消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(224) 新しい金融秩序への期待(169) システム崩壊を生み出したもの(2)

2009-09-25 15:39:34 | 野崎日記(新しい世界秩序)


 庶民感覚で経済を考える。

 今日の私の話は、そういう形で庶民感覚の下に、全ての経済も政治も、生活の実感に合わせる、そうするにはどうしたらよいのか、ということに照準を絞ります。

 お金を取り戻そう。こんな金はイヤだという形で拒否できるようなシステムをつくっていこう。世界には流れていかず、東京都だけでとどまっているお金をつくろう。
金融が自由化されてから、いいことがつでもありましたか。就業先が増えましたか。新しい技術革新がありましたか。ただお金持ちが出てきたというだけで。

 世界一のお金持ちの、ウォーレン・バフェットという人は、これはあとで申し上げますが、ムーディーズという格付け会社の株式を十六%持っています。ムーディーズという会社に睨まれたら全ての会社は死ぬんですね。その所有者です。その所有者がポケットマネーで投資銀行を救ったんです。アメリカで、トップ四百人の大金持ちがアメリカ人三億人の半分、一億五千万人の全ての財産を合わせたよりも多いのでありますつまりビル・ゲイツとウォーレン・バフェットが動くだけで一国が潰れます。

 こういう社会がアメリカン・ドリームと言うものなのです。こんな社会は潰しましょう。すくなくともお金と言うものを、われわれの庶民的な感情の元に取り返しましょう。若者たちがいっぱい失業しております。彼らを救うという形で、そういうお金の使い方ができないのものかを考えましょう。

お金は地元の金融機関に預けよう

 みなさん、お金は巨大銀行に預けないでください。地元の労働金庫とか信用金庫とか信用組合とかそういったところにお金を預けなおしてください。その代わり、われわれの仕事を確保すると言う意味で、中小企業のおっちゃんたちの経済活動を融資してね、とか、あるいはボランティア、NPOとか、そういったものに対して融資してね、とか。

 あるいは日本の食料自給率が四十%を切ったと言われているけれども、日本の全国で作り出される農作物の価値と同じ額の価値をわれわれは捨てているのです。レストランに行って御覧なさい。とんでもない残飯の多さ。これを無くすことからわれわれは出発しなければならない。それがなくなれば日本の食料自給率七〇%はパッと回復するんです。われわれの浪費を棚に上げて、巨大な大農家しか残ってはいけない、国際競争力をという前に、自分たちの足元を見直せということが、私の主張点であります。

 ですから、地域の農家の方々の産物を私たちが集めてきて、失業している若者たちに「すまん、これ弁当に作って飯場の建築現場に持っていってくれ、そこで売ってくれ」と。あるいは、いまものすごい老人社会ですね。そういう連中たちを見守ってほしい。水道のメーターを見て、電気のメーターを見て、無事で暮らしておられるかを調べていただきたい。そういったことを、失業している若者たちにやっていただいて、それだけのお金をみんなで会費制で集めて、それでそうした社会事業を作っていく。そのためには、このお金はよそに逃げていっては困るので、この地域だけしか流通しないお金を作っていこうじゃないか。受け皿をつくろうじゃないか。受け皿は例えば労働金庫というのがあったはずだ。ところが労働金庫が全国的に統合されまして、この三月いっぱい、もうなったのかな、全国一斉に統一された労働金庫になって、最重要ポスト・理事長が厚労省の天下り役人の指定席になったのですね。「何を!」と言いたくなります。こういう身近なところから私たちの活動拠点をつくり、そして現実に失業している若者を救うということをやりましょうよ。

 若い人が可哀想です。就職がないんですよ。たまに就職があっても非正規雇用なんです。三年間で正社員になった例はほとんどないんです。三年たって正社員にならなくてはならんというときにポッと切るんですよ。こういう社会、日本が出来て二〇〇〇年以上になるでしょうけど、こんな地獄のような社会、今までなかったはずであります、若者が絶望する社会というのは。われわれの若いときは、貧乏でしたよ。貧乏でしたけど、何かしようという気持ちをかきたててくれていましたよ、社会が。ところが今は本当にダメなんですよ。これをつくったわれわれオジンやオバンの責任は大きい。だからせめてオジンやオバンはこれから死ぬまでの間、若者を救うために全エネルギーを注ぎましょうよ。そのためには天下国家の大きなことを論じる事も大事ですが、本当に具体的に、身近でできるものを作っていきましょうよ。そういう地域的な活動の全国的なネットを作りましょうよ。

 そのための基本形が、お金なのです。そのお金をわれわれの元にもどすのだということが私の今日の主張点であります

 お金をきちんと理解しよう――経済学は金儲けを抑制することを目指していた

 後は難しい話をしますけども、なるべくやさしく話します、時には難しい話になってしまうのですけど、表現は易しくさせていただきます。お金というもののきちんとした理解をいたしましょうということであります。

 経済学は実は、「金儲けをするな」というところから生まれたのです。これを、ぜひ知っておいてください。経済学という言葉を歴史上初めて作ったのは、アリストテレスだろうと思います。オイコノミカ。日本語に翻訳するときに、なんと家政学と訳してしまった。女性たちが行くような家政学だったのです。

 辞書を調べていただくとeconomyという言葉は節約と同時に摂理という意味があります。神の摂理、人間の摂理。これが経済学の語源であります。アリストテレスが、自分たちがやらなければならない学問をオイコノミカとした理由は、お金儲けは悪い事だと断定したことにあります。カネを儲けた人の後ろにどれだけの人の苦しみがあるか。具体的にはアリストテレスが敵としていたターレスという人がいます。

 はっきり申しましてターレスのほうがアリストテレスよりえらいと私は思っていますが、アリストテレスは敵であるターレスを貶めるのです。そんな事、ターレスは絶対にやっていないのですが、世間様はそのように理解している。アリストテレスに否定されたターレスだと。プラトン以前のギリシア哲学と言うのは、なくなってしまっている。本が無くなった。私は焚書坑儒ではないか、全部抹殺されたのではないかと思っています。プラトン、アリストテレスは怪しからんぞというのが私の意見。私は「消された伝統の復権」というブログをもっているのですが、それ以前の、ピタゴラスとかターレスとか、そういう人たちの哲学を復活させています。

 残念ながらギリシア哲学といえばプラトン・アリストテレス。こいつらがどうも危ない。批判すべきアリストテレスを今日は持ち上げている。ただ私が全面的に賛成しているわけではないということを分かってください。右傾化するときには必ずプラトンが使われる。アリストテレスのいいところは自分の敵であるターレスの悪口を言った。本当は間違っているのだが、ターレスの事実はさしおいて、アリストテレスの言説だけに限定すれば、いいことを言っている。


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