ロスメルスホルム

2023-11-12 10:30:49 | 舞台
私の記憶の中では、イプセン大先生の戯曲の中で最も難解な作品の1つがコレ。何を描いているのか、ストーリーすら理解出来なかった記憶しかない戯曲。

今回の舞台で、理解できるのか、何を感じるのか、久々の森田剛君と「ドライブ・マイカー」で彗星の如く現れた三浦透子さんの舞台ということもあり、マチネの梅芸の後、兵芸に行きソワレ公演を観てきました。

正直な感想、明確な答えやメッセージは分からなかった。

ただぼんやり見えてくるのは、本当の意味での自由思想とは何かを問うた作品かな?と思った。

正直なところ、イプセンが生まれた時代のノルウェーの政治的背景を全く知らないから、ロスメルスホルムの義理の兄と対立するモンテンスゴールのそれぞれの思想や理想の社会が、舞台でも理解できなかった。だから、ロスメルスホルムとレベッカの理想郷も理解出来なかったのが正直な感想です。

今まで、全部ではないが、イプセンの戯曲も読み、戯曲を読んだ頃は、イプセンの人物描写の鋭さに感銘を受けて大好きな戯曲家になったわけだけど、

最近は年に一回は舞台が上演されるようになって、伝わってくること見えてくるものは歳を取ったせいか、戯曲を読んだ頃と全く違って、ウーマンリブの思想が強いな~と感じていた。

だけど、この作品は、「海の夫人」同様、魂の自由を追求した作品かな?と思った。

資本主義でも社会主義でもでもない、そういう政治的思想の社会の中で縛られた自由ではなく、政治的思想を持たず本来人間が持つべき自由選択や自由意思で生きていける社会こそ理想社会と言いたかったのかな?と思った。

極端な話、国家のトップによって支配された自由じゃなく、まさにエリザベートの如く、国民ひとりひとりが自由意思で選択できる自由。

現実問題として、本当に人間が国家の隔たりもなく自由選択が可能になった時、一体誰が食糧を生産してくれるのかという最大の問題がでる。そうなったら、もはや、自給自足するしかないね。農家の方だって働かないという自由選択もあるわけだからね。

って考えると、現社会において、自由思想は、魂の自由しかない。それはまさにトート閣下のいる世界。

私視点では、この世界は、国家のトップが、国家のリーダーとして国民を統治しているかのように見えるけど、実は見えない力によって国家リーダーも選択権を奪われていると私は思うんよね。

ハマスの報道もしかり、本来報道すべき内容が都合よくカットされたり編集されたり。マスコミによって印象操作されていたり、なぜ印象操作しないといけないのか、その根っこを辿っていったら、見えない力が動いていたり、っていうのが最近の世界情勢を見ると視えてくる。

イプセンも実は、それを訴えていたのかな?と正直なところ思ってしまった。

見えない束縛によって自由を奪われている現実を。

そもそも、国民を巻き込んで戦争する時点で間違っているんよ。武器を開発してる時点で間違っているんよ。映画「カイジ」の世界観が、リアル世界で行われているとしか思えない。

はい、「ロスメルスホルム」から脱線しまくりましたm(__)m

そう、舞台のラストシーンが気になったので、私が持ってる戯曲で確認したら、明確な描写が書かれていました。

やはり、今、我々が得られる自由は、魂の自由しかないと思った。イプセン大先生がそれを描きたかったのかは分からないけど…。

ということで、蜷川さんの「祈りと怪物」以来の剛君のロスメルスホルムは、最初の印象は、透明感があるキレイな声であることに驚いた。まるで声優さんみたいだった。もっと低い声だと思った。

剛君のロスメルスホルムは、まさに魂を何処かに置いていったような血が通っていないゴースト的な印象。

まるで、ヒチコックやミュージカルの「レベッカ」を見てるかのような、亡くなった妻のゴーストに取り憑かれたような表現だった。ま、結局そういうことだからね。

感情の起伏がない淡々とした演技が逆に怖くて良かった。感情を顕わにする時は時で怖さがあって更に良かった。見えない何かに束縛されてる感と、透明感がある声が実に魅力的だった。そりゃ、りえちゃんも惚れるわ!っと思った。あ、失礼しましたm(__)m

三浦透子さんのレベッカは、ロスメルスホルムの理想に共感した一人。過去に闇を抱え、彼女もまた見えない何かによって自由を奪われている。

ロスメルスホルムが一歩でも理想に近づく行動をとってくれたら、彼女もまた理想に近づくことが出来たのに、結局2人が手にしたのは、現社会での理想郷ではなく、魂の自由だった。

透子さんのいかにも闇を抱えた演技がめちゃくちゃ良かった。っていうか、舞台経験豊富ですか?と聞きたくなるくらい、自然体で演じられていてめちゃくちゃ上手くてビックリした。

浅野雅博さん、谷田歩さん、櫻井章喜さんは、それぞれ独自の思想を持った役柄で、なんの思想なのかは良く分からなかったけど、それぞれがロスメルスホルムを味方につけようとする様が三者三様で存在感はピカ一でした。

梅沢昌代さんは、まさにゴーストが住む屋敷の家政婦さんで、家政婦さんだけにコメディーリリーフ的な存在で重たい空気の中の唯一の清涼剤的存在で良かった。

この作品、東京公演より兵庫公演が先だったんだね。十分完成されていると思った。難解作品なので良く分からなかったけど。

ぶっちゃけ、難解のはずなのに、照明も暗いシーンが多いのに寝てる人がいなかったことにビックリした。

それもそのはず!

カーテンコールが凄かった!5回以上はあったな。最後は、剛君が梅沢さん達と電車ごっこで登場し、やっと剛君の笑顔が見れて、ファンの皆さんが大変喜んでた。

藤ヶ谷太輔君の舞台もしかり、ファンの力というか、ファンの集中力におののくばかり。

役者の皆さん、東京公演も頑張ってください!



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