読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

宮崎には珍しい「日本酒バー」で、日本酒と美味しい肴を満喫した三連休初日の夜

2022-03-20 20:27:00 | 美味しいお酒と食べもの、そして食文化本のお噂
飲食の自由を奪うばかりで、「感染拡大防止」にはなんの効果も意味もなかった、いまいましい「マンボウ」こと「まん延防止等重点措置」の適用が、わが宮崎県では今月の6日にようやく終わりとなりました。
「マンボウ」が終わって最初の週末となった先々週末、さっそく外呑みを楽しんできたわたしでしたが、三連休の初日となる昨夜(19日)もまた、2週続けての外呑みを楽しんで参りました。
前回の外呑みでは、久しぶりとなる馴染みの大衆酒場で、生ビールと焼酎を呑みながらくつろぎのひとときを過ごしたのですが、今回は気になっていたけれどもまだ立ち寄ったことのなかったお店に入ってみよう、ということにしました。とはいえ小心者ゆえ(苦笑)、初めてのお店に一人で入るということにはいささかの勇気を必要といたします。
思い切って別のお店に入ってみようかなあ・・・それともやっぱり通い慣れたいつものお店にしとこうかなあ・・・しばしの逡巡ののち、思い切って入ることにしたのが、日本酒バー「糀素弓」(はなそゆみ)さんでした。
焼酎文化圏の宮崎では珍しい、日本酒を主体としたお店。前から興味を持ってはいたのですが、なかなか入るきっかけが掴めないままでした。日本酒を扱うお店らしく、店先には「杉玉」(もしくは「酒林」)が下がっております。
思い切って中に入ると、カウンターのほかに小さなテーブル席があるだけのシックでコンパクトな店内。お店をお一人で切り盛りしておられる女将さんはとても愛嬌のあるお方で、初めて入ったわたしにもとても気さくに、親切に接してくださいました。店内にテレビなんぞ置いていないところも好印象であります。
その時々によって異なる銘柄の日本酒を揃えておられるそうで、その日に扱う銘柄がホワイトボードに列記してあります。さあてまずは何をいただこうかなあ・・・としばし迷った末、手はじめに福島県二本松市の「奥の松 二本松限定純米酒」を注文いたしました。

とてもフルーティな呑み口の中に、お米の旨みをしっかりと感じる実に美味しいお酒。最初の一杯にこれを選んで大正解だったなあ、と嬉しくなりました。
メニューを見ると、お酒を引き立ててくれる肴の種類もけっこう豊富です。その中から、まずはシンプルなところで「板わさ」を注文。

板わさでお酒もずんずん進んだところで、次に注文した一杯は宮城県の「浦霞」純米生原酒。さきほどの「奥の松」同様、またも大きな地震に襲われた東北を応援するという意味もありました。キリッとした辛口ながらも飲みやすく、気分のいいお酒であります。

このあたりで二つめの肴として、新潟県の分厚い油揚げを使った「栃屋のあぶらげ焼」の黒豚味噌入りハーフサイズを注文。なるほどたしかにすごい厚みで食べ応えがありました。あいだに挟まった黒豚味噌の旨味がまた、お酒を進ませてくれました。

お酒が進んであっという間になくなったので、三杯目として再び福島県二本松市の「大七」純米生酛を。こちらはさきほどの「奥の松 二本松限定純米酒」とは対照的などっしりとした呑み口。日本酒というのは実に多彩な美味しさがあるんだなあということを、あらためて実感させられます。

この日はなんと、「奥の松」の営業マンの方がお見えになっておりました。その方から、まだ出来たばかりだという「奥の松 純米大吟醸」のお裾分けにあずかることができました。フルーティな美味しさにさらなる磨きがかかり、清涼感あふれる呑み口に魅了されました。これならいくらでも無限に呑めそうな感じがいたしますねえ。

そして、ひとまずの締めとして注文したのは、新潟県の「緑川」。こちらは久しぶりに呑んだのですが、安定した美味しさでホッとさせてくれました。一緒に注文した「チーズ豆腐」は冷奴そのものの食感ながらも味はたしかにチーズ、という面白い肴で、日本酒ともいい相性でありました。


ここにきてさらに、この日来られていたご常連と思しきお客さんがお持ち込みになったお酒のお裾分けが。北海道は函館市の蔵元「郷宝」の純米吟醸。「彗星」というロマンチックな名前のお米を使ったお酒で、かすかな酸味の中に旨味が感じられていい呑み心地の一杯でした。北海道にもこんな美味しいお酒があったとは!


今回初めて入った「糀素弓」さんでしたが、実に楽しく充実した時間を過ごすことができました。
美味しいお酒と肴の数々もさることながら、カウンターを通しての女将さんやお客さんとの交流という、コロナ騒ぎの中で忘れかけていた酒場ならではの楽しさもたっぷりと味わえたことは、とても嬉しいことでした。尊敬する居酒屋の師・太田和彦さんによる良きお店の定義「いい酒、いい人、いい肴」の三拍子を兼ね備えたお店ではないかと、しみじみ思いました。日本酒の持つ多彩な美味しさを再認識できたことも、大きな収穫でありました。
これからも時々、「糀素弓」さんには立ち寄ることにしなければな。

2軒目となる行きつけのバーに寄る前に、繁華街をブラつきました。宮崎市の呑み屋街であるニシタチ、中央通り界隈は若い世代を中心にたくさんの人が歩いていて、週末にして三連休初日の夜らしい賑やかさに包まれておりました。




「コロナ禍」ならぬコロナ騒ぎ禍によって受けた呑み屋街のダメージは、そう簡単には回復できないように思われます。しかし、美味しいお酒や食べもの、そして人と人との楽しい交流を求める人の営みが続くかぎり、呑み屋街は一歩一歩立ち直っていくだろう・・・と、この夜の街の賑わいを見ながら思ったことでありました。




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