NHKスペシャルの <メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ 第1回 岐路に立つ"日の丸家電">
を見ました。
リストラを進めるにつれ、どんどん企業としての魅力を失っていくソニーの姿が
放映されて、当時の経営のトップに立っていた方々が「何が間違っていたのか」を語るシーンが
ありました。
ソニーがすばらしい製品を次々と世に送り出し、
全世界から脚光を浴びていた頃は、
社員には自由な時間もたっぷりあったそうです。
社長に反対されても自分の作りたいものを作り続ける社員がいて、
それを見守る人々に囲まれていたのだとか。
のびのびとしたフロー状態が生まれやすい雰囲気があったのですね。
また、暇がありますから、自由に他の部署に出入りして
そこで議論をし、そこから思わぬヒット商品が誕生したそうです。
ところが、ある時期からリストラが進みだし、
社内からはそうした自由闊達な雰囲気は消えていきました。
リストラが続くと、社員同士、関係がぎすぎすして、
他所の部署で議論なんてしている人を見つけると、
「ここで議論する許可は取ったのか?」」と問い詰めるなど
それぞれの社員がきちんと働いているのかが細かいところまで管理してチェックが入るようになっていき、
それは職場から創造的で独創的なアイデアが生れてくるようなチャンスを奪っていきました。
社内に時間や考えや行動の自由があった時期には、
それぞれの社員が任されている仕事以外に、自分の机の中に隠し玉を持っていて、
それぞれの社員の自分独自の隠し玉こそが、大ヒットのもととなっていたそうです。
それなのに自分の意志で動くと「許可は取ったのか?」と問い詰められるような
ぎすぎすした管理が強い職場の雰囲気の中で、
社員は注意されないように指示を待つことが増え、
社員同士の部署を超えた議論も減っていったため、
個性に彩られた魅力的なものが生れなくなったという話でした。
これって教育の場でも子育ての場でも言えるな、と感じました。
ちょうど数日前、目にした
『内田樹の研究室』の
人々が「立ち去る」職場について
のことが思い当たりました。
大阪府教委はが、来春採用の公立学校教員採用試験で、平均倍率が4倍で史上2番目
の低さだったことを受けての話題。
中学理科では倍率が2倍を切り、「水準に達する人材が確保できなかった」のだとか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雇用条件が全国平均よりはるか低いレベルにまで引き下げられ、
首長や議会や教委がきびしく教育活動を監視し、
保護者たちが教員にクレームをつけることそのものを制度化し、
産業界が要求する「グローバル人材」の効率的な育成をうるさく求められるような職場環境に進んで就職したがる若者がいるだろうか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と内田樹氏が問いかけの通り、そんなところに就職したがる若者がほとんど
いないから、今後、「水準に達していない人材」が大阪府の先生になっていくのでしょうか……?
成績こそが先生の全てじゃないと思うけど、
大阪府民として、何だかしっくりこない結果……。
理科が好きなわたしとしては、大阪の中学生たちに
科学の面白さをを伝授してもらえるような先生と出会ってもらいたいです。(なぜ中学理科の倍率が2倍?)
先生にしたって、賃金はカットされるは、監視されるは、クレームつけられるはして働いて、
子どもたちに全身全霊で大切なことを伝えていこう、子どもの中から魅力的なものを引き出そう、
いきいきとした自由闊達とした教室の雰囲気を作り出そうという気になれるのか、
疑問の残るところ。
もう、後は、かつてのソニーじゃないですが、
家庭でひとりひとりの親が、
わが子の机の中に自分の隠し玉をもっておけるような
自由や隙間のある子育てをしていくしかないようですね。