実務家弁護士の法解釈のギモン

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改正相続法-特別受益者の相続分と生前贈与に対する遺留分侵害額請求(4)

2019-06-05 10:42:03 | 家族法
 このようないびつな関係になってしまった理由は、具体的相続分を算定するに当たっての特別受益は、死亡前10年より前までいくらでも遡って計算されるのに、遺留分を算定するための財産の価格における生前贈与は、死亡前10年間までの限られてしまったからである。
 これも、法政策の問題だと言ってしまえばそれまでのことではあるが、では、なぜこのような法政策を採用したのか。
 ものの本によると、過去10年に限定したのは、相続開始よりもかなり前に贈与を受けた受贈者の地位の安定性を確保する必要だという。別の本によれば、副次的な問題かもしれないが、相当過去に遡った贈与の調査や、その財産価格を現在価格に算定し直すことの負担の問題の解消もあるらしい。