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【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

簡易包装

2012-05-28 19:03:14 | Weblog

 デパートなどでの「過剰包装」(個別包装があって、それを箱に入れて、それを包み紙で包んでそれをさらに紙袋に入れる)が昔は新聞などでよく批判されていました。だから「簡易包装」推進運動も行なわれていましたが、「デパートの包装紙」「デパートの紙袋」に“意味”があるんだ、という反論もありましたっけ。
 ところで人間もいろいろ“包装”をしますね。お化粧とかファッションとか言いますが。あれも「簡易包装」をもっと推進するべきでしょうか?

【ただいま読書中】『田中慎弥の掌劇場』田中慎弥 著、 毎日新聞社、2012年、1200円(税別)

 3~4ページのショートショートが37編集められた本です。タイトルから「もしかしたら川端康成(掌の小説)を連想させたいのかな」なんて思いましたが、著者が川端康成を志向するわけはない、と考え直します。次に「ショートショートと言えば星新一だよなあ」と。つぎに「衝撃場」のもじりなのかもしれない、なんてことも思いつきます。
 でも、読む前からごちゃごちゃ考えても仕方ありません。とりあえず数編読んでみましょう。
 ……
 ふうむ、やはり川端康成でも星新一でもありませんでした。複数の作品を無理に十把一絡げにする必要はありませんが、共通して私が感じるのは「胸の中のざわざわ」です。「本当は残酷なグリム童話」と言うか「お子様向けになる前の原始状態のおとぎ話」とでも言うか……計算されたものかそれとも素なのかは私にはわかりませんが、荒々しさを秘めた言葉の力で、私の心に「ざわざわ」が起きるのです。たとえば『うどんにしよう』。家族が皆出かけた日曜日。テレビで大リーグを見、昼飯に冷凍のうどんでも、という男の「日常」をやや感情過多気味に描いただけの作品ですが、たった一つの単語によって「日常」がぎしりと裂け「ざわざわ」が私の全身を駆けめぐります。『宇宙の起源』では、眠っていた太陽が縄をかけて引きずり上げられてしまいます。神話の世界ですか? そしてその太陽が照らすのは「浜辺に打ち上げられた巨人」ではなくて「海峡にはまりこんだ巨大な鯨」。いやもう、強引というか破天荒というか、でも面白い。
 いかにも純文学というか私小説風の作品もありますが、それも私が読むと「ジュンブンガクのパロディ」に思えてしまいます。もっと素直に読んだ方が良いのかもしれませんけれどね、著者自身、『感謝』でセルフパロディを楽しんでいますから、きっと「それでいいのだ」ではないかな。




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