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オークションウォッチ 日立製作所の戦時無線機について

2021年03月16日 13時58分36秒 | 10オークションウォッチ

オークションウォッチ 日立製作所の戦時無線機について

断捨離中につき入札ご法度の身でありますので、入札に参戦せず下記Yahooオークションの推移を見守り、記録するだけとしました。
日立製作所製の戦時無線機は敗戦末期からの少量生産だったために残存数も少なく今では大変貴重な無線機といえます。
しかも、奇跡的なことなのですが、同時期に別々の出展者から日立製作所製の戦時無線機が出品されました。

大阪府のcar_choice526さんから「日立製作所 NO.210 送受信機 一式空三號隊内無線電話機改 昭和19年製 ジャンク」開始日時:2021.03.11(木)11:59 終了日時:2021.03.14(日)22:57


埼玉県 東松山市のusednet_corporationさんから「日立 ム 23 送信機◇ジャンク品」開始日時:2021.03.09(火)16:33 終了日時:2021.03.15(月)22:21

 

以下に日立製作所史2(昭和35年12月発行)から関連項目を抜粋します。
3 無線機
昭和14年、戸塚工場に無線機工場を完成し、本格的に無線機の生産を開始した。
翌15年、海軍艦政本部からの無線通信機の需要増加に伴い、これに必要な“R装置”の製作を開始したが、本機は製品の本質上、配電盤工場の作業に適するものであったため、しばらくして多賀工場に移管された。
戸塚工場ではその後、海軍技術研究所の指導により真空管試験機・対地高度計などの研究に従事した。
17年末から18年にかけては、小形艦船用短波移動用無線機(ES-1)を完成、月450台程度の生産を続けたが、この無線機は19年まで当社で独占的に製作し、戸塚工場の無線関係主要製品となった。
また18年に“萩-1金物”と称する機上送受信機を海軍航空本部から受注、20年には軍需省から陸軍関係の最前線用小形「地4号無線機」(椎-20金物)の製作命令を受けた。
本機は飛行機で前線に輸送しパラシュートにより投下供給されるものであった。
18年ごろから前線基地および艦船などの対空対潜機器の必要性が増し、電波探知機・音波探知機の多量の要求があった。
電波探知機については日立・多賀・戸塚の3工場が協力して総合研究を開始、発振部門を多賀工場、架台および指向アンテナを日立工場(後に高萩工場)、総合調整を戸塚工場が担当し、数種類を製作した。

大阪府のcar_choice526さんから「日立製作所 NO.210 送受信機 一式空三號隊内無線電話機改 昭和19年製 ジャンク」
航空機用超短波無線機(U-3改、萩-1号金物)海軍の制式呼称は、一式空三號隊内無線電話機改二である。
試作製作会社は日本無線株式会社であるが、生産拡大のため多くは松下電器無線製作所で生産されたが、その他メーカーとして日立製作所も生産を請け負ったもののようである。
1式空3号隊内無線電話機改は、共に使用真空管の統一を計ったもので、真空管の種類を少なくし、互換性を持ちせるようにするため、送信菅としては、原振・増幅用ともFZ-064A、受信管としてFM-2A05Aを使用するものである。
1式空3号隊内無線電話機改2
本機の重要諸元は次の通りである。
通信距離 5浬
周波数  30乃至50Mc
送信機  入力10W
          OSC   PA
     真空管 FZ-064A-FZ-064A
                       MOD FZ-064A(受信機AFと兼用)
     電源  回転式直流変圧器(入力12V)
受信機  方式 スーパー RF1 RF2 AF2
         RF         Conv       IF      Det      AF  
     真空管 FM2A05A-FM2A05A-FM2A05A-FM2A05A-FZ-064A
     電源  回転式直流変圧器(入力12V)
空中線  固定L型空中線

 


埼玉県 東松山市のusednet_corporationさんから「日立 ム 23 送信機◇ジャンク品」
地4号無線機
本機は、空輸挺身隊(落下傘部隊)用として地3号無線機の出力を増大(A1 50w、A2A3 10w)し、又送受信の周波数を4~20Mcに変更して所要の通信距離(150Km)に対応せしめたものであり、機材の構成その他は地3号の改良型である。
受信機は保守性(補給を含め)を最優先したのか、真空管はすべてUZ-6D6で構成されている。
ム23はその後継機種であるが、本来の用途である空輸挺身隊から敗戦末期では本土決戦用の最前線部隊用小形無線機としての使用が企画されたものと思われる。
なお、日立では(未確認だが軍需会社指定された軍需工場)社史のとおり「20年には軍需省から陸軍関係の最前線用小形「地4号無線機」(椎-20金物)の製作命令を受けた。」とあることから敗戦末期での製造のようである。
敗戦末期の資源枯渇の中の生産であるため、銘板等のプレートは従来はアルミ製であったものが、もはや紙片製のものに代替されているのを見ると大変痛ましい思いで一杯である。
また、敗戦末期では銘板の表記方法はム-XXの受信機、送信機の表記に加え、会社の商標、及び機器の仕様書番号のみと大変シンプルとなり、敵方に鹵獲されても製品情報を秘匿されるもものとなっている。
ム-23の商標は日立のマークであり、ム-63の商標はプロペラロゴマークであることから東芝、ム-62のひし形マークは住友電気(日本電気)であるが、当時の日本人なら容易に推測できるロゴマークが採用されている。
ここで重要なことは、銘板の情報が集まることにより、最下部の仕様書番号と思われるところの記載要綱は、左側番号が機器の大分類番号、右側番号が仕様詳細番号と推測できる。
例えば、「0502」は対空無線機、「0503」が機上無線機であり、今回のム-23は「0507」であることから空輸挺身隊用と定義される。
右側番号については、事例から4xxxxであるから製造番号ではなく、仕様書番号と考えるのが妥当だろう。
また、製造年月日は表記せず、生産情報の秘匿を図ったものと思われるが、ほぼ昭和20年以降に生産されたものである。
なお、海軍では銘板の表記方法は敗戦まで変更されることはなかった。
本機の重要諸元は次の通りである。
用途   空輸挺身隊(落下傘部隊)用
通信距離 対飛行機及び地上150Km
周波数  送信 4~20Mc
     受信 4~20Mc)
送信機  出力   A1 50w A2、A3 10w
          OSC  PA
     真空管 6D6-807
             6D6↑(グリッド変調)
           Mod
     電源  0.6HP単気筒2サイクルガソリンエンジン 
         600V 0.22A1、18V4A発電機又は交流100/200V
         直流側同規格の整流機
受信機  方式 スーパー RF1 IF1 AF1
         RF  Conv IF  Det  AF 
     真空管 6D6-6D6-6D6-6D6-6D6 
            6D6↑
            Osc
        電源  送信機電源から供給又は6V蓄電池及び200Vコンバーター又は整流機
空中線  逆L型 H=6m L=20m


参考文献
YahooオークションID q434795140、l659511042
日立製作所史2(昭和35年12月発行)
日本無線史