「トロイラスとクレシダ」大千秋楽

2015-08-23 22:30:51 | うらけん
渡辺徹さん、思ってたより痩せてたね!(笑)

大石内蔵助の時の方が…。

ということで、二回目のびわ湖ホールに行ってきました。やっぱ、この劇場いいね!湖畔にそびえ、湖と山を望める絶景ビュースポット。めちゃオススメ!

それはさておき、前回は、ストーリーを理解するために映画をなぞりながら観てましたが、今回は、全く映画をなぞることなく観ることが出来たので、パリスがオーランド・ブルームと重ならなかったし、トロイラスもアンドレイとも重ならなかった。前回と印象がかなり変わった。

今回は特に、パンダラスは女衒なのか?クレシダは娼婦なのか?を焦点に観てました。


結論から言うと、パンダラスは間違いなく女衒で、クレシダは娼婦であって娼婦でない役柄だったと思った。生粋の娼婦ではないけど、男の慰みモノとしてあてがわれたのは確かだと思った。戦争の犠牲者の印象はなかったな。

それ以上に感じたのは、前回は格好よかったヘクターがアカン男(ダメ男とはちと違う)に見えたし、ダイアミディーズもアカン男に見えた。あれはクレシダを愛しているとは言わないし、トロイラスよりマシとも思わなかった。クレシダがトロイラスに対して駆け引きして気を引こうとしたのと同じことをダイアミディーズがクレシダにしてたわけやから、どっちもどっちって感じやな。

トロイラスは子供というよりかは、プライドを傷つけられて怒り狂った感が強く意固地なイメージ。クレシダを本当に愛していたいるようにはさすがに見えなかったね。クレシダに裏切られ、ダイアミディーズに屈辱感を味わった青年って感じだった。

トータルで感じたことは、結局は、いつの世も男はアホな生き物やで、とシェークスピアは描きたかったのかな…と思った。

そう思わす1番のきっかけは、ヘクターの存在やね。前回は、映画をなぞりながら観てたから、ヘクターが男前に見えたし英雄にも思えたけど、よくよく観察したら、ヘクターもただの見栄っ張りやん。意固地でプライドが高くて、トロイラスと変わらん。前回は、パリス&トロイラスは似た者同士でヘクターは違うと思ったけど、今日観たら、同じ穴のむじな、兄弟だと思った。

今回は、ヘクターの奥さんのアンドロマキとヘクター兄弟の妹カサンドラの言葉がめちゃくちゃ響いてきた。

何のために戦うの???って思うね。結局は己の見栄えとプライドのためやん。トロイや家族のことなんてほんの少ししか考えてない。

アンドロマキとカサンドラの助言を聞いていたら、ヘクターは死なずにすみ、トロイも滅亡しなかったかも…と思った。ま、何事も結果論でしかないけどね…。

トータルで観ても、共感できる男は誰一人いなかった。みんなクズや。

長い歴史を見ても、戦争を起こすのはいつも男達やもんな。女性は、せいぜい、嫁vs.姑、嫁vs.小姑の小競り合い、職場や学校やママ友間の妬み嫉み僻みくらいなもんやん。女性の皆さんごめんなさいm(__)m

女性が指導者として戦争が起こった例を知らん。男の方が、見栄っ張りでガキだと思う。もちろん、私もガキの一人です…(汗)

やはり、この戯曲って、トロイラスよりアキリーズの方が主役だと思った。もはや、トロイラスとクレシダの関係は、ロミジュリみたいな恋人同士ではなく、メイドカフェのご主人様とメイドみたいになもんやもんな。それは、ダイアミディーズとクレシダの関係で明白。

クレシダって本当に難しい役だと思う。説明しにくいけど、娼婦であって娼婦でない役だと思うんよね。捕虜交換前のクレシダは、トロイラスに忠実な乙女だったけど、捕虜交換されたことで、娼婦というか婬売というか、慰みモノになった…と思った。そんな卑猥な存在でもないところがこの役の1番の難しさだと思った。

ヘレナみたいな男たらしな雰囲気があればまた話は別やけど、ソニンちゃんのクレシダには卑猥さはないんよね。でも、男にだらしないというか弱い面を持ち合わせいて、不実なクレシダでもあるけど、芯のないクレシダって感じ。←意味不明でごめんなさいm(__)m前回感じた可哀想という同情心はなく、仕方ないよね~って思った。


不思議なことに、今日の浦井トロイラスに対しては、全く怒りはなかったんよね。ある意味同情したくらい。岡本ダイアミディーズもただの計算高い人間で、リチャード三世みたいやった。まさか、吉田ヘクターの印象が前回と変わるとは思ってなかったね。それこそ、ヘクターが意固地になればなるほど、男ってアホやなって思ってしまった。あ、吉田さんの演技は素晴らしかったですよ!あくまで役の印象なので…。

アキリーズは、バイシェクシャル度がUpしていて、オペラグラスがないと分からないパトロクロスとの微妙やりとりがとてもリアルでした。

今回は、ほんの少ししか出番がないアンドロマキとカサンドラの台詞が、私の心に響き、ヘクターが自分を偽ってる、という台詞がこの作品のすべてだと思った。

あらゆる戦争や争いは、素晴らしい言葉で大義名分を飾り立てるだけで、操り人形のように自分自身を自分で操ってるだけなんよね。

俯瞰する力があれば、自分のいたらなさやダメな部分を見つけて修正することができるけど、俯瞰する力がないと、権力やプライドが邪魔して歯止めが効かなくなることって大いにあるんよね。まさにヨン・ホゲと同じ。

人間って、自己制御出来なくなったら終わり、と私は思う。

と思った今日の大千秋楽でした。

今日は大千秋楽ということで、浦井氏に誘導され、鵜山さん、ソニンちゃん、渡辺さんの挨拶がありました。

っていうか、私はね、浦井氏、君の挨拶も聞きたいんだよ!「デスノート」の時も他キャストに振ってさ、自分は何も喋らんのは主役としていかがなものか…。ま、誰かに振ってもらわないと、自分からは喋らんわな…(笑)m(__)m

文学座大好きなソニンちゃんは、シェークスピア作品の難しい女性を演じたいと言ってましたが、私が知る限り、クレシダ役が1番難しいと思うで。この役には、お前は病気か!?と言いたくなるくらいの無数の人格が備わっているので、ソニンちゃんならもう何でも出来るよ!先ずは、浦井氏と「ロミジュリ」。これは誰もが切望してると思うで。「オセロ」のデスデモーナなんかピッタリだと思う!

渡辺さんは…、冒頭に書かせて頂きました(笑)

鵜山さんは声が小さくて聞こえなかった…(笑)でも、まるで蜷川さんや栗山さんに対抗するかのような演出が良かったと思う。ギリシャの野外舞台ような舞台美術は凄い!と思いました。

浦井氏はもう来年の5月までお目にかかることはないんかな…。ひょっとして大河出演なのか気になるとこですが…。来年は、帝劇主演やで!新国立も主演やで!凄いな!頑張れ!大阪には来そうにない雰囲気ですが、東京まで観に行くかどうかは来年次第やな。

ソニンちゃんは、「TDV」絶対観るからね!

文学座率いる鵜山カンパニーの次回作も楽しみにしてます!

今日のまとめ:兵芸の千秋楽の時は、浦井氏の一言しかなかったのに、びわ湖ホールの大千秋楽は、挨拶がたっぷりでこんなにお得感あるとは思わなかった。本当に来て良かった!役者さんも裏方さんも皆さん、お疲れ様でした。