秋の訪れ 50号 三浦武弘(大津市)
万福寺
林間に四葩波打つ三室戸寺 惟之
本堂へ鐘を打たばや時鳥
梅雨晴れて一駅歩き万福寺
大寺の門を叩かば隠元忌
涼しさの廊下に下がる魚版かな
誌上句会 兼題「渡り鳥」
特選
次つぎと湖北の山を渡り鳥 惟之
宇和海のだるま夕日や鳥渡る 京子
糸底を切りて一息渡り鳥 秀穂
旋回し列を正して渡り鳥 三枝子
この星に国境はなし渡り鳥 三郎
秀作
あの山を越えれば湖よ渡り鳥 紀久子
比良比叡越えて降りくる渡り鳥 博女
この湖の水の匂よ渡り鳥 治子
渡り鳥仰げば遠く海の音 美智子
鳥渡る茜空なる日本海 和男
斑鳩の三塔昏れて鳥渡る 洋子
日章旗揚ぐる都庁鳥渡る 珠子
鳴き声の一塊となる渡り鳥 博光
県境の八ケ岳大橋や鳥渡る 翆
リーダーの一声高き渡り鳥 詔義
鳥渡る皆の信じるその道を 秀子
海峡はこころして飛べ渡り鳥 まこと
船旅を友とデッキに渡り鳥 文夫
行く雲に道をゆずられ渡り鳥 篤子
風に告ぐこの小川よと渡り鳥 篤子
庭に来し紋をつけたる渡り鳥 胡蝶
藍深むうぶすなの空鳥渡る 洋子
長旅を休めるお濠渡り鳥 捨弘
農終へ仰ぐ西方鳥渡る 泰山
天空の城址よぎる渡り鳥 藤子
やまびこ(九月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
捩花を咲かせて婆の反抗期 三枝子
風薫る心の通ふ人のゐて 和子
夏の雲摩文仁の丘の鉄の雨 ともはる
道おしへゆっくり来いよとふり返る きぬ
ありし日の妻の気配を白団扇 爽見
薫風や男手前の足袋袴 洋子
師と子らの鼓のひびく宵若葉 洋子
山びこの声やはらかき若葉山 久子
まだ奥に人住む気配山つつじ 隆を
切り株の千年の黙鳥雲に 篤子
米一合八十八夜の水で研ぐ 篤子
どう食ぶる土筆三本子の土産 方城
菖蒲湯の菖蒲の長さもてあまし 鈴子
つれだちて越前平野麦の秋 悦子
山に来て山の声聞く暮春かな 京子
麦秋や日輪赤く沈みゆく 朋子
家出でもしさうな妻のサングラス 泰山
荒川の河童へそ出せ子供の日 博光
俳誌嵯峨野 十一月号(通巻第616号)より