【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

自己正当化の歴史

2018-05-19 06:49:21 | Weblog

 北朝鮮は、アメリカの核による軍事的脅威にさらされているから核開発が必要だ、と主張しています。これで私が思い出したのが、冷戦の時の「アメリカとNATOに包囲され、軍事的脅威にさらされているから、こちらも正当防衛のために軍拡が必要なのだ」というソ連の主張です。
 歴史は繰り返す、というか、人間の発想力は同じようなことしか思いつけないのかもしれません。

【ただいま読書中】『ふしぎをのせたアリエル号』リチャード・ケネディ 著、 中川千尋 訳・絵、 徳間書店、2001年、3000円(税別)

 エイミイは生まれてすぐに母親を亡くし、父親は海に出て帰ってきませんでした。孤児院の前に捨てられたバスケットの中にいるのは、エイミイと大きなパンとキャプテンという名の人形(仕立屋の父親がエイミイが生まれた日に完成させたもの)。エイミイはいつもキャプテンと一緒でした。そしていつも「ふしぎなこと」が起きるのを待っていました。それはエイミイが16歳の時起きました。キャプテンに生命が吹き込まれたのです。“二人"は、誕生日が同じで同じ場所で産まれたから、“ふたご"なのです。
 キャプテンは成長を始めます。もう「人形」ではありません。頭の中にはなぜか航海術がぎっしり詰まっています。しかしそれは当然でしょう。だってキャプテンですから。しかし、女の子のための施設に「キャプテン」がいてはいけません。彼は追われ、港で船に乗り込みます。船の名前はアリエル号。エイミイは悲しみに沈み、人形になってしまいます。ただ悪いことばかりではありません。人形は長い時間をじっと待つことができるのですから。
 キャプテンは「立派な人間」になって戻り、二人(一人と一つの人形)は宝探しの旅に出かけます。しかし、絵に描いたような悪党が二人(一人と一つの人形)の邪魔をします。
 ここで、ユダヤ教やキリスト教原理主義者だったら血相を変えるにちがいない話の展開に。ともかく、アリエル号には不思議な乗組員が乗り組み(というか、船長室から飛び出し)船は、海賊船に追われながら、宝探しの旅に出発したのです。航海の途中では、はらはらどきどきもありますが、まるでアンジャッシュのコントのような、勘違いと勘違いがぶつかり合うシーンもつぎつぎ登場します。これ、子供への読み聞かせだったら大受けしそうです。
 ついに見つかったのは、山盛りの黄金というよりは、ゴールデンマン。そして、エイミイは人形から人間に戻ろうとしています。しかし彼女の目玉(青いボタン)は大きな魚の胃袋の中。これは大変です。
 脅迫によって船に乗り込んだオニババの正体は? ゴールデンマンは、まさか、あの人? 追跡の途中ではぐれた海賊はいつ襲ってくる? ただの冒険小説としても楽しめます。とっても楽しめます。だけど、マザー・グースや聖書についての蘊蓄もまた楽しめます。こちらにはちょっと“勉強"が必要ですけど。600ページもの厚みがある本ですが、一気に読めます。子供のころに『ピーター・パン』や『宝島』が愉しめた人には絶対のお勧め。どうかお楽しみください。




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