一顆明珠~住職の記録~

尽十方世界一顆明珠。日々これ修行です。いち住職の気ままなブログ。ときどき真面目です。

夢をかなえるゾウ

2014年06月30日 | 


学生の頃から成功哲学の本を読みあさるものの、実行に移せたためしがないイタイ自分ですが・・・(^_^;)

オモロイよこれ!(笑)

ここで説かれている成功メソッドは、どれもどこかで読んだことがあるような内容だけど、関西弁のインチキくさい神さま(ガネーシャ)が、主人公に課題を与えていくという小説スタイルが斬新でユニーク!

ガネーシャのキャラが強烈すぎて、ついつい読んでいて笑ってしまう^^

とはいえ単なる自己啓発のハウツー本に陥らない、軽薄なユーモアの裏に、人生哲学的な深さも持ち合わせているから、まさにこの本は「あなどれない」のである。


~ネタバレ注意(最後のシーン)~


「成功しても、成功せんでも、気張って目標に向かって努力しても、ついに誘惑に負けて寝てしもても、ワシ、自分(お前)のこと好きやで。~略~」

「成功だけが人生やないし、理想の自分あきらめるのも人生やない。ぎょうさん笑うて、バカみたいに泣いて、死ぬほど幸福な日も、笑えるくらい不幸な日も、世界を閉じたくなるようなつらい日も、涙が出るような美しい景色も、全部全部、自分らが味わえるために、この世界創ったんやからな」


そしてガネーシャは言った。


 「世界を楽しんでや。心ゆくまで」




そう言ってガネーシャは消えていくのでした。

グッときました・・・

市塵(上・下)

2014年06月15日 | 


ちょっと前に読了した、藤沢周平「市塵(上下)」。

貧しい浪人儒者から立身出世し、
時の将軍、家宣の絶大な信頼を得て「正徳の治」と呼ばれる幕政改革に努めた、新井白石。

朝鮮使節待遇の改定、貨幣改鋳、武家諸法度改定など、次々と改革を推し進めるも、家宣が薨去し吉宗の代になって遠ざけられて失脚し、市中の人に戻っていく・・・。

貨幣改鋳については、経済学的に評価の分かれるところですが、
横行していた収賄や汚職を廃すための勘定吟味役の設置は、高く評価できると思います。

また、痛快だったのは、上から目線でいちいち難癖をつけてくる朝鮮使節に対して、彼我対等に徹し、一歩も引かない毅然とした白石の姿勢です。
しかしだからと言って、朝鮮使節を軽んじることなく、客人として真心を込めてもてなす誠実の人、白石。

そしてイタリア人宣教師シドッチとの対話。
子どものような好奇心で、シドッチから貪欲に西欧の知識を吸収し、それが後に「西洋紀聞」としてまとめられます。

とにかく博覧強記で著作も膨大。漢詩でも当代第一人者。

儒者でありながら観念に縛られず、使ってこその学問だという現実主義者。ときどき出てしまう人間くさいとこも可愛らしい(笑)

そして何より、国を動かすほどの実権を持ちながら、私利私欲を求めず、真摯に誠実に生きた生涯に脱帽です。

うちの寺(龍寳寺)のある玉縄植木が、白石公の知行地であったことを誇りに思います。



写真は玉縄小学校の校歌にも歌われている当寺の新井白石公ゆかりの石碑。

拙文を最後まで読んでくださった方ありがとうございました!

P.S.市塵には書かれていませんが、白石が皇位断絶にならないために創設した新しい宮家、閑院宮家は、今上天皇の系統です。天皇家にとって、いや日本にとって大恩人かも・・・