【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

シンプルが好き

2012-03-10 18:46:54 | Weblog

 ケータイで撮った写真をそのままファックスするソフトはありそうですが(調べていません)、いっそ家庭のプリンターに直接送信できたら便利でしょう。スキャナーがわりにも使えますから。いや、年を取ったせいか、最近パソコンを経由するのが面倒に思えてしかたないんです。

【ただいま読書中】『富士見の謎』田代博 著、 祥伝社、2011年、800円(税別)

 富士山が見える都府県は、理論的には実は20もあります。地球の湾曲によって富士山は沈み込んでいきますが、見る側に高い山があったらそこに登れば富士山が「地平線の向こう」でも見えますし、「大気差(大気の密度の違いによる光の屈折)」の影響もあります。それらを勘案して著者は「富士可視マップ」を作成しました。
 いやもう、いろんなことを思いつく人がいるものだと、私は感心するのに忙しい思いです。
 著者がすごいのは、実際に地図で「ここから見えるはず」と表示された地点を訪れまくっています。フルタイムの仕事をしているのに、この行動力には感心します(さすがに「ここには行きたいのに」と心残りの地点も多いそうですが)。
 東京都は、地形的には大体どこでも富士見が可能です。邪魔をするのは、樹木や建物。(ちなみに、富士見ができる最南端は、東京都の八丈島です) 山手線内に「富士見坂」は18ありますが、そこから実際に富士見ができるのは現在は2箇所だけだそうです。「富士を見ること」よりも大切なものが現代社会には満ちあふれているんですね。
 「ダイヤモンド富士(富士山にかかる太陽がダイヤモンドのように輝いて見える)」「パール富士(富士山に満月がかかっている)」「トンネル富士(トンネルや鳥居などの“穴”を通して富士山を見る)」といった“専門用語”が次々出てきます。それぞれの写真もいろいろ載っていますが、本書のサイズ(新書)がうらめしい。
 なお、「ダイヤモンド富士」で最遠方からの写真は、奈良県の大峰山からのものだそうです。距離は283km。理論的な「富士見の最遠地」は和歌山県那智山周辺の小麦峠(現在は色川富士見峠)ですが、ちゃんと証拠写真も撮られました。距離はなんと322.9km。そもそも300km向こうの山の写真を撮ろうなんて思います?
 本書の第3章は、北斎の「冨嶽三十六景」の分析です。どこから描いたのか、描かれているのは本当に富士か、などの謎を、デジタル技術を駆使して解明しようとしています。富士の形や光の当たり方などを手がかりに、描画地点を推理しそこからの富士見をCGで再現してもとの絵と比較しています。
 もちろん「富士山」そのものは大切な存在ですが、日本人にとっては昔から「富士見」という行為が大切なものだったんだなあ、と思えました。私も150kmくらい離れたところのビルから遠望した富士山の姿や、鎌倉あたりを自転車で走っていて岬を回った瞬間に正面にどんと富士が見えたときの衝撃を、30年以上経った今でもしっかり覚えています。印象的な独立峰ですからねえ、日本人には「富士見」は大切な体験なのでしょう。外国でもたとえば「キリマンジャロ見」なんてことは行なわれているのかな?




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