に影響を及ぼすことも指摘しています。

 

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実は、わたしはモンテッソーリの洞察力を深く信頼している一方で、

現在、日本の幼稚園や家庭で行われているモンテッソーリ教育について、

複雑な思いを抱いてもいます。

というのも、モンテッソーリの園に通っている子の親御さんの話をうかがうと、

その子個人の敏感期について、正確に読みとろうとする努力をせずに、

ただ「教具の世界での系統学習」という捉えで、子どもと関わっている先生や親が

多いように思われるからです。

また、同じ敏感期にあっても、子どもの個性や好みによって

教具や素材の質を変えた方がいいケースへの対応があまりないようでもあります。

 

たとえば、折り紙を半分に折って、

たくさんの三角形を作る作業に熱心な子がいる一方で、

同じように、真剣に大人の作業を観察して、正方形の角と角を合わせて

三角形を折るにしても、タオルハンカチのような素材で

人形のお世話やままごとの中で繰り返したがる子もいるのです。

○くんは、物のサイズに敏感な時期のようで、

長さの異なる乗り物がきっちり収まるような車庫を作ってあげると、

喜んで乗り物を入れていました。

また、懸命にブロックで物を埋めてしまおうとする活動にも熱心でした。

乗り物好きの男の子は、デュプロブロックのような

色がはっきりしていて、表面がつるっとしていて固いもので作った

立方体や直方体を好むことがよくあります。

 

次回に続きます。

 


「いちご狩りに行きたいな」

2014-03-09 19:17:46 | 幼児教育の基本

ほかの子らと一緒にいるときは、「~したい」「~ほしい」といった要求語を

発することもほとんどなかった3歳6ヶ月の★ちゃん。

しばらくの間、個別のレッスンに切り替えて様子を見ることにしていました。

 

『14ひきのあさごはん』の絵本を読み聞かせている最中、

★ちゃんがねずみたちが野イチゴを摘んできて食卓に並べる様子を見ながら、

「ぼくもイチゴ取りたいなぁ」と言いました。

「★ちゃん、イチゴ狩りに行ったことあるの?」とたずねると、

「★ちゃんねぇ、ある」とのこと。

 

「じゃぁ、イチゴ狩りごっこして遊ぼうか?」

そう言って、水風船を膨らませる道具を出して、いっしょにイチゴ作りをしました。

 

イチゴに見立てた風船がなかなかはずせない時、★ちゃんは

自分ではさみを取ってきてゴムの部分を切っていました。

 

摘んだ風船のイチゴやバナナを入れるカゴを、紙袋を半分に切って作ってあげると、

★ちゃんが、「★ちゃん、先生にイチゴのかごを作ってあげる」と言いました。

 

折り紙をどんどん切って、テープで貼って、かごの形にはならなかったけど

大満足の様子。

 

 

★くんが自分から、「★ちゃん、先生にイチゴのかごを作ってあげる」と言ったのは、

絵本を読む前に、写真のカードゲームをした際、わたしと★くんで、

かわるがわるに問題を出す役をしたのが、とても面白かったようなのです。

従来のゲームの遊び方ではなく「赤い馬」「緑の犬」など

課題を言って取る形で、ゲームをしました。

 

 

★くんと交互に絵を描いて、絵本作りをしました。

物作りをする時、★くんはとてもたくさんおしゃべりします。

 


九九の意味を目で理解すること と わり算

2014-03-09 13:44:05 | 算数

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もうすぐ小学1年生になる★ちゃんと☆ちゃんのレッスンで、

九九を唱える手遊びをした後で、

九九の意味を目で理解するため、ブロックを使って学びました。

 

「2×2=4 2×3=6……」と九九を唱えながら、

ブロックを2ずつ置いていきます。

 

上の写真は5の段を学んでいるところです。

 

九九を唱えてブロックを置いていった後で、

「25個あるお菓子を5人で分けたら、いくつずつになるかな?」と

上の写真のブロックを指さしながらたずねると、

最初は、1個ずつ分けていこうとした★ちゃんが、「あっ、わかったわかった」と

ブロックの塊を切る真似をして、「5ずつでしょ」と言いました。

 

次に、「それなら、10個のお菓子を3人で分けるとしたらいくつずつで

いくつあまるでしょう?」と上の写真のブロックを見せてたずねると、

☆ちゃんがすかさず「3ずつで、1つあまる」と答えました。

 

「これは、わり算よ。10÷3=3あまり1」と説明すると、

★ちゃんも☆ちゃんも

自信満々にうなずいていました。


ハニカムペーパー と ハニカム構造

2014-03-07 18:11:44 | 理科 科学クラブ

教室のままごと用キッチンの下で、こんな紙きれを見つけた子たちがいました。

小学生の女の子たちが、置いていった模様。

「そういえば、ハニカムペーパーをわけてあげたら、何かやっていたな……」と

思いながら見ていると、

開いた紙から、謎の文章が現れました。

教室の『学校の怪談ゲーム』のゾンビの横にある階段状のお茶犬のお家の中に

キャンディーが隠されていました。

「確か、教室のミステリーを解いていた子らが、そんな相談をしていたな……」と

あいまいな記憶が……。

キャンディーを見つけた子らは大喜びでキャンディーを分けあっていました。

 

謎の手紙に使われた不思議な紙は、ハニカムペーパー といって

広げるとハニカム(蜂の巣)に似た構造があらわれるようになっているシートです。

 

教室の子の親御さんからこのシートをいただいた瞬間、

「テレビで見たことがある巨大な蜂の巣を作って、

それぞれの穴に幼虫や卵や出入りする蜂なんかを作って置いてみたらどうかな」

という考えが頭に浮かんだのですが、

後からネットでハニカムペーパーを使った作品を検索してみたら、

おしゃれでかわいらしいものばかり……

そんな変なアイデアは見あたりませんでした。

 

ハニカム構造については、『21世紀子ども百科』(小学館)のP72、73の

『ハチの巣は、なぜ六角形なの?』というテーマで取り上げられています。

シャボン玉の作るまく、水に浮かべた1円玉が作る六角形、キリンの網目模様、

イナゴの目、カメのこうら、トンボの羽のすじなどが、

がんじょうで隙がない六角形を積み上げたとうな構造なのです。

(ハニカムペーパーは四角形を集めた形になっています)

 

ハニカムペーパーを使って面白い形ができないか試しているわたしを見て、息子が

「それなら、強めの光を当てると、プリズムと別の方法で、色が作れるかもな」と

言いました。

さっそく、ライトを当ててみると、

まっ白いハニカムペーパーの影が薄い青と赤い筋になっていました。

(写真では、色が見えにくいですね)

 

「えっ、どうして?」

「たくさんのスリットを同じ間隔で並べたことになるからね。

光は色ごとに波長が違うから、こういう構造でも、プリズムで光を分けるのと

同じことが起こるんだと思うよ」とのこと。

 

ついでに、ちょっと面白いことを発見しました。

小さな懐中電灯を、広げたハニカムぺーパーの上で動かすと

写真のような光のダンスが見られるのです。

ドット絵が動いていくようでもあります。

「ルミナリエみたい」と言った子もいました。

 

 

 

 


科学館を見学する時に。見学の後で。

2014-03-06 17:14:29 | 通常レッスン

1歳の頃から教室に通ってくれていた★くんの家族が遠方に引っ越すことになったので、

お別れ会も兼ねて、レッスンの後でグループのみんなと下水道科学館に行ってきました。

 

下水道科学館の壁のクジラの骨の化石です。

 

 

 

自分でハンドルを回してスタート地点まで上らせたボールが滑ってくる様子を

眺めるのは爽快!

 

 

雨量の少ない時と多い時の違いを体験中。

科学館等にお出かけした後は、それぞれの展示物の原理を身近なもので再現したり、

工作に取り入れたりしています。

たとえば、写真のような雨量の異なる雨の体験をしたあとで、お家のお風呂で、
 
じょうろやペットボトルに穴をあけたものなどを使って「雨の強さの違いを作ってみる」
 
だけでも、楽しく子どもの考える力を伸ばす機会になります。
 
どうやったら激しい雨が降っている状態になるのか、簡単なようでなかなか難しいです。
 
雨の温度は季節によって違うの?といった新しい疑問も生まれるかもしれません。
 
 
 

写真は「右側、真ん中、左側」と書いてあるボタンです。

 子どもにこうしたボタンを押させとき、わたしは、「これを押してね」と

指示することはめったにありません。

「右のボタンを押すんだね。右手はこっちで、左手はこっちだから、

右のボタンってどっちかなぁ」と片手ずつ握ってみせながら、考える間を作ります。

といっても、子どもに質問して答えを出させようとするわけではありません。

ただ、大人が何かを判断したり考えたりするときの筋道や情報の取り入れ方が

子どもにも目で見てわかるようにするのです。

そうすると、子どもは自分の力でどうしたらいいのか判断するし、

ついでに、「この漢字は右って書いてあるんだな」と理解します。

 

また科学館で、それぞれの子がどのような思考の筋道をたどるのを好むのか

観察しています。

まず、触って試して、上手くいった結果から物事を理解していく子もいれば、

お友だちのする行動をていねいに観察して、

急所となる部分を見抜いてから動く子もいます。

とにかく自分ですべてをやりたがり、うまくいかなくなったときにも、

時間がかかっても問題の解決を自分でやりたい子もいます。

アイデアに響く子もいれば、美しさが響く子もいます。

物の仕組みを解明することが大好きな子もいます。

 


算数に親しむゲーム。子どもと一緒に考える楽しみ

2014-03-05 21:22:22 | 通常レッスン

もうすぐ年長さんになる子たちのレッスンの様子です。

★くん、☆くん、●くんの3人で『機関車トーマスゲーム』をしています。

1から100までの数字が書いてあるマス目を移動するゲームです。

印のある場所に止まったら、ハプニングカードを引いて、算数の問題を解いて、

答えの数だけ進むようになっています(算数以外の問題もあります)。

 

こうしたすごろく風のゲームをするときは、サイコロを2~3個使っています。

 

子どもたちのレベルに合わせて、サイコロの数を選んだり、

「足し算」か「かけ算」か選んだりできるようにしています。

難しい大きな数の計算もたくさん進めるので、喜んで解いています。

最初はサイコロの目を数えていた子も、素早く答えを出せるようになってきます。

(そのために、サイコロの目を数えているときも、目で見える教具や手で

計算を視覚化できるように手助けしています。

たとえば、6+6でしたら、5と1と5と1を足しているというイメージが目で理解

できるように努めています。)

 

また、ゲームの楽しさを保ちつつ、時々、次に進む目を推理させています。

(たとえば、47の位置にいる時にサイコロで6と4が出たら、次は57という具合に)

どの子も、工夫して上手に計算していました。

そんなふうに算数の力が自然につくように工夫はしていますが、子どもが

「もっとやりたい」という意欲を保てるようにすることを最も大事にもしています。

 

 

「石炭まみれになった」というコーナーで、本物の石炭を乗せています。

 

 

少し前、このグループのお母さん方に、子どもたちがずっと本と仲良しでいられる

ように定期的に本屋に通って、子どもに自分の好きな本を選ばせる(マンガや

おもちゃのような本は一部除く)と良い、といった話をしました。図鑑も、さまざまな

種類があるので、購入の際は子どもと一緒にいろいろ見比べて選ぶように勧めました。

 

それ以来、★くんは本屋に行くたびに、『ドラえもん ふしぎのサイエンス』という

科学の教材を選んでいるそうです。

「自分で選んだ本は何度も読んでいます。図鑑も、自分で決めたものは、

本当に隅から隅まで読んでいるのに驚きます」とおっしゃっていました。

今回のレッスンに、★くんはこの『ドラえもん ふしぎのサイエンス』の本を持っ

てきて、鳥や飛行機が飛ぶ仕組みや昔の飛行機について説明してくれました。

そこで、教室のレオナルドダヴィンチのスケッチをもとにした飛行機の模型を見せて

あげると、とても喜んでいました。

 

★くんが持ってきてくれた本に、トビウオやコウモリやトビイカや白鳥などの

飛ぶ姿が載っていたので、みんなで一緒に飛ぶ生き物を作りました。

作ってみると、それぞれの羽根にあたる部分の形と飛び方の関係に興味が湧きました。

 

 

●くんは、教室に着くなり「リモコンの車が作りたい」と言っていました。

が、あいにく電子工作の車類の買い置きがなかったので、

ロボットや動く車などで遊んだあとで、その動きを調べて、

教室にあるもので再現することにしました。

隙間を進む車。

大喜びで遊んでいる子どもたちに、

「どうして、床に直接置くと進まないのかな?」とたずねると、

☆くんが車をひっくり返して、「わかった、わかった。後ろのタイヤで進んでいるけど、

前のところにポコッと出てるのがあるから、それが引っかかっているんだよ」と

言いました。「それなら、教室にある動く車の前の部分にも出っぱりをつけたら、

隙間だけ進むようになるのかしら?見つけてきた子は、試していいわよ」と言うと、

3人は喜んで、ぜんまい式の車を探してきました。

 

隙間にストローを差し込み、テープでとめて、適当な長さで切ります。

ぜんまいを巻いてスタート。

ところが、うまく進みません。後輪が空回りしてしまうのです。

でも、とても楽しい実験でした。

 

迷路を抜けるロボットを手で誘導しようとしています。

 

ペットボトルで作った巨大な氷で実験もしました。

 

算数タイムには、『カタンの開拓者』というカードゲームをしたり、

トップクラス問題集1年生の文章題を小物を使って考えたりしました。

(次に年中さんになるグループの算数の問題については、近いうちに

別の記事で書かせていただきますね。)

 


自閉症の子との会話を継続させる工夫 5

2014-03-04 13:43:22 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

 

前回の記事で、こんなことを書きました。

「自閉症の子が何かを人にしてもらいたがって、しつこくせがむ期間を大事に

しています。それを通して、自閉症の子が人と一緒に会話したり遊んだりする

動機のようなものが生じてくるのを実感しています。」

まだ言葉がほとんど出ていない自閉症の子の場合、「しつこくせがむ」というより、

「ん、ん」と言いながら、何かをしてもらおうとして、

物をこちらに押し付けてくるとか、

一度ゲラゲラ笑ったことがあるシーンを再現してもらうと、何度も笑うといった

行為にあたります。

 

たとえば、自閉症の子との会話を継続させる工夫 3 でレッスンの様子を記事に

させてもらった●くんは、こんなシーンを何度もせがんでいました。

 

布の人形劇場のカーテンを開けながら、「はじまり、はじまり~」と言って、

人形を登場させ、「こんにちは」とあいさつさせて、

簡単なストーリーを演じようとしたところ、

●くんはうれしそうにはしゃいだ笑い声をあげたかと思うと、

人形劇場の扉もカーテンも閉めてしまいました。

 

 それから、自分で「はじまり、はじまり~」と言いながらカーテンを開け、

人形に舞台あいさつをさせました。

 

その後、●くんは、上の写真の通り、教室のあちこちから新しい人形を持ってきては、

扉を開いて、カーテンを開けて、「はじまり、はじまり~」と言ってから

人形にあいさつをさせる、という遊びを繰り返しました。

 

わたしは●くんのこの遊びに何度も付き合いながら、何度もやりたがるこの遊びの中で、

●くんがわたしと一緒にすることを楽しく感じるように努めました。

具体的に言うと、●くんが好むリズムで「はじまり、はじまり~」と演じたり、

●くんが介入したがる瞬間に、●くんが主導権を握って遊びをリードできるように

調節していたということです。

 

また、●くんが十分満足するまで繰り返すのを見守ってから、

適度に新しい遊びを提示しました。

 

写真は●くんが喜んでいた、あひるを一羽一羽、池の中に入れていく遊びです。

人形の舞台と同じ言葉のリズムで見せると、喜んで真似しはじめました。

●くんは、人形劇場で人(わたし)と関わることに成功したことから

自信を得たように見えました。

自閉症の子と遊んでいるとき、こういう場面はとてもよくあります。

とにかく遊びの中で、本人が「成功している」「自分は上手く関われた」という

実感を得ることを何より優先して接するようにしている(こちらの全ての注意力を、

自閉症の子自身の心地よさを保つことに向けるようにするのです)と、

それまではこちらの提示する遊びに見向きもしなかったような子が、次々と

こちらの模倣をして遊ぶようになる姿を、これまで何度も目にしています。

 

 


自閉症の子との会話を継続させる工夫 4

2014-03-03 14:17:32 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

ずいぶん遅くなったのですが、

自閉症の子との会話を継続させる工夫 1

自閉症の子との会話を継続させる工夫 2

自閉症の子との会話を継続させる工夫 3

の続きです。

 

自閉症の子の心に、「人と関わりたい」「会話をしたい」という意欲を育てるためには、

常に「何かをできるようにさせること」や「スローステップを作って、成長を促進させ

ていくこと」を念頭において接っしていると、うまくいかないように感じています。

まわりくどい言い方ですね。

つまり、成長という縦の線をイメージした関わりを

いったん脇においておく、ということです。

 

自閉症の子たちは、人への関心が芽生え始める時期、

自分が面白いと感じている反応を

以前にしたのとそっくり同じように返してもらいたがります。

何度も、何度も、繰り返し。

それは、こだわりが強化しただけのように見えるし、

成長から逆行しているように感じられるかもしれません。

 

これはわたしの体験からくる判断なのですが、

そんなふうに自閉症の子のこだわりが、人の反応に向かっているように見える時期に

どのように関わっていくかが、どれくらい関わるかが、

その後の対人能力や会話力に大きく影響していくように思っています。

 

自閉症の子と生活習慣 に

虹色教室の生徒の◆くんのお母さんから、こんなコメントをいただいていました。

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私も先生のブログ記事を参考に息子の癇癪対応で人形芝居を試みました。
それにより癇癪は確かに早く切り上げられることも多々あったのですが・・・母に人形芝居をやってもらうことがこだわり化してしまい、以降ワンパターン会話人形芝居をせがまれ続けることもう2年です。やらないと癇癪になったりします。そもそも癇癪回避のために始めた人形芝居で首を絞められようとは・・・そろそろ解放されたいという心境ですね。

ですが、人形芝居はおおむね良い方法だと思います。
親に直接指示されるより人形会話の方が確かに抵抗感少なく通じます。

また、自閉症スペクトラム専門で診ておられる医師の講演で得た情報では、「やって欲しいことを間接的に言ってみると意外と耳に入っている」とのこと。
本人に面と向かって言うのではなく、少し離れたところで第三者と会話中に「朝の着替えもうちょっと早くやってくれたら助かるんだけどね~」などと言ってみる、というやり方です。

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◆くんは自閉症スペクトラムの診断を受けている4歳後半の男の子です。

癇癪を起こさせないようにしたり、身支度をスムーズにさせたりするために

した人形芝居が、しつこくそれをせがまれることになったり、

人形芝居をしないと癇癪を起こすという困った行動につながって、

◆くんのお母さんはすっかりお疲れの様子です。

 

確かに、2年もしつこくせがまれたら、解放されたくもなりますよね。

 

でも、わたしは、身支度をする力や癇癪を抑える力とは

別の面で、この2年余りの間の◆くんの成長に驚いてもいるし、感動してもいるのです。

また、そうした◆くんの成長が、お母さんがうんざりしておられるような

「お母さん、(人形芝居を)やって!」とせがむことや、

わたしに対して、「バスのドアをしめて!バスのドアをしめて!」としつこく

頼むことの繰り返しの中で、育まれてきたとも思っているのです。

 

わたしは他の子とのレッスンでも、

自閉症の子が何かを人にしてもらいたがって、しつこくせがむ期間を大事にしています。

それを通して、自閉症の子が人といっしょに会話したり遊んだりする動機のようなものが

生じてくるのを実感しています。

こだわりに近い同じパターンの繰り返しとはいえ、人に向かってそれをするときは、

対人関係に必要な、態度や会話の微調節も上手になっていくのを観察しています。

 

◆くんの成長とは、人と関わる姿や会話する様子に

自閉症の子の特徴のようなものがほとんど見られなくなったことです。

最近の◆くんを見る限り、◆くんが自閉症スペクトラムの診断を受けている子だとは

誰も想像することもできないほど、人と関わることが上手になっていますし、

よく笑い、よくしゃべり、ごっこ遊びも好みます。

幼稚園でも先生によくなつき、お友だちとも遊べるようになっているとお聞きしています。

 

この2年ほどで、

「人と関わりたい」という意欲が高まってきたこと、

人との会話を楽しむ感性が身に着いたこと、

人と関わることへの自信が蓄えられていくことは、

それだけで、とてもすごいことだな、と感じています。

 

 

 


教室 ミステリー

2014-03-02 16:49:01 | 通常レッスン

もうすぐ2年生になる子たちのグループレッスンの様子です。

想像力豊かな★ちゃん、☆ちゃん。

「教室をミステリーの部屋にしたい」という話でした。

教室の中にいくつも謎解きスポットを作って、

次にレッスンに来る子たちに謎を解いてもらおうというアイデア。

 

★ちゃんが固めのスライムにマジックで文字を書くことを思いつきました。

が、苦労して文字を書いたにも関わらず、しばらくするとスライムが自然に変形する

ためか、文字が読めない状態になっていました。

 

 

そこで登場したオブラート作戦。

オブラートに油性マジックで文字を書き、スライムを覆いました。

 

 

オブラートはスライムの表面に合わせてみると、文字部分を残して

見えなくなりました。

 

スライムを入れた容器を下から写しています。

 

ところが、オブラートの文字も時間が経つと、かなり歪んでいました。

カタカナの「ゴ」は、「ブ」に見えました。

それでも後からレッスンに来た子たちは、解読しにくさにかえってはしゃぎながら、

「タマゴ」と読んでいました。

 

 

 ★ちゃんと☆ちゃんに、「先生、謎が難しすぎて解けそうにないときは、

耳元で、ヒントをささやいてね」と頼まれていたので、

謎解きする子たちが困り出すと、何度かヒントを出しました。

 

たまごの中には、わたしが出した算数問題が入っています。

 

 

答えの数がわかったら、大図解の図鑑の答えの数のページを開けると、

次の展開のヒントの言葉を見つけることになっています。

 

答えは、44なので、44ページ。

 

化石のページです。

 

教室に置いてある恐竜の化石のフィギアに次の指令を書いた

手紙が貼りつけてありました。

 

化石に貼りつけてある指令は、なぞなぞ3つと、

次の指令を受けるためのアイテムのイラスト。アイテムはカセットレコーダーです。

 

カセットレコーダーには、次のアイテムのヒントを吹きこんでいます。

またカセットレコーダーには、輪ゴムで方位磁石が付けられています。

 

レコーダーに吹き込まれた声は、「キタ、トースター」。

 

方位磁石で北の方向を見ると、トースターがあり、

暗号が書いてある紙が差しこまれています。

 

 

水に入れて、上からのぞきこむと、光の屈折の影響で、

「くろねこ 2」という文字と数字が見えてきます。

 

ぬいぐるみが入っている家の上には、「マグロ」の文字を持った

黒猫2ひきが鎮座しています。

 

 

そして、結末‥‥‥すべての謎が解けたと思うと、ちょっと拍子抜け!? 

二人とも、ここに来て疲れてきたのでしょうか?

 

口に金塊を詰め込まれたマグロが……。

 (このマグロ、ユーフォーキャッチャーで取った方にいただいて以来、

教室内で1位、2位を競っている人気のおもちゃです。

くださった方には失礼なのですが、アクセス解析で、「マグロ‥‥」の検索語で

ブログにたどり着いている方々が何名かいるのを知ってから、マグロのフィギアの

写真をアップする度に複雑な気持ちです‥‥。)

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算数タイムは、サピックスのぴぐまりおん(3、4年生)の問題をしました。

ふたりとも、しっかり解けていました。

 


おじいちゃん自慢 と おばさん自慢

2014-03-01 14:27:46 | 日々思うこと 雑感

いつも教室にお気に入りのおもちゃを持参して現れる★くん。

この日はガンダムのプラモデルを持ってきて、

「ねぇ、先生。リモコンで動かせるプラモデルがあるんだよ。知ってる?」と

たずねました。

「へぇ、プラモデルがロボットみたいに動くの?それはすごい。知らなかったわ。

でも、そういうプラモデルって、大人の人しか買えないくらい高いんじゃない?

何万円とか。」と言うと、

「そ、れ、は、ぼくの場合、ちがうかもよ。買えるかもな。たぶん。」と★くんが

もったいぶった口調で言いました。

「★くん、お年玉をたくさん貯めているの?

でも貯金は、自分勝手に使ったらだめでしょう?」と問うと、

「ぼくの~十歳のおじいちゃんは、国からもらうお金はパンとかおかずとかに使って、

カラオケのお金はぼくのおもちゃなんだ。」という答え。

 

「★くん、おじいちゃんは、

パンとかおかずを買う生活に必要なお金は国からもらうお金でまかなって、

それとは別にカラオケに行ったり、

★くんのおもちゃを買ったりするために使うお金を分けているのね。」

 

「ちがうよ。国からのお金はパンとかだけど、カラオケに行くんじゃなくて、

ぼくのおもちゃのためにカラオケに行っているんだ。」

 

話がこんがらがってきたので、もう少しくわしく聞いてみると、★くんのおじいちゃんは、

★くんにおもちゃを買ってあげられるような

自由になるお金が欲しいからとカラオケ店に働きに行っているという話でした。

 

「★くん、すごいおじいちゃんがいるんだね。

★くんのことがかわいくてかわいくてたまらないのね。

そういうのを、目に入れても痛くないって言うのよ。

それに元気で、働くことが好きなんだね。働いているから、健康を保てるのかもね。

それなら、★くんがこの間、持ってきていたウルトラマンの人形たちは、

そのおじいちゃんが買ってくれたの?

いろいろな珍しい種類のウルトラマンがあったでしょ。」と言うと、

★くんは、とても自慢そうにこんなことを言いました。

 

「それはおじいちゃんじゃないんだ。実は、ぼくにはウルトラマンが好きな

おばさんがいるんだよ。そのウルトラマンが好きなおばさんが、

ウルトラマンの人形を買ってくれるんだ。」

 

「おじさんじゃなくて、おばさんなの?」

 

「そうだよ。ウルトラマンが好きなおばさんだよ。」

 

「★くん、そんなすごいおばさんがいる子の話は聞いたことがないわ。

そりゃ、自慢でしょうね。ウルトラマンが好きなおばさんがいるなんて!」と言うと、

★くんは心から満足そうに、にっこり笑いました。

 

「★くん、ガンダムの絵、上手ね。しばらく先生に預けてくれる?

教室の壁に貼っておいてもいい?」

 

「絵は持って帰るよ。先生はさ、写真を撮っておいたら?

ほらっ、いつもブログに載せてるでしょ?みんなの絵とか。そうしたらいいんだよ。」