読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

第19回宮崎映画祭観覧記(前夜祭編) みやざき自主映画祭で、開花前の才能の煌めきに接する

2013-08-24 00:30:19 | 映画のお噂
いよいよ明日から開幕する、第19回宮崎映画祭。
その前夜祭として今夜、第3回みやざき自主映画祭が開催され、宮崎県外から応募のあった8作品プラス、地元宮崎の作り手による1作品が一挙上映されました。以下、それらの作品を上映順にご紹介していきたいと思います。

『BUBBLES』(加納隼監督)
舞台は埼玉。中学生のマイコは、友人のアサミの兄であるケンジに恋していた。その思いを誰にも言えないままだったマイコの耳に、ケンジが東京へ行ってしまうとの知らせが飛び込んできたのだった•••。
オーソドックス過ぎるくらいオーソドックスな恋物語ながらも、まことに丁寧なつくりでけっこう好感が持てました。技術的にもなかなか優れたものがありました。

『春光』(仙元浩平監督)
30年ぶりに故郷にやってきた主人公の男。高校時代に死んだ母親と、母親の法事のときに出会った寺の娘との思い出を辿っていくうちに、男は•••。
今回上映された作品の中で唯一の8ミリによる作品。正直、話の内容が掴みにくいところがありましたが、8ミリの映像で捉えられた地方の田舎の風景は、独特の雰囲気を醸し出していました。

『終電の終点』(島田大地監督)
終点駅のそばで営業している喫茶店。そこには、電車の中で眠りこけたために乗り過ごしてしまった人たちが夜な夜なやってくる。とある夜、マスターの孫や彼氏に振られた女子高生、それに酔いつぶれたサラリーマンが店に集まってきて、ちょっとおかしな交流が始まったのだった•••。
前半と後半との統一感に欠けていたのは残念ですが、着想はなかなか面白く、ユーモアがあったのもマルでした。

『悟り詩』(脇坂侑希監督)
勉強も運動も、おまけに容姿も冴えない男子大学生。駅で見かけた女性に一目惚れし、毎日彼女のために切符を買ってプレゼントするという涙ぐましい努力の末、ついに彼女のメールアドレスをゲットする。しかし、その間女性が思っていたことは•••。
ラストが唐突で消化不良感が残りましたが、男と女それぞれの立場を描き分けることで生まれるすれ違いが面白かった作品でした。

『おどりゃあ!』(廣井彬監督)
日がな一日、川で釣り糸を垂れる若い男・幡野と、その友人のサラリーマン、それに会社をクビになり妻にも捨てられたオジサン。ふとしたことで顔を合わせた3人は、それからちょこちょこ集まるようになる。そんなある日、幡野が高校時代の自分にチョコを贈ってくれたと信じ込んでいた、同級生の女性が姿を見せて•••。
こちらもラストが消化不良だったのは残念でしたが、広島ことば(たぶん)による会話のやりとりがなかなか面白く感じられました。

『ソラ・クモ・クロ』(ショウジタツヤ監督)
自らにコンプレックスを持つ若い男のモノローグで話が進んでいく7分足らずの短篇です。一見なんということもない若者たちの姿が描かれるだけ、かと思いきや、最後の最後で主人公から語られる意外なことばで、妙な余韻が残る作品となりました。

『FLOWERS FOR HER ~彼女への花束~』(國井隆児監督)
ある理由から、お互いに違う道を歩まねばならなくなった恋人たち。男は、忘れられない彼女への思いを手紙に綴る•••。
残念ながら、いまいちピンとくるところがないままに終わってしまった印象でした。技術的にはいいものが感じられただけに、悔やまれるところです。

『霞』(高橋コウジ監督)
人形職人の家に生まれた高校生の少女・かすみは、交通事故で命を落としてしまうが、幽霊となって父親や彼氏のことを見守り続ける。しかし、生きる希望を失って人形店を畳もうとする父親の姿を、かすみはなす術もなく見ているしかできないのだった•••。
選考委員による事前の審査で金賞を獲得した本作。完成度の高さと胸を打つ語り口に、恥ずかしながら目頭が熱くなりました。観客からの支持も高かったようで、観客の投票により選ばれた銀賞にも輝きました。
来場していた高橋監督のお話によれば、本作はわずか2日で撮り上げたそうですが、それを感じさせない質の高さでした。

『死んだ女』(ギルド#010監督)
大学院生のユウダイは、戦争中に別れ別れになってしまった男女の、あたかも正夢のような夢を見る。その夢が本当かどうか確かめようとするうち、ユウダイは•••。
宮崎で自主映画をつくり続けている気鋭の作り手による怪異譚第6弾(本作は選考対象外)。怪異譚とはいえ、怖さだけではなくユーモアもあり(宮崎ことばによるナレーションもいい感じでした)、これまで観た作品よりも語り口がこなれていた印象を受けました。

以上、全部で9本の自主映画作品。足りないところがありながらも、随所に開花前の才能の煌めきも感じられたりして、なかなか興味深く観ることができました。
さあ、明日からはいよいよ映画祭本体が始まります。大いに楽しみであります。