【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

相続問題

2021-04-16 08:27:59 | Weblog

 親が死ぬ少し前、私は「露骨に聞くけど、もし死んでしまったら、財産をどう分けて欲しいと思ってる?」と尋ねました。すると親は顔色も変えず「家は○○に、現金は××に」とすらすら答え、言ったことをそのまま紙に書いて「頼むわ」と。法的な要件を満たしてはいませんから正式な遺言状ではありませんが、お葬式の後で「遺志はこう」と言うとそれで相続トラブルは一切起きませんでした。
 これは人徳、と言うよりは、遺産がとても少なかったから、が主な原因でしょうけれど。

【ただいま読書中】『親の家のたたみ方』三星雅人 著、 講談社(+α新書)、2015年、840円(税別)

 「親が死んで、どこに何がどのくらいあるのかわからず、苦労した」という話はよく聞きます。しかし親が生きている内に突然相続の話を持ち出すと、親は警戒します。財産を狙っているのか、と。あるいは、親が早く死ぬことを願っているのか、と捉える人もいます。
 そこでまず必要なのは「親とのコミュニケーション」、特に必要なのは「傾聴」と著者は述べます。それができていないと、結局親が死んでから子供が困ることになるだけ。コミュニケーションが確立したら、次は「データ」です。資産価値、土地の境界の確認、負債の有無など。さらに相続の「関係者」を特定する作業も必要です。普段付き合っている「家族」だけとは限らない場合があるので、正確に事態を把握する必要があるのです。
 また、「とりあえず共同名義にしておいて」などと問題解決を先送りすると、「次の相続で相続人が増える」「相続人の中に認知症の人がいると遺産分割協議が難しくなる」「人口減少で、不動産の処分が困難になる」「政府・日銀の脱デフレ政策で、土地の評価額が高くなる(相続税が増える)」などの可能性が生じてしまいます。
 日本の人口は減っています。しかし住宅の新規供給は続いています。その結果が「空き家の急増」です。それが多く見られるのは山間地ですが、実は都会の真ん中でもその現象はすでに始まっています。東京都内でも「巣鴨化」が各地で始まっている、と著者は指摘します。賃貸だったら家賃を下げたら埋まる可能性があります。問題は、一戸建ての空き家です。
 もしも遠隔地の空き家を管理しなければならなくなったら、お金で解決する手もあります。空き家管理サービス・ホームヘルパー・警備会社など探せば選択肢はけっこうあります。お金と言えば、空き家でも公共料金の契約をしていたらお金がかかります。電気は最低アンペア、ガスは止めるなどの工夫が必要でしょう(NHKは、たとえ空き家でもそこにテレビがあったら受信料を要求するのかな?)。
 建物を解体するにしても貸すにしても、「家財の片付け」を避けて通るわけにはいきません。そこでは「きょうだいでの意思疎通」が重要になります。
 様々な状況を想定して、きわめて具体的に書かれた“指南書”です。「親は元気だし、実家に戻るつもりもないから、自分には関係ない」と思う人でも法律は見逃してはくれません。親の死で慌てふためかないように、あらかじめ“予習”しておくことをお勧めします。

 



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