【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

見ているだけ

2021-04-17 07:07:53 | Weblog

 昔の小話です。駅で汽車を待っている人が便所に行きたくなって、そこにいる人に「すみません、すぐ戻るのでちょっと荷物を見ててください」と頼んでベンチに荷物を置いたまま行って帰ると荷物がなくなっている。「ああ、誰かが持っていったよ」とベンチの人が言うから「見ててくださいと頼んだでしょう?」と怒ると「だから見てたよ」。「見ててください」を文字通り受け取って「見ているだけ」だった。
 現在のコロナ禍で政治家が「緊張感を持って注視する」とよく言いますが、これも結局「見ているだけ」ではないかな? 常に後手後手ですから。昔のニッセンのテレビCMで「見てるだけ〜」というのがありましたが、あちらの方が買う気満々で“現場”に出かけてきちんと調べているから、政治家の無気力な「見〜て〜る〜だ〜け〜」よりはるかにマシかも。

【ただいま読書中】『文章の問題地図 ──「で、どこから変える?」 伝わらない、時間ばかりかかる書き方』上阪徹 著、 技術評論社、2020年、1480円(税別)

 ビジネス場面で「文章を書くこと」で苦労している人が多いそうです。著者自身もそれほど文章を書くことは得意ではないけれど、いくつかのポイントを押さえたら、すらすらと文章が(たとえば本書一冊が)書けるようになったそうです。
 「すらすら書けなくて苦労する人」の特徴は「最初から完璧を目指す」「何もかも自分の頭から絞り出そうとする」「構成を明確にする前に書き始める」「長さにひるんでしまう」「敬語にこだわる」などだそうです。
 たとえば「講演の感想文」。ここで「感想」だけを書こうとしたら、それは困難でしょう。だけど「素材(その講演で講師がどんなことを言ったか)」とそれに対する「感想」を並べるのはそれほど困難ではないはず。ただ、講演会で「メモ」を取っておく必要があります。それも「素材」と「感想」の両方を。これ、私はふだんからやってますが、慣れると「素材」だけメモしておいても、あとでそれに目を通したときにそこで自分が抱いた「感想」も芋づる式に出てくるようになります。たまーに「この時自分は何を考えたっけ?」と茫然とする場合もありますが。
 構成もあらかじめ考えておく必要があります。著者のお勧めは「箇条書き」。何を書くかをまずざっと箇条書きで書き出しておいて、その後順番を入れ替えていくやり方です。アナログ時代に私はカード(単語カードや京大式カード)でやってました。カード一枚に一つの素材を書いて目の前にずらりとカードを並べてから順番をいろいろいじくっていくやり方です。デジタル時代になってからは、コンピューター画面で素材の入れ替えはとても楽にできるようになりましたから、最初からエディター画面に箇条書きをしていきます。
 目標とする「お手本」を具体的に持つこと、「書くトレーニング」の前に良い文章をたくさん読むこと、など、著者の提案は極めて基礎的で具体的で有用なものばかりです。たぶんほとんどの人に実行可能なものばかり。だったら、あとは「やる」だけですね。

 



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