【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

新世紀

2010-11-28 18:43:04 | Weblog
もうずいぶん昔のことなのでほとんど忘れてしまいましたが、私が子どもの頃に思っていた「21世紀の日本」は、少なくとも「皆が携帯を持って、ユニクロに買い物に行く」世界ではなかったはずです。

【ただいま読書中】『スラン』A・E・ヴァン・ヴォクト 著、 浅倉久志 訳、 早川書房、1977年

外見は「人間」にそっくりだけれど超能力を持つ「スラン」は、人類の敵として狩られていました。9歳のジョミーも、1万ドルの賞金をかけられて一人都会の裏道を逃げまどっていました。
人間の中には例によって対立があります。おなじみのものに加えて、スランに対しての態度でも、強硬派と穏健派で深刻な対立をしています。ところが「反スラン教育」が行き届きすぎてしまって、隠れているスランが持っている超科学技術を利用しようにもスランと接触することさえできないのが、穏健派の悩みの種です。ではスランの側は……実はこちらにも対立が内包されていました。純スランと不完全なスランの間に深刻な対立(出会った瞬間に殺し合い)があったのです。
そういった複雑な状況の中、ジョミーは生き残るために命を賭けて走り続けることで逃亡生活を続けます。やっと見つけた純スランの少女キャスリーンは、会えて二人の魂が結びつこうとした瞬間秘密警察に殺されてしまいます。
どうしてここまでスランは憎まれるのか、ジョミーは探ります。かつてあった大戦争。スランが人間の赤ん坊をさらって人体改造をしたという話。不完全なスランを「不完全である」ことを理由として虐殺したという話。しかし、ジョミーは納得がいきません。自分自身、および自分が知っている(ほんの数人ですが)スランの例から、スランがそのような冷血漢であるとは思えないのです。
舞台は宇宙へ、そしてまた地球へ。過去へ、そして未来へ。ヴォクトならではのストーリー展開が読者を振り回します。本書を初めて読んだときに感じたワクワクする躍動感が蘇りました。小さな破綻は無視して、強引にストーリーを進めていく著者の力業をただ楽しみましょう。


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