一顆明珠~住職の記録~

尽十方世界一顆明珠。日々これ修行です。いち住職の気ままなブログ。ときどき真面目です。

リアル中国 『あの子を探して』

2007年04月23日 | 映画
あの子を探して

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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<あらすじ>
中国の農村の小学校の代用教員になった13歳の少女ウェイは、生徒が誰ひとり学校を辞めなかったらもらえるという褒賞金を目当てに、授業もそっちのけでひたすら生徒たちの監視を続けていく。そんなある日、クラス一の腕白少年チャンが、出稼ぎにいった町で迷子になってしまった。ウェイはチャンを探しに町へ赴くのだが…。
(アマゾンより引用)

ん~いろんな意味でショックでした・・・この映画。
え、これ映画?っていうくらい、子どもたちの演技が自然で、ドキュメンタリーを観ているような錯覚に陥ります。
あまりにも素朴なので観ていて清々しい気持ちになる。
日本だと子役の演技は妙にわざとらしいことがあるけど、この子達の演技ときたら・・・「君たち、そのまんまでしょ?」って感じで。
子どもの表情が素直で本当に可愛い。
どこの国の子どもも可愛いんだなぁ~と妙に感心してしまいました(当たり前だけど)。

現代中国の農村の現状をリアルに描いています。
とことん貧しい・・・。
街と農村の信じられない格差。
小学校の教室も黒板もボロボロ。
チョーク1本でさえ貴重。
薄汚れた子どもたちの服。
バス運賃の数十元を集めるのに必死・・・。
生まれて初めて飲むコーラ(しかも一口づつみんなで回し飲み)。
これが、経済発展の情報に隠れて我々には見えてこない普通のリアルな中国の状況なのでしょう。

中国ではタフでないと生きていけないということを痛感しました。
主人公の代用教員の13歳の女の子が半端なくタフなんです。
この子の自己主張の強さと言ったらない・・・。
大人相手に絶対引かないし、全く相手の話を聴いてないし・・・。
中国では、どれだけ理不尽な要求でも、自分の主張を通した方が勝ちという価値観が如実に表れていました。
あらゆる手段を使ってでも、街で迷子になっている生徒を探そうとする執念。
客が食べ残した残飯を隠れて食べてでも、その子を探すためには絶対に諦めない根性。
子供同士であっても利のためには冷徹な駆け引きさえ辞さない・・・。
強靭な生命力に溢れていました。
この映画から日本人とは異なる中国人の強烈なメンタリティーを伺うことができます。
育ちのいいわれわれ日本人は、中国に行ったら間違いなく食い物にされてしまうでしょうね・・・。

はじめはお金欲しさに生徒を探していた彼女が、次第にその子を本心から心配するようになる。
ここにこの作品の救いがあるように思います。
とにかく、子どもたちみんなが、生きることにひたむきでグッときます・・・。

この作品では、打算的で、狡猾で、冷徹な中国人の姿と同時に、人情に熱い、まごころ深い、温かい中国人の姿が描かれています。
中国人のこの極めてアンビヴァレンスなメンタリティ。
彼らは日本人とは比較にならないくらい、感情の針の振れが激しいのかもしれません。
リアルな中国を知りたい方、子どもが好きな方、教育の仕事に携わる方には、絶対にお勧めの作品です。

この作品にはなんの衒いも虚飾もない。
だからこそ、現代中国の歪んだ現状を暗に批判することに成功しているようにも思います。見かけ上は国策映画を装いながら・・・。

チャン・イーモウ監督は偉大です。

しかし中国映画って・・・すごい・・・。

5段階評価・・・


<追記小話>

中国では13歳の代用教員の女の子でも「老師(ラオシィ)」と呼ばれます。
主人公の女の子は魏老師(ウェイラオシィ)と呼ばれていました。
わが曹洞宗でも、曹洞宗侶の住職のことを一般に「○○(姓)老師」と称することが多いです。
私もこの若さですが…私宛の手紙には、敬称に「老師」と書かれて送られてきます。もっとも、ふだん仲間内のお坊様からは、名前に「さん」づけで呼ばれていますが。

ただし、同じ禅宗でも臨済宗では「老師」という呼称は、高位のお師家さん(禅の指導者)にしか用いないとのこと、臨済宗円覚寺派の和尚さまから聞きました。



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