虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

子どもの内面に 言葉にできないうっぷんが溜まっている時には? 4

2016-05-29 06:57:15 | 日々思うこと 雑感

前回の記事で、Aくんに笑顔が戻ってきて、いきいきとしたAくんらしさが

発揮されだしたのはなぜでしょう?

 

子どもにはいろんな意味で、十分なスペース(余白)が必要だと感じています。

しつけ上のルールにも。

時間にも。

空間も。

人間関係も。

大人の考えにも。

 

 子どもは、自分の本当の気持ちを言っても大丈夫というスペースが保証されていないと、

自分の思いを別のネガティブな行動で表現することがよくあります。

本当の気持ちを言っても大丈夫というスペースを作るとは、

「その場で本音を言ってごらん」とアクションをかけるような浅い対応ではなく、

子どもは過去の出来事を事細かに記憶しているものだし、従う従わないに関わらず

大人の言葉の影響を大きく受けているものだと知った上で

子どもの思いを尊重して対応することです。

 

Aくんの「貸したくない」「全部、ひとり占めしたい」という気持ちには、

「電車は、全部電車の仲間だからここだよ。電車が1つなくなったら、

間があいちゃうからダメだ」という、今、敏感になっている秩序への思いが含まれて

いるのでしょうし、

「ぼくが最初に遊んでいたよ」

「さっきBくんのお兄ちゃんに別のおもちゃを貸してもらえなかったよ」

「前の時はぼくのお兄ちゃんが全部取ってしまって、

ひとつも貸してもらえなかったんだよ」という訴えや過去の体験で味わった不満感を

再び心の浮上させようとする行為でもあるのでしょう。

また、「今、やっている途中だよ。面白いからもっとやっていたい。

やりだしたことを落ち着いて完成させたい」という発達上の要求や、

「お母さんや先生は、お友だちに貸してあげなさい。順番よっていうから、

言うこときかなくちゃ。

でもお母さんや先生の言うこと聞きたくない」という反抗期の葛藤もあるでしょう。

 

そうした複雑に絡みあった思いを整理して、自分を素直に表現できる状態になるには、

どう見積もっても、たっぷり時間が必要です。

 

訴えを言葉にできないものも含めて聞いてもらう時間も必要です。

 

不満感が満たされる体験、

不満やイライラなんてどうでもよくなるくらい

自分のやりたいことをやりきる時間もいります。

 

自分の個性的な資質を発揮することで、自分の強みを手にして

いやな出来事を眺めることも大事です。

 今回の話でいうと、Aくんの強みは、「物語を作っていく力」です。

Aくんは自分の強みを使って、

電気を消して、まっ暗にしたら、取れないよ。遊べない。」というアイデアを

言葉にした瞬間から、

「おもちゃを取ったり取られたり……」というストレスフルな体験を

ごっこ遊びのストーリーの一部として、

ちょっぴり刺激的で創造的に関わっていく対象へと変化させていました。

おもちゃを貸してくれず自分のおもちゃを執拗に取り上げようとする

存在だったお友だちのお兄ちゃんは、

Aくんの遊びの世界を豊かにする案内人へと変わりつつあるようでした。



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