「あわれ彼女は娼婦」

2016-06-15 07:41:03 | うらけん


めちゃオモロイ戯曲やんかいさ〜!?(笑)

これ、シェークスピアの作品ですよ!って言われたら、マジ信じるで!

それくらい、アレもコレもシェークスピア作品の登場人物とキャクターがダダ被り!めちゃ上手く描けてる!

ストーリー展開も起承転結があってめちゃオモロイ!

オモロイと書くと語弊がありますが、脚本だけ抜き出せば、めちゃ上手く出来てる!

兄妹の近親相姦がテーマだと思っていたから、昼ドラ「薔薇と牡丹」のようなめちゃくちゃドロドロした愛憎劇を想像してた。そしたら、
めちゃ社会風刺劇も描いていてビックリした!そこが面白かった。

もちろん、軸は兄妹の純愛ではあるけど、背景に描かれているのは、今の日本となんら変わらない権力攘夷主義(?)。中嶋しゅうさん演じる枢機卿がめちゃヤラシイ!あ、エロいという意味じゃないよ。権威を傘に、ま〜、自分勝手!ちょっとしか登場しないのに…。この役、アフタートークによると…(笑)

ということで、十数年ぶりに、

新国立劇場に行ってきました!!!

しかも安いZ席で(笑)並びましたよ!朝早くから(笑)

っていうか、いつもの如く

導かれたわ〜(笑)

ホンマは、今日行く予定じゃなかったんですよ。たまたま二連休を頂き、かと言って観る予定もしてなかったんですが、訳あって東京に行くことになったんです。

で、いつも使うはずの出発時間が遅い夜行バスじゃなく、30分出発時間が早いバスにしたら、東京にいつもより2時間も早く着いたんですよ!

「あわれ〜」は前売り券を購入してないので、もちろん当日券のZ席狙い。もし並んでいる人が予定枚数を超えていたら、シアタートラムのりえちゃんの「コペンハーゲン」の当日券を並ぼうと思っていたんですよ。

そしたら、いつもより2時間も早く新宿駅に着いたので、余裕で予定枚数圏内に並ぶことが出来たんですよ!しかも今日は、アフタートークショー付き!めちゃ偶然が重なりまくり!

やはり、超久々の新国立劇場中ホールは素晴らしい!

ここ数年、毎年東京に行ってるのに、やっと大好きな新国立劇場に行って、しかも、栗山作品を観れて嬉しかった!前に観たのが、樋口可南子さん&ウッチー主演の栗山版「欲望という名の電車」だっただけに、まさか浦井氏で栗山作品を観るなんて感極まりないです!

アフタートークで宮田慶子さんが仰ってましたが、演出家の栗山さんが、あの広い空間を松井るみさんの美術効果もあって、飽きない空間作りをされていて、中ホールがめちゃくちゃ生き生きした空間になってました!

演出家には怖い空間らしいですが、役者にとっては、声が響く素晴らしい空間だと思いました。今だから書くけど、あの中ホールで「エリザベート」のルキーニをやるのが昔の夢だった(笑)さすがに「エリザベート」も数十年経てば人気が落ちると予想してたのにな〜(笑)まだまだ衰え知らずの大劇場作品やな。

毎度毎度のワタクシのどうでもいい話はさておき、この「あわれ彼女は娼婦」。タイトルだけ見ると、なんか清水邦夫さん作品ぽいイメージで、蜷川さんが好きそうな内容やろな〜と思ってたら…、

全然当てが外れた!

蜷川版は、恐らく愛憎劇中心だったと思うけど、栗山版は見事に社会風刺劇に仕上げたと思う。

決して淫売でも娼婦でもない優ちゃん演じるアナベラが大人の事情に振り回されるんよ。愛する兄ジョバンニがいながらも世の中の風習に従わないといけない。ま、あの結婚は赤ちゃんが出来たことを隠すためと思ったけど、アナベラは正直に告白しちゃったんよね…。結婚後に。そりゃ、相手は怒り狂うんは仕方ない。でも、その男もまた最低男やねんけどね…。

キリスト教は、自殺はダメ、近親相姦もダメ。なのに枢機卿は…。権威の傘の下の悪魔の仮面を被った枢機卿を筆頭に、アナベラを求める男たちの陰謀や策略、その忠実なる下僕たち。色仕掛けに騙される女たち。罪のないお馬鹿甥とその恋人の無惨な別れ。理不尽な世の中を描いている。

色んな思惑や企てが更なる悲劇を生む…。脚本としては、ホンマに素晴らしい!ホンマにオモロイ戯曲!

アフタートークで浦井氏も言っていたけど、浦井氏演じるジョバンニは、トロイラスの要素もありつつ、ロミオやハムレットの要素もある。

優ちゃん演じるアナベラは、まさにジュリエットにオフィーリア。優ちゃんは否定してたけど、デズデモーナの要素もあった。この件に関しては、優ちゃんのアナベラはデズデモーナとは違うという意見は間違ってないと思う。逆に、優ちゃんのアナベラの解釈は正しいと思った。

イタリアが舞台だし、ロミジュリの乳母のような乳母も出てくるし、ジョバンニとアナベラは許されない関係という点においてもロミジュリの要素もあるけど、「オセロ」「マクベス」「タイタス・アンドロニカス
」「ベニスの商人」などなど、本当に沢山のシェークスピア作品要素を感じる登場人物や背景でした。

ジョバンニとアナベラの兄妹愛は、まさしく前世からの契りみたいなとこがあるだけに、狂おしいまでの愛が切なかった。

そう、堕胎もキリスト教では禁止やったね。そう、アナベラはジョバンニの子を身籠る。

アフタートークでのお客さんの質問じゃないけど、イギリス人がなぜイタリアを舞台に作品を作ったのか?なぜ、あの役はスペイン人だったのか?

私には、明らかにイギリスに対する皮肉でしかないと思った。確かに、エリザベス王長期はエエ時代だったとは思うけど、エリザベスが亡くなってからのイギリスが酷かったんだと思う。エリザベスが生きてようがなかろうが、イギリスは陰謀と策略の泥沼政治は止まらなかったんだと思う。金持ちと権威者が幅を利かせ、独裁的な、ま〜最低な世の中だったことでしょう。

これは戯曲の世界だけど、兄妹の純愛なる近親相姦は禁止され、なのに人殺しをした人間は、枢機卿の判断で罪は免れる。おかしな世の中だよね???でも、リアルにありそうだよね???

そんな世の中を、作者のジョン・フォードは、他国に置き換えて自国を風刺したかったんだと思う。だからあの役はスペイン人で正解だったと思う。誰がスペイン人で、スペイン人やから何?その理由は、作品をご覧下され!

当時も今もあり得る現実だったんだよね…。

こんな露骨な社会風刺劇がイギリスで上演されてたなんて…。ある意味社会は馬鹿だったのかもしれんね。他国の物語という理由だけで単純に笑ってたのかもね…。

浦井氏のジョバンニ、良かった!何度も書きますが、シェークスピア作品の主なキャラクターをイメージさせる役柄だけに、役は悲劇だけど、キャラクターとしてはとても面白い役だったと思う。本人は大変だとは思うけど。やはり、栗山演出だけあって、ロミオやハムレットetc.だけでなく、ライトもいたね。

妹アナベラを一途に愛する役柄。近親相姦が死刑になる時代の物語の中で、浦井氏の役割は、同性愛も含め、まだまだ世の中では認められないタブーへの挑戦を意味していたと思う。

そうそう、栗山さんが浦井氏を選んだ理由は、良く悪くも固定されてない、自分がないからだと思う。演技パターンがないという意味。何色でも染まれるというか…。浦井氏は、基本的に純粋なんだと思うよ。頑固で融通が利かない面もあるかもしれないけどね…(笑)m(_ _)mあ、アフタートークから感じました。

役者のイメージが強いとキャラクターが勝手に役者色に染まってしまって、役が持つメッセージ性が失ってしまうことがあるからね。もし、これ藤原君が演じたら、そりゃもうハムレットにしか見えなかったと思う。決してロミオじゃなくて。悪く言えば演技臭くなる。まだ、浦井氏は演技臭さがないのがいい。浦井氏には、何色にでも染まれる、まだまだたくさんの可能性があるという利点がある。ま、集客重視なら藤原君だったとは思うよ。浦井氏には申し訳ないけど。これが浦井氏の課題。集客力。「王家の紋章」は完売みたいやけど…。浦井氏クラスだと、たとえ結婚しても集客できる役者にならないとホンマの役者とは言えん。

優ちゃんのアナベラ。お銀に続く2番目に素晴らしい役だった!ホンマ、「かもめ」があまりにも痛い役だったから、「三人姉妹」からめちゃ良くなってきた印象!アナベラの一途な愛。大人の事情に振り回される悲しい役柄が好演でした!アフタートークで語ってくれたアナベラの心情。ちゃんと分かって演じてたんやね!直接優ちゃんの口から聞けたことが嬉しかった。

これ、客席からの質問で、かつて演じたデズデモーナと似てませんか?的な質問に対する回答だったんだけど、きっぱりデズデモーナとは違うと言い切った優ちゃんに感動した!アナベラは、私的にはエリザベートにも近いんよね〜。

あと、優ちゃんの発言で、アナベラは決して娼婦ではないのに、単語1つで切り捨ててしまう怖さ云々発言にも感動!確かに世の中、ゲスとか一言でその人の全ての人生を片付けてしまう傾向があるよね。その人の何も知らないのに、1つの出来事で片付けてしまう怖さ。今も昔も何も変わらんな。科学は進歩してるのに人間って成長しないね〜。

アナベラと結婚する伊礼君。舞台上では端正な顔立ちが映える。男前。なのに、稽古場とか終演後とか…。やはりラテンの血が騒ぐんだろね(笑)君は、何処でも怖い人やな、アフタートークによると(笑)浦井氏にも優ちゃんにも突っ込まれてた。あ、アフタートークで一瞬だけ浦井氏が関西弁で突っ込んでたけど、めちゃ上手くなってた!←何の話やねん!?(笑)

噂では、裏主役の横田さん。この役、イアーゴにしか見えない。あと、「タイタス〜」のアフリカ系の役とか。めちゃ美味しい役でした!

今回の好演は、乳母の西尾まりさん!もう、ロミジュリの乳母にしか見えない!愛嬌もありつつ打算的な面もありつつ、印象が強かった!

もう一人は、お馬鹿でお茶目なバーゲット役の野坂弘さん。浦井氏のお得意な役柄でしたが、第一部の唯一の癒しキャラでした。美味しいキャラでした。

この戯曲、守護天使とか来世とか魂とか、スピリチャルワードがあって大変気に入ってます!戯曲買います!

スピリチャルに関係なく、シェークスピア作品に興味のお持ちの方には超オススメします!

松井るみさんの美術や、マリンバ生演奏もイイよ!あの真紅の十字架は素晴らしい発想。円型より十字架の方が、宗教色がめちゃ強調される。

ホンマに、舞台演出も作品も役者も素晴らしかった!やはり、新国立劇場大好き!!!

そうそう、今回座ったZ席、めちゃ美味しい席やった(笑)昔は後ろ1列全てZ席だったのに、今は端っこだけやねんね。だから枚数が少ない。なのに、30分早く出発したバスのお陰で安くて美味しい席で観劇出来て超ラッキーでした!神様ありがとうございますm(_ _)m

今日のまとめ:アフタートーク、聞いたらまた観たくなった。確かめたいことたくさんあるし。戯曲は買いそびれたし。なので…。

さあ、あともう一つブログ書くよ!夜UP目指します!(笑)



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