「Open sesame!(開けゴマ!)」って、とんでもない要求だと思います。だってあんなに小さい粒を一つ一つ開くって、ものすごく大変じゃないです?
【ただいま読書中】『最良の嘘の最後のひと言』河野裕 著、 東京創元社(創元推理文庫Mこ61)、2017年、680円(税別)
世界的な大企業「ハルウィン」は「超能力者を一人採用する」と告知、応募した2万の中から面接に進んだのは126人と3匹。そして最終試験に残ったのは7人。最終試験の内容は、3月31日18時〜24時の6時間の間に、受験番号1番の人が持っている一通しかない採用通知書を奪い取って担当者に渡すこと(1番の人はそれを奪われないように持ち続ける、奪われたら取り返すこと)。
いやいや、ふざけた「採用試験」ですが、年収8000万円を65歳まで保証、と言われたら、それは参加したくなりません?
しかし、参加しているのは全員「超能力者」です。
ミステリーに超能力を入れたらアンフェアになる、というのがミステリーの常識ですが、本書では平気です。さらに全員が嘘つきで、さらに外部からこの試験に介入しようとする人たちまで登場します。話はややこしくなり、誰の言葉を信じたら良いのかわかりません。一人では不利だと協力を持ちかける相談があちこちで交わされますが、相手の言葉が信じるに足りる、という保証はありません。さらにこんなでたらめな試験を大まじめに実施するハルウィンの真の意図も不明です。
試験が佳境に入った頃、「最良の嘘」とは何だ?という謎かけがあります。これだけ嘘が満ちている状況で、もっとも優れていてもっとも強い嘘のことです。
しかし、他の人がどんな超能力を持っているかがわかっていて、その上で自分がどのような嘘をつけば一番有利になるか考える、という展開は、結局ミステリーの「フェアさ」を確保しているようにも見えます。段々話がややこしくなってきて、さらにあとからあとから「嘘」が登場して、さらには(犯罪は厳禁だったはずなのに)死人はでるわ三人称が突然一人称になるわ、もうなにがなんだか。それでも最後にちゃんと話は落ちつくべき所に落ちつくのですから、いやあ楽しい読書の時間を過ごせました。
あ、「最良の嘘」の「最後のひと言」、私はこれに大賛成です。人生はかくありたい。
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