虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

子育ての迷いや悩みから抜け出すため の あれこれ(続きの続き)

2019-02-19 10:08:41 | 日々思うこと 雑感

先の記事で取り上げた「何度注意しても、学校の持ち物の管理がいい加減な

小学生の男の子」についてもう少し。

 

この男の子は、嫌なことは先延しするタイプで、

日々の宿題も「あとで、あとで」となかなか手をつけないものの、

さぼるわけではなく、成績は良い子です。

温和で明るい性格で、遊び友だちには不自由していません。

 

そう書くと、

「小学生の男の子なんて、几帳面な方がめずらしい。持ち物の管理のいい加減さ

くらいで深刻に悩むなんて親御さんの気にしすぎではないか?」と感じた方が

いらっしゃるかもしれません。

確かに、文面上の相談コーナーなら、「気にしすぎ、神経質すぎ、個性!個性!」

「お母さんはお子さんをもっと大らかに見守って!」と

軽い叱責に加えて、励ましのエールを送れば一件落着となるケースなのかも

しれません。

 

でも、どうなのでしょう?

長期間、悩みが続いているからには、

言語化して相談できる内容が本当に困っていることであるほうがまれで、

その水面下には、もやもやと言葉にすることも気づくのも難しい、

漠然とした『不安のもと』が横たわっているのではないでしょうか?

 

ユースホステルのレッスンで、この男の子とさまざまな活動をともにした時、

ところどころで、親御さんの『不安のもと』を垣間見た思いがしました。

また、ぼんやりながら『解決の糸口』をつかめた気もしました。

 

ユースホステル2日目の朝食後の学習タイムでの出来事。

Aくん、Bくん(この男の子)、Cくんの男の子3人が、

「勉強、いやだ~!」「勉強したくな~い!」「いやだ~!」とおふざけモードで

主張しながら部屋に入ってきました。

 

チェックアウト前で散らかしたくないこともあって、

「勉強、いやだ~!」の3トリオからヒントを得て、

会話主体の学習をすることにしました。

 一人ひとり「好きなこと」や「嫌いなこと」や「いつもよくする遊び」

「家でどんなことをして過ごしているか」「趣味は何か」「何でもいいから言いたい

こと」などを言い、それに対して当人とみんなで、

「どうして好き(嫌い)なのか」「どんなところが好き(嫌い)なのか」

「よくそれをする理由は何なのか」「その魅力はどこにあると思うか」

「最も嫌な部分はどこか」「それはどんな価値を生み出すと思うか」といった意見を

出し合うのです。

 

簡単に何をするのか説明したあとで、Aくん、Bくん、Cくんの3人に、

「3人は、勉強が嫌いなの?」とたずねました。

「まぁ、嫌いっていうか、あぁ、嫌い嫌い。もう夏休みの宿題をやったのに、勉強だから

嫌なんだよ」とAくん。「そうそう」とうなずくBくん、Cくん。

それぞれに話を聞くと、勉強そのものが嫌いなのではなくて、

何をどれくらいしたらいいかがあいまいで、遊んでいる時も、あとでしようと

先送りした勉強が待っていると思うと憂鬱な気分になるようです。

 

そうした話し合いの最中に、「勉強したくない、勉強は嫌」チームで、

「勉強のどんなところが嫌なのか」という理由を説明するはずだったBくんが、

「だったら、ぼく勉強嫌じゃなーい」と言い出しました。

 

「Bくん、勉強が嫌じゃないんじゃなくって、説明するのが嫌なんじゃないの?

じゃあ、理由を説明するのが嫌だチームに入って、

説明するののどんなところが嫌なのか、説明してよ」と冗談交じりに問うと、

身体をくねくねさせて苦笑いをしていました。

 

Bくんは、その後、ほかの子らが「わたしたちは、お化け屋敷を作って遊ぶのが好き」

「どうして好きかというと、ほかの人がびっくりしたりして、つまらなかった気分が

面白い気持ちに変わるから」とか、「趣味は、読書」「よく読む本は冒険もの」

「スリルがあって、ドキドキするところが好き」「冒険ものの本の魅力って何だと

思う?」「次にどうなるのかなって思うと面白い。ハリーポッターを読んだ時も、

1回目はどうなるんだろうってすごく面白かった。」

「じゃあ、2回目に読む時はどう?次にどうなるかなってドキドキする?」

「しなーい。でも、留守番とかしていて、暇な時に2回目読む」といった意見を交わして

いる間、どの意見に賛成するでも反対するでもなく、意見を求められることなく、

「そうそうそう!」と同調すればいい場面でだけ、笑いながらうなずいていました。

 

Bくんが、理由を問われそうになると自分の意見を変えること、

それも声高に大騒ぎして、主張していた意見と正反対の意見に流れる姿は、

これまでもたびたび目にしたことがありました。

 

また、ゲームで相手にズルをされるなど、

明らかに自分が不利な立場におかれていても、

騒ぎながらじゃれるように揉めることはあっても、

いざ、どんなことがあったのか、なぜ揉めているのか説明を求めると、

「あの子がこんなことしたんだよ」とか「ぼくは悪くない」と訴えることもなく、

いつも、「もう、いいや」「いい、いい、いい、負けでいい」とお茶を濁すのも

気になっていました。

 

ユースホステルでのレッスンでも、1日目の晩にこんなことがありました。

2段ベッドの取り合いでケンカしている子がいると聞いて、

男の子たちの部屋に向かうと、AくんとBくんが、下の段のベッドに寝転がって

押しあっていました。

揉めているというより、じゃれあって遊んでいるような雰囲気です。

とはいえ、Bくんにはかなり不満もあるようで、顔をゆがめて、こちらに何とか

してもらいそうな目を向けていました。

 

バラバラに断片的に告げる説明をつなげると、こんな話が見えてきました。

最初、二人とも2段ベッドの上の段で寝たかったようです。

そこで、上の段で寝る権利を取り合って

『STRATEGO』というゲームで真剣勝負をしたのだとか。

勝利者はAくん。

 

ややこしいのは、勝負で上の段に寝る権利を得たAくんが上段に寝転がってみると、

そこはファンの向きの関係上、クーラーの効きが悪い場所だったので、

「やっぱり、ぼくは下の段がいい」と言い出したのだとか。

すると、それまでは「上の段で寝たい」と言っていたBくんも、

「ぼくも下の段がいいし、ぼくのところだ」と主張したそう。

その挙句、Aくん、Bくんのふたりが下の段のベッドで、おしくらまんじゅうを

していたというわけです。

 

状況をはっきりさせてから、どうすればいいと思うか、

当人らや部屋の他のメンバーに意見を求めると、

「はいはい、わかりました。ぼくが諦めますよ」と言いながら、

Aくんが上段のベッドへ去りました。

 

AくんとBくんは仲良しで、Aくんは気の荒い子ではありません。

本来ならBくんはもっと事の理不尽さを訴えてもいい立場のはず……。

でも、こうしたやり取りの間、Bくんは、

「えぇー、えぇー、いやだなぁー」と言いながら、ベッドを占領する以外、

周囲に説明してもらうまで、自分の不利さや不満を口にしませんでした。

 

Bくんは算数の文章題や国語の読解問題が苦手ではなく、

言葉を理解したり、言葉で考えたりするのは得意なタイプ。

また、茶目っ気のある快活な性質で、引っ込み思案や対人恐怖のために

自分が出せないわけでもありません。

それなのに、どうも腑に落ちないBくんの言動は、

Bくんだけに限らず、最近の子に非常によく見られる姿なので、

心に引っかかりました。

 

先に書いた朝の学習タイムで、こんな一コマがありました。

Bくんは、「いつも家で何をして過ごしているのか」の質問に、

「楽しいこと」と答え、その後の話しあいの中で、寝る前に宿題をするまで、

嫌なことはひとつもなくて、楽しいことをしていて、その間ずっと楽しい気分だ、

と説明しました。

 

Bくんのお母さんから、Bくんが毎日のルーティーンワークである

「玄関先の決まった場所に、学校に必要なものをかけておく」というルールを守らない

こと等で、何年越しに悩み、イライラし、手を変え品を変えしてしつけを試み、

のれんに腕押し状態が続いてがっくりしてきたか、それによってどれほど先々の

不安まで覚えているかを耳にしていたわたしは、Bくんにちょっといじわるな質問を

しました。

 

「Bくん、Bくんは、学校から家に帰ったら、自分の好きな楽しいことをやって、

どんどんどんどん全部、楽しいことだけ続けていって、ずっと楽しい気分で、

最後に宿題をやる時だけ嫌な気持ちって言ってたわよね。」

「うん、そう」

「それがね、Bくんのお母さんからは、Bくんがそうやって、全部楽しくって

しょうがないって時間に、Bくんが帽子をちょっとかけておくとか、体操服を出して

おくとか、ちょっと面倒で嫌だなって思うことをやらないから、イライラしたり、

がっくりしたり、悩んだりしているって聞いているのよ。

 

ということは、Bくんが、その時間、その時間、100パーセント楽しいことだけ

しようと思わないで、ちょっとは楽しくないことも、やるべきことはしなくちゃなって

思わないから、そうなっているんじゃないの?

第一、Bくんは、自分がすごく楽しくってしょうがなくて、もっと楽しいことを

しようって思っている時に、横でお母さんがイライラしていても、

楽しい気持ちのままなの?それはOK?」

そうした問いは尋問するようにかけているわけではなく、

面白い雑談をする雰囲気でしているのですが、Bくんは、責め立てられでもしている

ように困惑しきっていました。

その一方で、話の内容を自分のこととして受け止めて、

考えている様子はありませんでした。

この質問はBくんに間違いを悟らせて、態度を改めさせるためにしたのではありません。

言い訳でも、愚痴でも、「そうだな」と納得するだけでも、

「どうして先生にそんなこと言われるの?」と反抗するのでもいいから、

Bくんの考えを聞きたかったからです。


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