今でも「伝統の巨人阪神戦」と本気で言う人って、います?
【ただいま読書中】『勝てる野球の統計学 ──セイバーメトリクス』鳥越規央・データスアジアム野球事業部 著、 岩波書店(岩波科学ライブラリー223)、2014年、1200円(税別)
先日読書記録に書いた『9回裏無死1塁でバントはするな ──野球解説は“ウソ”だらけ』と同じ著者なので、骨格はほぼ共通です。どちらか一冊を読むだけでもとりあえず「セイバーメトリクス」について知ることはできるでしょう。ただ、こちらでは新しい指標がいくつか紹介されています。
面白かったのは、2012年と13年、同じ三塁手の「宮本慎也(ヤクルト、ゴールデングラブ賞を10回受賞した名手)」と「堂林翔太(広島、2012年と13年のセリーグ失策王)の比較です。守備率で見ると明らかに宮本選手の方が“名手”です。さすがゴールデングラブ賞。ところがセイバーメトリクスの「UZR(守備範囲を加味して、平均的な三塁手に比較して何点の失点を防いだか、の指標)」を用いると、意外なことに堂林選手の方がチーム(の勝利)に貢献していることがわかります。堂林選手の方が守備範囲が広いため、宮本選手なら「楽々ヒット」の打球にも追いついてしまい、でもギリギリだから取り損ねてしまうと「エラー」がつけられる、というわけだったのです。
最近は少し話が変わってきていますね。守備範囲という点で、広島カープの菊池二塁手の守備範囲の広さが最近実況アナウンサーの口からも平気で出るようになってきました。「今のはエラーに見えますけど、普通の二塁手だったらそもそも追いついていないですよね」といった感じで。今はコンピューターで画面解析をして「守備範囲(追いついて球を処理した範囲)」が簡単に図示できますから、話は面白くなってきました。
UZRは計算が大変なので、簡略化された指標を使うなら(『9回裏無死1塁でバントはするな』にも出てきた)「RF」でしょう。これは簡単に言ったら「その人が1試合で稼いだアウトの数」です。「これは追いつけない」と早くあきらめる選手は「エラー」にはならないけれどRFも稼げないから、割と簡単に正しい評価ができそうです。
将来AIが進化し、球場にセンサーが張り巡らされたら、セイバーメトリクスがリアルタイムで様々な指標を評価できるようになるでしょう。そうしたら「MVP」の選出もAIでできるようになるはずですが、おそらくそれは、これまでの「人間が選出したMVP」とは違う人たちが選出されるようになるでしょう。そんな時代の野球を早く見たい気がしますが、これまでの“伝統”を重んじる人たちの抵抗はたぶん物凄いものになるでしょうね。
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