一顆明珠~住職の記録~

尽十方世界一顆明珠。日々これ修行です。いち住職の気ままなブログ。ときどき真面目です。

宮本輝 『錦繍』の舞台化

2007年07月08日 | アート
私の中の恋愛小説、間違いなく3本の指に入るであろう、宮本輝の『錦繍』が舞台化されるとのこと。

http://www.horipro.co.jp/ticket/kouen.cgi?Detail=91

学生時代にこの本を読んで、一週間くらいは余韻に浸っていた・・・というか感動のあまり極度の脱力感に陥っていたように記憶している。。。

この小説は往復書簡という特殊な形態をとっている。

これでもかというくらい、人と人の思い、愛、情念が手紙に塗り込められていく。

それらはあたかも鮮やかな錦の織物のように・・・紡がれていくのだ。

主演は鹿賀丈史と余貴美子。

どちらもいい感じ。

特に余貴美子は雰囲気があって好きな女優。

しかし、公演期間はいっちばんお寺が大変な時期なんだけどな・・・

どうしよ・・・


余談だが、この作品を書いた当時、著者宮本輝は34歳だったとのこと。

え、俺と同い年じゃん・・・。

その歳にしてこれほどの作品を書き上げていたなんて。。。

ちなみに、本書をきっかけとして、宮本作品のディープな大阪ワールドに関心を持つようになった。


<過去記事>
※大阪愚考


ベルギー王立美術館展

2006年12月06日 | アート
先日の日曜日、仏像展の後に国立西洋美術館で開かれていた「ベルギー王立美術館展」を観ました。

3日経ってしまいましたが、備忘録のつもりで記事にしておきます。

当初は「ダリ回顧展」の方に行く気マンマンでしたが、現地で悩み、結局、ベルギー王立美術館収蔵の巨匠たちの絵を観る方を取りました。

私の中での「ダリVS巨匠たち」の対決は、巨匠たちの勝ち。

巨匠と言うのは、古典から近代までの巨匠、ブリューゲル、ルーベンス、マグリット、デルヴォーたちです。

もっとも、マグリットとデルヴォーはたんに巨匠と言うよりは、個性的なシュルレアリストの画家というイメージですが・・・。

ほかにもヨルダーンスとか、アンソールとか有名どころもちらほら。

感想。

仏像展で体力、感動力を使い切ってしまったのか、いまひとつでした・・・。

ゆっくり観れば、感動も伝わってきましょうが、やはりこの美術展も、ものすごい人いきれ・・・。

回っていてクタクタになってしまいました。


とは言え、やはり観てよかったです。

この美術展の目玉、ブリューゲルの『イカロスの墜落』は確かに受けました(笑)

主題であるはずのイカロスは、キャンバスの右下方に、海に溺れてもがいている手足が見えるだけ。

しかも、めちゃちっちゃい・・・。

牧歌的な風景の中では、かの有名な神話のハプニングも、どこまでものどかです。


ルーベンスは、やはりパワフルでした。

作品全般にガツンと来る強い力を感じます。

そういえば、余談ですが「フランダースの犬」のイエス様の絵もルーベンスですね・・・(泣)


しかし、一番期待していた、マグリットとデルヴォーが展示の最後にほんの数点しかなかったのが残念でした・・・。

マグリットは学生時代、新宿伊勢丹のマグリット展に行って以来の再会です。

有名な『光の帝国』が展示されてました。

ん~相変わらずシュールですな・・・。

眺めていると妙な脱力感を感じます・・・。

デルヴォーは好きな作品のひとつ『夜汽車』が展示されていました。

なまのデルヴォーとは、はじめての対面。

ですが、やはり芸術鑑賞にも体力はいるようで、疲れて感動もいまひとつ。

デルヴォー得意のエロスの夢をモチーフにした絵がなかったのも残念でした・・・。


ともあれ、久しぶりの芸術鑑賞。

滅多に出会えない作品を観られてよかったです。

何気なく観ている絵は、どれも歴史的な名画。

これはすごいことだと思います。

心の引き出しにしまっておくとしましょう。


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エロスの夢

2006年08月08日 | アート
ポール・デルヴォー 〔骰子の7の目 シュルレアリスムと画家叢書〕

河出書房新社

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魂が震えるというほどではないが、デルヴォーの絵は私の心の深層の一部分に、ある種の確かなインパクトを与えてやまない。

それは瞬間的に心の内奥をフリーズさせるような衝撃。

同時に居心地が良いような悪いような、ソワソワとした落ち着かない気持ちにさせる。

彼の描く裸の女性たちは、すべてを受容するかのように惜しげもなく美しい肢体をさらけ出す。

完全に無防備である。

だが、彼女たちの表情からは感情を読むことができない。

無色透明。

無機質。

無抵抗でありつつ、ほのかに誘う。

永遠に時が止まった空間において彼女たちは体温のない冷たいエロスを発散させている。

果てしなく沈黙する、スタティックなエロスの世界。

シュルレアリスムを含んで超えた、デルヴォー独自の芸術表現がそこにある。


教父聖アウグスティヌスさえもエロスの夢に悩まされたと聞く。

男性なら誰しも身に覚えのあること。

デルヴォーは、「エロスの夢」をテーマにすることで、深層意識へのインパクトを試みたと言っていいだろう。

だが、それはあくまで男性側の視点。

果たして彼の絵は女性にも理解しうるものなのだろうか・・・

余談だが、最近なにかにつけ「エロ」を付けたがる風潮のようだ・・・

「エロカッコイイ」とは倖田來未のこと。

「エロボ○ズ」と呼ばれないよう注意せねば・・・

いやすでに一部で言われてたりして・・・トホホ


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ヴィーゲラン

2005年11月17日 | アート
みなさん、「グスタフ・ヴィーゲラン(19世紀末~20世紀前半に活躍)」という、ノルウェイの彫刻家をご存知でしょうか?

私の好きな彫刻家です。

ノルウェイでは、国民的な彫刻家ですが、日本人には馴染みが薄いかもしれません。

私が、ヴィーゲランの作品に出会ったのは、ご縁があって本山出張所、鹿児島の寺(修行道場)に半年間滞在していたときでした。

鹿児島滞在中の思い出には、とても豊かなものがありますが、そのひとつがヴィーゲランとの出会いです。

寺の監寺(住職代理)をされていた故N老師は、大変人情味あふれる方で、修行期間といえども、鹿児島に来たご縁を無駄にしてはいけないという思いからか、あるいは良いものにはどんどん触れさせたいという老婆心からか、私たち修行僧をいろんなところに連れて行ってくださり、また多くの得がたい体験をさせてくださいました。

ヴィーゲランの美術展が、鹿児島市内で開かれていることを知ったN老師は、即座に「これは、大変なもんじゃよ、みんな一度見てきたらいいけん。行ってこんかい(確かこんな愛媛弁で…)」と言われました。

会場に入るなり、私に飛び込んできたのは、まさしく「人間」でした。
もちろん、いろんな彫刻家によって、「人間」はモチーフになっています。

しかし、ヴィーゲランの彫刻は、人間の、「生・老・病・死」の苦悩、愛と憎しみ、喜怒哀楽に伴う、美しさ、醜さを露骨に表現しつつ、人が「生きる」とはどういうことか?という強烈な問いを、私にぶつけてきました。

彫刻から、それほど強烈なメッセージをもらったのは初めてだったので、クラクラ眩暈がしたのを覚えています。

いつか、彼の彫刻が至るところに点在している、通称ヴィーゲラン公園こと、フログネル公園(首都オスロ市内)に行くのが私の夢です。

彼の作品を、ゆっくり観ながら「人が生きるとはどういうことか?」という果てしない問いを感じたい。

そして、私なりの問いに対する答えを、彼ら(彫刻)に向かって静かに語りかけたいと思います。

余談ですが、ノーベル平和賞のメダルはヴィーゲランが製作したものです。

トリビアとして使ってください(笑)

写真は「家族Ⅲ(1936年)」です。

追記:後で美術展の記念冊子を読んだら、ヴィーゲラン展の開催された場所は、宮崎県都城市でした。私の記憶違いでした。遠方までの他出を許してくださった、N老師の懐の深さに改めて感謝の念を抱きます。