実務家弁護士の法解釈のギモン

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訴訟上の和解の既判力(2)

2016-04-28 16:33:59 | 民事訴訟法
 和解に既判力があるということと、和解の効力が争いうるということとは、一見すると矛盾するように感じる。そのため、私が学生だったころは、判例理論たる制限的既判力説には学者からの批判が大きく、既判力否定説が有力であったと記憶していたのであるが、最近は、制限的既判力説を支持する学説も多いようである。
 しかし、既判力の本質や作用をどう説明するかはともかく、確定判決の既判力のように、既判力があるということは、再審事由がない限り、その内容について再び争うことを許さないという点に大きな意味があるはずである。これと同じように考えれば、和解に既判力があるといいながら一定の場合にその効力を争いうるという制限的既判力説は、理屈の上ではなかなか理解しにくい。

 だからこそ、私が学生だったころは、学者は制限的既判力説をあまり採らなかったはずなのである。