竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

英国のグリム:ジェイコブス と イソップ寓話

2010年12月06日 | 日記
奈良民話祭りが無事終わりましたので、
ここらで、ちょっと話題をお話の世界に戻しましょう!

グリム兄弟が当時のドイツでメルヘンを集めたように、
ジョーゼフ・ジェイコブズはイギリスで民話を集めました。

たとえば、「ジャックと豆の木」、「3匹の子豚」などは
誰でも知っていますよね。

これは、ジェイコブズの『イギリス民話集』に収められた
典型的なイギリスの民話です。

ジェイコブズも、グリム兄弟がやったように、
採集した話の内容を変えないで、
方言なども出来る限り生かして、再話をしています。

そうゆうわけで、ジェイコブズが
「イギリスのグリム」といわれるのも納得できるでしょう。

また、ジェイコブズは学者として、イソップの研究でも
功績を残していることを知りました。

それは、11月11日のブログで紹介した展示
「梅花女子大学・児童文学教育と研究28年の歩み」で
共同研究「イソップ」関連資料をみたからです。

その資料の中にジェイコブズ編『イソップ寓話』が
ありました。

The Fables of Aesop
Traced by Joseph Jacobs
Pictures by Richard Heighway.
Macmillan, 1894



表紙の絵は「キツネとカラス」の挿絵です。

それではその話を語りましょう!

         キツネ と カラス

 ある日のこと、カラスが一片のチーズを盗み、
ゆっくり食べるようにと、それをくわえて樹に飛んで行った。

 カラスがそれをくわえて樹に止まっていると、
ちようどキツネが通りかかり、仰向いてカラスを見た。

 キツネは思った
(あー、あのチーズの匂いがなんともたまらない。
あれを奪ってやろう、なあにそれは簡単さ!)

 キツネは樹に近寄って来て、カラスに言った。
「奥さん、なんてあなたは美しくていらっしゃるんでしよう!
こうも稀れな美貌をそなえていらっしゃろうとは、
今の今まで存知ませんでした。
羽色の艶々しさ、お姿の美しいように、
お声もきっと美しいのでしょうね。
そうなら、あなたは、鳥の女王ですよ!
一つ歌って聞かせて下さいませんか?」

 ところで、カラスの、「かあ! かあ!」という声が音楽的でないことは
世に知れ渡っていた。
 用心すべきであったのに、カラスは、キツネのお世辞があまり嬉しかつたので、
キツネに美しい声を聞かせてやろうとして、
口を開いた途端に、チーズが落ちて、
下で待ち構えていたキツネの口に入ってしまった。

 キツネはそれをひとロで食べてしまい、
それから、ちよっと立ち止まって言った。

「親愛なるカラスさん、あなたの声は十分に美しいですよ。
でも、おつむが足りないですね!」


 褒められていい気になりすぎると、痛い目をみることになるぞ!!

おしまい。