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【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

ロスジェネも高齢化する

2021-05-16 07:36:32 | Weblog

 1990年代半ばから2000年代半ばまで、就職氷河期に社会に出た氷河期世代「ロスト・ジェネレーション」の多くは「規制緩和」によって多業種で解禁された派遣労働・非正規雇用に就きました。この世代が高齢者となる2040年頃、日本社会の持続可能性さえ危機に瀕する「2040年問題」が発生することが確実視されています。あと20年でその対策を立てておかなければならないはずですが、50年前にすでに指摘されていた現在の少子高齢社会に対する政府の無策・無能ぶりを思うと、20年後のことは真剣に心配です。その時私はもう生きていないかもしれませんが、それでも心配です。

【ただいま読書中】『老後レス社会 ──死ぬまで働かないと生活できない時代』朝日新聞特別取材班 著、 祥伝社(祥伝社新書622)、2021年、880円(税別)

 まず登場するのは警備会社です。工事現場やパチンコ店の駐車場などで車の誘導をしたりする仕事ですが、驚くほど高齢者が多く就職しています。皆さんそれぞれの人生を生き、そして仕事をしなければならない事情を抱えています。
 高度成長期の日本は「一億総中流」でしたが、「政府は会社を支える」「会社が会社員の福利厚生をおこなう」という“護送船団方式”で日本社会は運営されていて、そこからの落ちこぼれる人たちだけが公金を投入した医療制度や年金制度の対象となり、結果として社会福祉の予算は異常なくらい抑制されていました。ところがその「日本方式」はもう立ちいかなくなっていて、だから「一億総活躍」「女性の活用」などが謳われるようになっています。ただ、「歳を取っても元気だから働きたい、という意欲を生かす“老後レス”社会」なのか「生活の保障がないため、いつまでも働かないといけないという“人生レス”社会」なのか、を区別する必要があるでしょう。
 「自己責任」という言葉があります。ロスジェネ世代も「自己責任」という言葉で括られる傾向があります。しかし「特定の世代だけ就職で不利を蒙る」場合、それは「自己責任」なのでしょうか? こういった場合必ず「成功した人もいる。だから失敗した人には努力が足りない」という“反論”が来るのですが、個別例をもってして全体を語るのはとっても危険な態度だ、と私は思っています。母集団が十分大きければ、「自分の主張に見合った個別例」を発見することは容易ですから。だけどその態度では「社会」や「世界」を論じることはできないんですよね。サッチャーさんのように「社会は存在しない」と断言するのだったら別ですが。
 先日読んだ『データで読み解く「生涯独身」社会』と本書は、「日本の問題点」の点で重なる部分がとても多いように私は感じました。20世紀に生きていた人間は、こんな「21世紀の日本」になると、誰が予想したでしょう? これが「明るい未来」でしたっけ?

 



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