エゴイスト written by 高山真

2023-02-25 23:34:47 | 
鑑賞された方のレビューを読んだり視聴した時に、私と似た感想の方と全く違う感想の方がいて、それはそれで色んな意見が聞けて良かったのだけども、

やはり、龍太と龍太ママのバックグラウンドというか、浩輔の目に映ってない2人の私生活が気になって仕方なかったので、原作ではどのように描写されているのか知りたくて原作を購入し今読み終えました。

3時間あればすぐに読める量ではありましたが、

ぶっちゃけ、

原作の方がめちゃくちゃ良かったぞ!

最初の数ページを読んだだけで、映画「紙の月」現象が起きてると悟りました。

つまり、脚本家がリアレンジして原作の良さが損なわれていること。

完全に損なっているとは言いませんが、浩輔の主観で描いている割には、浩輔の龍太への愛情の描き方が不十分だと思った。

っていうか、映画での過度なセックス描写のせいで、浩輔という人間としての本質が描ききれていないことにイラッとした。←映画

やはり、原作は言葉でしか表現出来ない代物だから龍太と龍太ママの人間性も丁寧に描かれています。

浩輔の心情も文字で表現されています。

確かに映画では、心で思ったことを口に出したり吐露すのは不自然です。かといって、心の声をナレーションしたら説明過多になりかねない。

特に葛藤してる時の心情であったり、推理・推察しているときの心に張り巡らせている気持ちを台詞なしで表現したり、映像化するのは非常に難しいのは分かるが、それを本人でない相手に言わせてしまったらアカンやろ。売り専を告白するシーンね。

っていうか、原作ではセックス描写や説明はありませんから!

原作を読みながら、同性愛に関して偏見を持っているのは監督自身じゃないのか?と疑いたくなったよ。

原作に紡がれている浩輔も龍太の関係は、セックス以上にもっとピュアなものがあった。

身体だけの関係で2人が結びついているんじゃない。

龍太ママは、亡くなった浩輔ママの身代わりじゃない。

龍太の思考や行動の中に浩輔自身を投影している。カッコいいから若いから惚れたんじゃない。

つまり、2人はニコイチの関係なんだよ。双子の関係、つまり、魂の片割れなんだよ。少なくとも浩輔にとっては。

龍太ママは、浩輔にとって亡くなったお母さんの分身じゃない。

龍太にとって大切なお母さんは、浩輔にとっても大切なお母さんなんだよ。そこの表現も原作ならではの描写がありました。

龍太を働かせ過ぎた罪の償いで、浩輔のエゴで龍太ママにお金を渡しているんじゃないんだよ。

ぶっちゃけ書いて申し訳ないけど、原作を読んだら亮平君と阿川さんのお金の押し問答シーンは蛇足でしかない。無駄に長いと言わざるを得ない。

原作では、このやりとりの中に浩輔と龍太ママのピュアな想いが隠れている。もちろん、言葉で説明されてますが…。

映画は説明がなさ過ぎてモヤッとする描写が多かったけども、だからといって原作で補完されているかというと、全くの別物の作品としか言いようがない。

説明がない映画で、原作で補完されている名作(私比)は、クリント・イーストウッド監督の「ミスティック・リバー」と岩井俊二監督の「リップヴァンウィンクルの花嫁」です。

リップ〜は岩井監督自身が本を書かれていますが、映画も原作も惹きつけるものがあるのは原作や作者へのリスペクトがある所以と言っても過言でないと思います。

私に言わせれば、原作と違うのはなんでなん?なんで観客をミスリードする脚色すんの?と言いたくなる。

こんなこと書いたら失礼極まりないことを承知で書きますが、

原作も良かったし映画も良かった、って言われてる方、本気で言ってる??と言いたい。

私自身、前回何も分からず偉そうに、感じたままを書きましたが、

原作の高山さんは、ちゃんと愛が分かってる方でした。打算なくちゃんと無償の愛を注がれる方です。たくさんの愛も受け取られてる。ちゃんと自覚されてる。相手の気持ちもちゃんと分かってる。本当に本当に優しさに溢れた方です。文章からめちゃくちゃ伝わってくる!

映画は、利己主義のエゴイストだったけど、

原作は、優しさのエゴイストだよ。愛に溢れまくってる。

全然違うエゴイスト。

原作はめちゃくちゃ素晴らしい!!

映画と同じ台詞なのにシチュエーションが違うからマジ泣ける!

久々に、スピワードの双子の文字に萌えた。本当にそういう内容だった。心が洗われる。

私みたいに映画でうーん…と思われた方は是非とも原作を読んで頂きたい!!

同性とか異性とか関係なく、出会ってしまったものはしようがないんだよ。

♪めぐり逢ってしまったんだもの 
戻せないの 時間は♪(中森明菜「愛撫」より)

♪Love Is The Mystery わたしを呼ぶの
愛はミステリー 不思議な力で♪(中森明菜「北ウィング」より)


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