今日の産経新聞(ネット)の記事(抜粋趣旨)。
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兵庫の灘・伊丹と京都の伏見の老舗酒造メーカー11社が共同で日本酒の需要拡大を図る「日本酒がうまい!」推進委員会を発足。
企画第一段として、飲料店向けに正しい燗酒の手順を紹介するDVDを作成、5千枚を取引先などに配布する。今後は、「燗酒の日」の制定や冷酒の提案などを行うほか、11月に「燗酒キックオフ(仮称)」というイベントも検討している。
この連携の背景にあるのは、深刻な日本酒離れ。日本酒の消費量はピークだった昭和50年から右肩下がり。ここ10年は、フルーティーな吟醸酒や日本酒カクテルなどを提案してきたが、大きな回復にはつながらなかった。
このため、ライバル同士が異例のチームを結成。「日本酒本来の良さを知ってもらい、需要回復の下地を作りたい」。
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さて、酒の中で日本酒が一番美味しいと確信している私としては、このニュースに冷めるとともに異論を感じた。
「日本酒の良さ」を知っている心ある居酒屋は大阪だけでもかなりあるし、実際、予約を取るのも一苦労という人気店も多い。「太田和彦の日本百名居酒屋」を見ていると、とても日本酒が廃れて行っている感はない。
伏見の「蒼空」(そうくう)の酒蔵に行った時は、試飲のカウンターは満員、在庫も残りわずかという繁盛ぶり。
この委員会の11社は、白鶴酒造、日本盛、宝酒造、辰馬本家酒造、大関、月桂冠、剣菱酒造、小西酒造、沢の鶴、菊正宗酒造、黄桜という堂々たるブランド揃い。
しかし、醸造酒が中心のメーカー。「日本酒本来の良さ」などと、日本酒一括りにしては手間暇かけて純米酒を造っている酒蔵まで巻き込まれているように誤読してしまうのでは。
昭和はビールやウイスキーといった洋酒が今ほど浸透していなかった時代。自ずと醸造日本酒が家庭酒の中心。今やお父さんだけでなく、老若男女がお酒を楽しむ時代。むしろお酒のパイ自体は拡大しているのではないだろうか。
そんな中、ワインのようなフルーティーな醸造酒を造ってもワインには勝てないし、カクテルも日本酒が主役になるものではない。
ビール、ウイスキー、ワイン、焼酎、純米日本酒が存在感を持つ今、醸造酒の立ち位置を真剣に考えることこそが必要ではないだろうか。
今回発表された企画では何も変わらないように思う。大手メーカーだけどサブブランドで純米酒に迫る醸造酒を丁寧に造ることを突き詰めるとか、アンテナ居酒屋で料理とともに醸造酒を提案するとか、腰の入ったことをやってもらいたいものだ。日本酒ファンは、純粋に、美味しいお酒と旨い肴で豊かな気分になりたいと思っているだけなのだから。
失礼ながら、少なくとも「日本酒本来の良さを知ってもらい」ではなく、「醸造酒の楽しみ方を知ってもらい」と発表内容を訂正してもらいたいと思った。
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