【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

輪行

2021-04-24 07:15:14 | Weblog

 先日読書した『はじめよう!ソロキャンプ』(森風美)に「電車(や飛行機)に乗ってソロキャンプ」という話がありましたが、「電車に乗って自転車旅行」もあります。それが「輪行」です。自転車大国のオランダでは自転車を丸ごと持ち込める電車もあるそうですが、日本ではまだそれは難しいので、自転車をバラして袋に詰め込んで「手荷物」として持ち込みます。バラしやすくなっている専用の自転車もあります。昭和五十年代に私が輪行をしていたときに夜行列車に乗るとよく輪行袋にしまわれた自転車がデッキや通路に置いてあって「お、仲間かな」と思っていましたが、実はそのほとんどは競輪選手のものだったのかもしれません。

【ただいま読書中】『はじめての輪行』内藤孝宏 著、 洋泉社、2016年、1500円(税別)

 乗っていたママチャリが壊れたためにたまたま折りたたみ式の自転車を手に入れた著者は、「自転車に乗る」ことに取り組んでみます。はじめは「東京マラソン」の翌日に同じコースを走ってみる。時速20kmで走れば2時間じゃないか、と甘く見てスタートした著者は、すぐに現実の厳しさを嫌と言うほど味わうことになります。実にとぼけた口調で明るく語ってはいますが、乳酸がたまった筋肉の痛みは、文字通り痛切だったことでしょう。
 そして次はついに富士急行での「輪行」で、富士五湖巡り(正確には、日帰りで四湖を半周)です。自転車初心者が手探りでその魅力を味わおうとする点に、私はかつての自分の姿を重ねてしまいます。私自身も「まず走ってみよう」で特に指導者や仲間なしで輪行を始めましたから。
 自転車で一番爽快感を味わえるのは、ダウンヒルです。地球の重力と地面の傾斜に己のすべてをゆだねて空気を切り裂いていくときの解放感は、他の乗り物では味わえません(不思議なことに、同じ二輪なのにオートバイでのダウンヒルは、自転車とはまったく別の感覚になります。エンジン音や振動があるか無いか、が大きな要因かな。スキーでの滑降が感覚は近いかもしれません)。そこで著者は「日本でいちばん長い下り坂」を求めて八ヶ岳に出かけます。しんどい上りは鉄道に任せ、そこで自転車を準備して美味しい下り坂だけ味わおう、と。
 京都観光でも、自転車が活躍します。レンタルでも良いとは思うのですが、著者は輪行を決行。乗り慣れた自転車に乗れるし、レンタルが「予約で一杯です」と借りることができない、なんて事態にも遭わない、と言っていますが、やっぱりレンタル自転車でも良いのではないかなあ。
 そしてついに“聖地”しまなみ海道。私はレンタル自転車で走りましたが、輪行ですか。八王子からは遠いのに、すごいなあ。一泊二日でしまなみ海道をしゃぶり尽くして、尾道からは自転車だけ宅急便で自宅へ。ああ、こんな「輪行」もあるんですね。楽しそうだなあ。上り坂がないのだったら、私もまたやってみたい。