【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

フェア・トレード

2011-02-16 19:11:10 | Weblog
この前ラジオで「コート・ジボアールのカカオ豆のフェア・トレード」の話題を話していました。持続可能な生産を確保するため、子供労働などの搾取を防止するために、フェア・トレードが役立っている、ということですが、それを聞いていて気になったのが、私たちが食べるチョコレートに必要なのはカカオ豆だけではないこと。砂糖やミルクなどについても「フェア・トレード」が必要ではないのかな、と考えていて、連想はさらに広がりました。日本の農民がこれまでの歴史で経済的に「フェア」に扱われていたことがどのくらいあったっけ?と。

【ただいま読書中】『チャイナ・フリー ──中国製品なしの1年間』サラ・ボンジョルニ 著、 雨宮寛/今井章子 訳、 東洋経済新聞社、2008年、1800円(税別)

2004年のクリスマス、集まったプレゼントを著者は分類してみて、その過半数が「Made in China」であることに気づきました。一種の“冒険”(あるいは実験)として、著者は「これから1年間『Made in China』の製品を一切家に新しく入れない」ことを家族に提案します。
著者は別に「反中国」ではありません。その祖先の一人(3世紀前にドイツにたどり着いた人)が中国人であることをきっちり意識しています。ただ、アメリカにあまりに安い中国製品が満ちあふれていることに行動で“異議”をとなえたくなっただけ。
事態は静かに難航します。「Made in USA」しか売らないと宣言している通信販売サイトが実は嘘を言っていたり、箱に「Made in USA」と書いてあっても中の製品は「Made in China」だったり。あるいは、中の部品の一部が中国製だったり(著者の“先達”は、アメリカ製のゲーム「モノポリー」を買ったら、さいころが「Made in China」だったので返品した経験を持っていました)。著者は熟考し、ルールを定めます。「避けるのは“Made in China”の表示だけ」と。
「ハードル」は下がりましたが、それでも大変です。量販店に山積みになっている安い商品は基本的に中国製ばかりです。子供のおもちゃは当然、子供のスニーカーを探して著者は愕然となります。中国製以外見つからないのですから。見つからない物はまだまだあります。コーヒーメイカー、サングラス、ランプ、プリンターのインクカートリッジ、ホチキスの針、そしてレゴまでも。
著者をストレスやトラブルがつぎつぎ襲いますが、問題は物だけではありません。「中国製品を買う(売る)アメリカ人」が著者の回りに充満しています。当然著者一家の“プロジェクト”は、人間関係にまで影響を与えるのです。そして家族の間もぎくしゃくしてきます。生活がどんどん不便になって夫は不機嫌となり、小さな子供は店に行くと商品の箱をひっくり返して「ちゅーごく」とつぶやきます。著者はあせります。「中国製品に支配された消費生活に異議を申し立てること」と「中国(中国人、中国という国)を嫌悪すること」とは違うのですから。
ネットで「ボイコット 中国」で見つかるサイトと「ボイコット フランス」(「フリーダムフライ」の時期でしたね)で見つかるサイトとの比較検証もありますが、ここは素直に笑って次に行きましょう。
楽しい行事であるべき、誕生日・独立記念日・ハロウィーン・クリスマス……店頭に並んでいるすべての「物」はほぼ中国製です。子供は泣きます。著者も泣きたくなります。
やっと「新年の誓い」の期限である1年間が過ぎたとき、中国製品ボイコットを続けるかどうか著者夫婦は話し合いをします。そこで出た結論は……
著者一家のこの“実験”は、グローバル化した世界経済の“現実”を発見する旅でした。店頭の商品がどんどん中国製に置き換えられていったら、それまでその製品を作っていた人たちはどこに行くのか、中国製の商品を買うことで中国の労働者は豊かになるのか、中国製品なしで平均的なアメリカ人の生活は成り立つのか……さまざまなものを考えさせられます。本書に「反中国」の“スローガン”は期待しないで下さい。中立的な心と穏やかな態度で書かれた「中国製品ボイコット」の記録ですから。
そうそう、日本人として残念だったのは、本書に日本製品がほとんど登場しなかったことでした。トヨタ車とプリンターのインクと……あと何かあったかな? 日本製品って、アメリカではそんなに影が薄いのかしら。



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