消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(231) 新しい金融秩序への期待(176) システム崩壊を生み出したもの(9)

2009-10-20 12:44:42 | 野崎日記(新しい世界秩序)


質疑・討論

 提出された質問用紙は三十枚以上でした。本山先生は短い時間に、本当に情熱的に答えてくださり、参加者皆を鼓舞してくださる熱意のこもった質疑討論になりました。


 本山先生

 熱心に書いていただいてありがとうございました。項目ごとに分けてお話しようと思ったのですが、案の定みなさんの質問が多岐にわたっていて、分けることが不可能なので重複をいとわず、お一人当たり十秒くらいで話をさせていただきます。ものすごく、たくさんきていますので、それだけでも三十分くらい、かかるのではないかと思います。

質問1 天下国家を論じるのではなく、自分たちの身近にあることから始めようというその趣旨に異論はないが、天下国家を論じることと身近な問題を、対立的に考えるような発想を超えていかなければ、本当の世直し、世界直しはできないと考えています。天下国家のみを論ずる立場の人びとと、ある意味シングルイシューのタコツボのような運動のみに固執するような運動ともに、私はホンモノたり得ないと考える。この両者の間の乖離、断絶を超えてゆくにはどうしたらよいのでしょうか。

本山先生

 私が天下国家のことはほっといて身近なところからやれ、ということについてお叱りであります。天下国家のことが判った上で身近な事をやれということなのですが、敢えて反論させていただきます。

常民のことばで

  日本の左翼運動、市民運動が失敗したのは、常民に分かることばを運動家たち、とくにインテリの連中たちが、出さなかったからだと私は思っています。すくなくともふつうの日常会話で心に響くものをつくりだす義務があるのだと。そのためには柳田國男は嫌いだけど、柳田國男が言っている常民のことばを出す、今、運動が停滞しているように言いますけど、あらゆる私たちの発することばが上滑りだからなのです。心にずんと響くことばがありましたら、ワッと来ます。そういうものです。私は安保世代ですけど、全共闘時代に「何や、最近の若者は…」と言っていましたら、ワッときたのです。

 「大学解体!」と非常に分りやすいことばに多くの人が反応した。それまではなんで学生たちに左の連中がいじめられるかと不満に思っていました。あれが日本全体に響いたというのはことばということのもつ意味、「大学解体!」という言葉のとてつもなく大きい意味をボーンと出したから運動が起こったのです。いま、匹敵する判りやすい言葉が無いという、そういう意味で私は必死になって言葉を作ろうと思っています。ことばが一番大事な時期にいま入っている。お叱はよくわかるのです。地元の運動をしている方が天下国家をご存じないと。しかしいま必要なのは人々に響くことばが大事なのであって、帝国主義批判とか、スターリニズム批判とか、そういう言葉は飽き飽きした、生きていくあえぎを、きちんとした歴史に残ることばできちんと表す事、それが一番大事なのです。レーニンが成功したのは「パンをよこせ」、この一言だったのです。そういうことが大事だということを訴えておきたいと思います。がんばるつもりでおります。

質問2 米国の赤字はどのくらいあるか。ちなみに日本は千百兆円と言われるが。

本山先生

 間違ってもらってはいけないのですが、国家が破産するとか、地方財政が破産するとか、大阪府の橋下知事がそういうことを言うのですが、国家にしても、地方自治体にしても破産はしません。税金という担保をもっているからです。民間は負債で倒産します。国家は破産しない、ということを言っておきます。だから国家がどの程度赤字かということで恐怖心を抱いてはいけないのです。どれだけ無駄遣いをしているかをチェックしていくことが大事なのであって、橋下府政のように「このままいったら民間だったら倒産するのに」と、賃金カット、組合運動カットという形で、福祉・医療全てをカットして言ってそれが八十八%の支持率を得るのです。だから私たちは、「国家財政が赤字で、だから云々」と言われたら、「だからなんだ」と言わなければなりません。くだらん会計の仕方にチェックしていくということのほうが大事です。大体ETC(自動車料金収受システム)で喜んでいてはダメです。ETCで、どんな連中たちが儲けたかと。彼らは天下り団体なのですよ。そういうことに対して怒りを持たなくてはアカン。すくなくとも多くの人たちの発想が間違っている。ごめんなさい、挑戦的なことを申しました。私は赤字財政がどれだけか、というのは嫌いなのです、その発想が。

質問3 オバマ政権の問題点はなにか。それにもかかわらず大きな支持を受けて当選したのはなぜか。

本山先生

 だから恐いのです。私は二百万人の人がワシントンに集まったというの
に恐怖心を抱きました。ヒトラーとどこが違うんだと。オバマを政権に就けようとしたのはルービンです。二〇〇六年四月です。二年以上前です。ハミルトン・プロジェクトというのをルービンが立ち上げました。現在十㌦紙幣を飾っている初代財務長官のハミルトンです。その内容がそのままオバマの演説に出ました。『毎日新聞』二月二十二日に私は書きましたが。聞いていて腹が立ってきましてね、ハミルトン・プロジェクトを読んでおりましたから。ハミルトン・プロジェクトは二〇〇六年四月に杮落としをやったのですが、最初の招待者演説をしたのがオバマであります。クリントン夫人ではありませんでした。その内容、オバマの大演説、日本のマスコミがこぞって褒めた演説です。自分の大事な演説をストーリー・テラーに委すか。それをすごい、すごいと。なにを言っているのか。ハミルトン・プロジェクトの内容そのままの引き写しでありました。あれは剽窃です。その連中たちがマスコミを使うことによって支持を得たんです。ここにファシズムの到来を見ます、私は。私の批判している橋下府政が八十八%の支持率。これは異常と思わなければいけないのです。すくなくとも半分を超える支持率など、ふつうはあり得ないことなのです。それがマスコミによって操作されているということ。大体、私は世論調査なんか受けたことがないです。ありますか。調査の仕方が一体どうなっているのですか。怪しいですよ。私はオバマは恐いです。正直を言って。あんなのに翻弄されてはダメです。

質問4 労働金庫など地元に預けなおせと言われるのはなぜですか。厚労次官が天下るような組織で信頼できるのか。こういう人事がなぜおこなわれるのか。

本山先生

 銀行が天下りポストだからですよ。とにかく官僚の五十五才定年制はやめてください。五十五才で定年になったら、天下り先を探すしかないのです。特殊法人をいっぱい作るのはいけないのです。労働金庫というのはもともと労働組合がストライキを起こすときの活動資金のためにある労働金庫なのです。これが全国統一されてしまって、ポストが天下り先の指定席だとは、何をいうかです。実は、一週間前に近畿労働金庫の理事長室にのり込んで文句を言ってきました。そこはたまたま大会社の大労組の委員長で、私の「ESOP」をいちばん最初に採用してくれた労働組合だったので、東京で喧嘩してこいといったのですが、どうなるか新聞を注目しているところです。