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「貴婦人の訪問」

2015-08-07 21:53:24 | ミュージカル
めちゃくちゃネタバレしてます。これからご覧になられる方はご注意下さい。相変わらず意味不明な文章だから問題ないかも(笑)


大事に育てた飼い犬に噛まれることほど不条理なことないよね…?なんか、内容的にはニコールの「ドッグヴィル」に似てた。

それから、財政難のギリシャを見てるようだった。めちゃくちゃリアルに重なるシーンがあった。

小さな街の全体主義。集団心理の怖さ。村八分では生きていけない社会を描いた秀作でした。

国全体が全体主義だったら怖いけど、社会にはある種の全体主義がないとやっていけないのもあるのも事実だもんね。

この小さな街を一つの企業として考えると、社員の中に企業秘密をライバル企業に漏らす者がいたらもうアカンやん。

セクハラだけでなく、パワハラやマタハラとかで訴えられている企業があるやん。もはや社員に訴えられている時点でその企業はダメだと思うんよね。

洗脳とまではいかないけど、信頼関係がないと、企業って維持できないと思うんよね。たとえその信頼関係が正義の欠片もない不条理であってもね。

だからといって、このミュージカルで描かれている全体主義を肯定している訳じゃないけど、たとえ全体主義社会であっても、いかに個を尊重していくことが大切かを描いた作品でもあると思った。


この作品って、私だけかもしれないけど、何が真実で何が嘘なのか?誰の言葉が正しいのか?うやむやにしているところがあると思うよね。そこがこのミュージカルの面白味だと思った。

アルフレッドなんて…、私にしては珍しく思わず心の声が言葉に出てしまったくらい最低な男やん?

そのアルフレッドの言葉が本当なのか嘘なのか分からないくらい最低過ぎて、もちろん、彼を取り巻く環境も同じくらい最低なんだけど、あからさまにアルフレッドって最低やん。でも決して悪い人間てもないねんけど、どんな言葉も私には言い訳にしか聞こえなかった。それがアルフレッドにとっては一番の悲劇だと思うんよね。私にとって、“死”は悲劇ではないから。

クレアの本心は、最後の一言で分かりますが、描き方が曖昧だったもんね。一見、クレアは何がしたいんだろう…?と思う時があった。それも含め、ラストの一言で分かる。

もということで、ウィーンで大ヒットしたという、元祖かなめさんこと涼風真世さん主演のミュージカルを観てきました。

よくもまあ、こんな不条理劇をミュージカル化したな~とは思いましたが、「エリザベート」「モーツァルト」「レベッカ」「TDV」を生み出したウィーンミュージカルだけあって、なんだかんだで、やはりスピ要素のある作品でしたね。

かなめさん演じるクレアは、確かにメフィストフェレス的存在だけど、クレアも真実の愛に飢えた悪魔でもあり聖女でもあるんよね。

どう観ても、ただの復讐劇でないことはラストで分かりますが、クレアの中には魔性な部分と神聖な部分が両方あって、まさに「ドッグヴィル」のグレースみたいな存在で、架空の小都市ギュレンの市民の不条理さを浮き彫りにさせる役割を担っていた。

私は「ドッグヴィル」は是非とも舞台化して欲しいと思っていたので、それに似た作品が、まさかウィーンでミュージカル化されるとは思ってなかったですが、この不条理ミュージカルは社会の集団心理や拝金主義を描いたなかなかの秀作だと思う。

クレア役は、かつて、メフィストフェレスを演じたかなめさんにピッタリな役柄であり、そうそう、「サンセット大通り」のノーマにも似た役作りだったので、クレアなのかノーマなのか一見分からない時があった。今回は、瞳子さんのノーマを観てないので、ある意味一度で二度美味しい役だった。

歌に関しては、あの歌ウマのかなめさんが苦戦しているのがあからさまに伝わるくらいの難曲ばかりでしたね。かなめさんなら、裏声使わなくても、アルトで通せたと思うだけどな~。実は、今、ウィーン版のCDを聴きながら書いているんですが、主演のピアは裏声使ってないのにな~。やはり日本語で歌う難しさがあるんだろね。

アルフレッドの山祐さん、もう可愛い過ぎ!(笑)でも、めちゃ最低男でしたね。ある台詞で思わず、“最低!”って口に出してしまいましたわ(笑)

アルフレッドだけあって「TDV」のアルフレート似たヘタレっぷりで、ちょっとわざとらしくて作り過ぎた感があったのは否めませんが、山祐さんにしては珍しい役柄というかアプローチでしたね。あんな過去がなければ良い人なんだけどね…な役作りが好演した。

このアルフレッドは、自業自得な役柄でもあり、可哀想な役柄でもあります。飼い犬に噛み殺されるかもしれない恐怖心(←喩えです)で精神が狂う役柄でもあります。ま、アルフレッド本人だけが悪い訳じゃないもんな。拝金主義で、全体主義がまかり通っていたら仕方ないよね。彼の中に他の選択肢がなかったんやもんな…。この心理状態が一番怖いんよね。「愛を読む人」のヒロインと同じだから。

ただ、クレアを裏切った理由に説得力がなかったので、もっと具体的な理由が欲しい。マチルデと結婚して、雑貨店を経営じゃね…。クレアだって怒り狂えないよ。ま、クレアの復讐心は、アルフレッドに対してだけじゃないもんな…。

で、マチルデを演じたオサさん。超久しぶり。2002年の宝塚花組の「エリザベート」以来やからね。もう、めちゃくちゃ自然な女優さんぶりでびっくりした!喋り方もめちゃくちゃ自然!オサさん、声優出来るよ!くらい上手かった!

このマチルデも過去の経緯がなければ、めちゃくちゃ愛情に溢れた役柄で、第一部のソロはとても良かった!実は、拝金主義のシンボルであったマチルデではあるけど、マチルデはマチルデでアルフレッドを本当に愛していたのにね…。マチルデの心理が一番分かりやすかった。オサさんも好演でした。

もし、私の友人でアルフレッドみたいな人間がいたら、一言アドバイスしたい。あとあと後悔しない選択をせなアカンで!と。

アルフレッドを観ていたら、真実を見分ける力は必要だと思う。分かっていて騙されるのと、知らずに騙されるんじゃ大きな違いやもんな。

ま、財政破綻寸前のギュレンに現れたクレアが、アルフレッドの死と引き換えに多額の寄付をするという不条理な条件を出さなければ分からなかった、ギュレンの市民の真実の姿だもんね。

“死ぬまで親友”“死ぬまで愛してる(←だったかな…?)”、究極の言葉が、簡単に無意味化するんやもんな。良く出来た脚本!

「デスノート」の死神の目くらい、本当に真実を見分ける目が欲しいね。

禅さん演じるクラウス校長があの市民の中では一番世の中が分かっている人でしたね。自分もあの拝金主義者の一員であることを分かっているだけに苦しい立場やね。


市長役の今井さんも含め、メインのキャストが、元祖東宝「エリザベート」組だったのも面白かった。ベテランならではの存在感でさた。

本当は、この作品、観る予定になかったのですが、運命に導かれました(笑)たくさんのキーワードに納得しまくりでした。

今日観て思いましたが、ウィーンミュージカルは、シアターBRAVAの箱の大きさがピッタリだと思った。「レベッカ」もここでやれば良かったのに…。ま、梅芸だと安く観ることが出来る利点はあるけど…。ま、どちらを選択するかやな。

今日のまとめ:あんな結末じゃ、一回目のカーテンコールでスタベ出来ないな。今日の観客の皆さんもそうだったと思いますが、三回目のカーテンコールでは演者の敬意に対してスタベしましたが、あんな不条理な結末じゃ普通はスタベは出来ない。「ロミジュリ」みたいな純粋な愛と死なら一回目でスタベ出来るんだけどね…。

ピア・ダウエス、日本に来て欲しいな~。ウィーン版「貴婦人の訪問」のCD、なかなか良いですよ!日本版の舞台を見たら情景が浮かぶ。音楽は素晴らしいと思う。