開設110年の東京駅 8号水彩
水打つ蜻蛉
次次に水打つ蜻蛉山の池 惟之
津田梅子を印刷中や秋の暮
菰巻いていろは松なり彦根城
結ひ上げて七五三なり椿山荘
木之本の地蔵菩薩や初時雨
誌上句会 兼題「初時雨」
特選
感染症ひとけたへりし初時雨 博女
イマジンの聞こゆ公園初時雨 光央
仮縫ひの針の軋みや初時雨 三枝子
初時雨こんにゃく色の武相荘 秀輔
秀作
発つ子等の尾灯潤ます初時雨 稔
初しぐれ漆の椀の出汁の味 文夫
竹林の中の明るさ初すぐれ 博光
これよりは西国街道初時雨 鈴子
風の音舟軋む音初しぐれ みどり
初時雨昭和の路地をぬらしけり 信義
初時雨俳句の道の果てもなし 珠子
入選
窓叩く小さき手のひら初しぐれ 廣平
初時雨背に気配の夜坐かな 謙治
待つ人の遅れ気になる初しぐれ 洋子
初時雨無断で借りる寺の門 まこと
大比叡のケーブル待や初時雨 知恵子
軒先に犬は遠見の初時雨 幹男
朝市に出会ひの村や初時雨 藤子
初時雨ちょつと寄道したやうに ふみ女
初時雨比叡の道を修行僧 靜風
山里の茅葺屋根に初時雨 裕枝女
初時雨いろ増す京の四方の山 秀子
故郷は無人駅なり初時雨 紀久子
晩鐘のしづかな里や初時雨 靖子
嵯峨野路の童地蔵や初時雨 惟之
寺前の片手拝みや初時雨 富治
芭蕉像の菅笠ぬらす初時雨 敏子
感情をぽつりとこぼす初時雨 悦子
はじめてのペットを迎え初時雨 倫子
孫作るカレーの味し初時雨 翠
マンホールの蓋に市の花初時雨 美代子
庭しかフエードアウトの初しぐれ 啓子
異国語の飛び交ふ渋谷初時雨 洋子
明け方の土の湿りや初時雨 つとむ
やまびこ(一月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句)
たんたんと流る暮らし走馬灯 久子
花芒さみしき時は野を歩け みどり
肩車の小さき手の捥ぐ林檎かな 咲久子
コスモスの乱れに山の動きけり 東音
鰯引く水平線を曳くごとく 勝彦
稲の花憲法九条ありてこそ 爽見
赤とんぼ小首かしげて止まりけり 悦子
老いて尚飽きぬこの里合歓の花 和江
寝入る児の薄き爪切る夏の夜 久代
オラショ聴く島の教会秋日和 藤子
秋夕焼乳房ひきずり牛帰る 泰山
俳誌嵯峨野 三月号(通巻第632号)より