実務家弁護士の法解釈のギモン

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訴訟上の和解の既判力(4)

2016-05-18 11:16:11 | 民事訴訟法
 しかし、私は、既判力肯定説からも錯誤無効等による和解無効の主張を許す理論的な説明ができそうな気がしている。

 どうすればいいかというと、和解の成立は、有効な処分意思の合致があることが要件だと説明すればいいのではないかと思うのである。
 この説明だけでは堂々巡りをしているだけになってしまいそうだが、要は、訴訟上の和解の成立要件は、単に互譲による訴訟当事者の「訴訟上表示された意思の合致」と表示主義的に捉えるのではなく、「有効な意思の合致」が必要だと捉えるのである。そして、錯誤がある場合のように瑕疵ある訴訟物に関する処分行為は無効であって、そもそも和解の成立要件を欠いていると考えるのである。このように考えることができれば、錯誤無効によって和解をしてしまったとしても、和解の無効を主張することは和解の既判力に抵触するか否かという問題にはならず、そもそも和解が成立しているか否かという、前提問題として処理できるのではないだろうかと思うのである。

 以上のように考えた場合、もし、和解意思に錯誤無効等の瑕疵があれば、そもそも和解は不成立であり、錯誤無効を主張することの既判力との抵触云々を議論する前提を欠く。和解意思に問題がなければ和解が成立し、全面的な既判力が生じる。

 以上のように考えることができるのであれば、和解に全面的な既判力を肯定しつつ、その和解の成立要件の問題として錯誤無効等の意思表示の瑕疵を争うことができることになる。