夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

JR西日本の山崎社長を起訴。幹部には事故の責任がある 

2009年07月11日 | 社会問題
 JR西日本の山崎社長が起訴された。
 でもたった一人だけだ。当時の幹部らは不起訴である。遺族も被害者も納得出来る訳が無い。検察は山崎社長なら1996年、常務取締役鉄道本部長で安全対策の最高責任者だったから(でも何で1996年なんだ)、事故を予測出来たと立証出来ると踏んでいるが、そんな事は無い。遺族が告訴していた事故当時の相談役も会長も社長も、みんな事故を予測出来たはずだ。予測出来ないと言うのであれば、鉄道事業の責任者にはなれない。
 そうだろう。高速で走り、大勢の乗客を乗せている列車は二本のレールの上を走っている。列車に方向を操るハンドルが無い事は誰もが知っている。列車はレールに従って走るしか出来ない。あの細いレールの上に乗った車輪はレールの内側に車輪の出っ張った部分が引っ掛かって外側へは出ない仕組みになっている。ただそれだけでレールの上に乗っている。だからレールが外側に膨らんでいたら、車輪は簡単に外れてしまう。レールは列車の命なのだ。どのような場合にそのレールが危険になるかを知っているのは鉄道マンとしては常識だろう。
 どこの鉄道会社だって安全と見込んで列車を走らせている。しかしそれでも安心出来ないからこそATSを設置している。それは規則で決められているからではない。万が一の事故を防ぐ手段としてである。法律に違反していないから責任は無い、とは言えない。そんな事を言うなら、鉄道経営の世界からは身を引くべきだ。

 同社長は「運転士が制限速度をはるかに越えてカーブに進入すると思わず、事故は予測出来なかった」と以前から主張しているが、運転士が制限速度を越える可能性は十分にあった。現場は70キロの速度制限だ。列車が正常に運行していれば、制限速度を越える必要は無い。だが、あの列車は前の駅でオーバーランをして1分半遅れていた。そしてそれくらいの遅れなら正常の範囲内だと会社が認めるなら、誰も無謀な運転はしない。
 そうではなく、遅れを出せば運転業務から外され、草むしりなどをさせられる事が分かっているからこそ、必死に正常通りのダイヤに戻そうと頑張ったのである。運転士の多くは子供の頃からの夢だっただろう。その仕事を外されて我慢が出来るか。ダイヤを守るのは日本の鉄道のお家芸でもあるが、JR西日本は特にうるさいらしい。それは関西圏では私鉄と競合して乗客を奪う事を考えているからだ。それが高速化や増便、通勤定期券の値下げなどになって現れている。遅れなどを出していてせっかく奪った乗客を私鉄に取り戻されてはならないのである。
 私鉄の乗客を狙っている証拠はそれだけではない。多くの人々が問題にしていないようだが、JR西日本は競合する私鉄と同じ路線名を愛称と称して付けたのだ。それがどんなに無理な命名かは関西圏の鉄道事情を知っていれば容易に分かる。分からないのなら、鈍感なだけだ。おんなじなんだから、是非ともJRにお乗り下さいと誘っているのである。

 1分半遅れのまま尼崎駅に到着した場合、どうなるか。同列車はそのままJR東西線と学園都市線経由で同志社前まで行くが、その運行にさしたる支障は無い。ところが、尼崎駅では同列車の正常時刻到着のわずか3分後に、大阪、京都、米原を経て北陸本線の長浜まで行く列車が接続していたのだ。1分半では乗り換えが出来ない乗客が出る。列車の遅れどころじゃない。その列車の次は9分も待たなければならない。
 尼崎駅で、事故列車の遅れを知ってこの列車の出発を待たせてくれれば乗り換えの失敗は無くなるが、今度は別の列車を遅らせたとの責任が発生する。それがどんなにひどい事になるのかを運転士は知っている。だから何とか遅れを取り戻そうとした。
 列車は伊丹駅を出る時に既に1分半遅れている。だから伊丹―尼崎の間でその遅れを取り戻す必要がある。伊丹―尼崎は5・8キロ。普通なら6分掛かるがそれを4分半で走らなければならない。そうなると時速は77・3キロになる。その間に事故の原因になった70キロ制限のカーブがある。7キロもオーバーして走らないと駄目なのだ。だからそのカーブに差し掛かる前に何とか元に戻したい。それが乗客が恐怖を覚えるような猛スピードとなった。事故後のスピード計は115キロを示していた。そしてそのままカーブに突っ込んでしまった。

 これでもまだJR西日本は事故の起きる危険性を予測出来なかったと言い張るのか。そうした言い訳を認めている事が私は不思議でたまらない。列車の遅れで接続列車に乗り損なう恐れがある事を同社は十分に知っている。だから、事故後に福知山線のダイヤの全面的な見直しをして、問題の列車の尼崎駅到着は2分早くなった。接続に5分のゆとりを持たせたのである。この事故が予測出来ない不可抗力だったのなら、接続時間は今までと同じで何も問題は無いだろうに。